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NPO知的資源イニシアティブ『これからのアーキビスト:デジタル時代の人材育成入門』(2014年)目次

19 月曜日 5月 2014

Posted by archivesstudio in Uncategorized

≈ 1件のコメント

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アーカイブ, アーカイブズ, アーキビスト, evidence, 証拠, NPO知的資源イニシアティブ, 勉誠出版

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This work is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.

アーカイブズの普及・振興に取り組んでいる立場からは、アーカイブズやアーキビストに関する出版物が増えるのは喜ぶべきことであるとつねづね感じています。最近、『これからのアーキビスト』という文献をご恵贈いただきました。そこで目次を紹介し、合わせて気づいたこと、感じたことを記しておきます。

[書誌情報]

タイトル:これからのアーキビスト:デジタル時代の人材育成入門
編著者:NPO知的資源イニシアティブ
出版者:勉誠出版
価格:2,700円 (本体2,500円)
刊行年月:2014年4月
ISBN:978-4-585-20028-4
出版者ページ:
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100331

 

[目次]

まえがき 岡本真

01 アーキビストの役割と課題
日本のアーキビストの現状と問題点 毛塚万里
博物館・美術館にデジタル・アーキビストは必要か? 阿児雄之
日本近現代政治史料とアーキビスト:収集アーカイブの視点から 鈴木宏宗
interview アートをアーカイブする:NPO法人アート&ソサイエティ研究センターの視点 工藤安代・清水裕子・井出竜郎

02 アーキビストの現場
情報通信文化資料の収集・継承とデジタル化:逓信総合博物館から新博物館設立に向けて 本間与之
公立図書館におけるアーキビスト的役割:小平市立図書館を事例として 蛭田廣一
写真のアーカイブ:高知県立美術館石元泰博フォトセンターの活動から 植田憲司
歴史資料:市史編纂事業の現場から 松岡弘之
企業において求められるアーキビストの役割 朝日崇
「リブヨ」によるデジタルアーカイブ リブヨ
アーカイブズ関連情報の収集と発信 坂口貴弘
interview 「自宅ミュージアム」という新たな出会いの場:少女まんが館の試み 大井夏代・中野純

03 デジタル化とアーキビストの養成
多元的デジタルアーカイブズと記憶のコミュニティ 渡邉英徳
新しい養成制度とそれにふさわしい新たな職場開拓 谷口知司
デジタルアーカイヴィングの担い手:新しい文化資源専門職の養成 佐々木秀彦
interview 「地域アーカイブ」と「震災アーカイブ」:NPO法人20世紀アーカイブ仙台の挑戦 佐藤正実

〈これからのアーキビスト〉に求められる資質と環境:総論にかえて 高野明彦

あとがき 柳与志夫

執筆者一覧

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[感想など]

■NPO法人知的資源イニシアティブ

「まえがき」によると、この本はNPO法人知的資源イニシアティブが出す3冊目の本だそうです。前2冊は、『デジタル文化遺産の活用:地域の記憶とアーカイブ』(2011年)、『アーカイブのつくりかた:構築と活用入門』(2012年)。今度の本が『これからのアーキビスト:デジタル時代の人材育成入門』ですから、一貫してアーカイブ(ズ)に関連した本の出版を行ってきていると言えます。

本の内容の感想の前に、NPO法人知的資源イニシアティブについて調べてみました。
http://www.iri-net.org/

組織のページを見てみると、2013年4月1日現在の役員構成は、代表理事: 高山正也、理事:杉本重雄、伊藤隆彦、岡本明、常世田良、監事: 小野田美都江、事務局長: 黒田久美子、ということです。前国立公文書館長をはじめ、お目にかかったことのある方が何人かいました。http://www.iri-net.org/about/org.html

東京ボランティア・市民活動センターの法人検索結果が定款の内容を簡潔にまとめてくれています。
http://www.tvac.or.jp/eh/each.cgi?id=9879#

「この法人は、広く一般市民を対象として、意見交換や議論を行うためのフォーラムを開催するなどの知的情報資源(図書、雑誌、辞典類、データベース、インターネット情報源など)の整備・活用に関する調査研究事業、図書館等の設置者や運営者に対して助言を行う知的情報施設の設置・運営に関する支援事業、パンフレットの作成や配布、ホームページの開設などの知的情報資源の整備・活用に関する啓発事業を行う。

これらの活動により、知的情報資源の構築とそれを利用した知的サービスの普及、発展、向上に必要な施策や提案を、関係者及び広く社会に提案し、実現していくことによって、知的サービスを基盤とする、創造的で活力あふれる社会の確立に寄与することを目的とする。 」

東京都による認証年月日は2003年7月10日。

理事の岡本さんはこちらの会社の方ですね。
http://www.jugemu-tech.co.jp/about/index.html

会社概要によると同社の設立は2001年12月6日です。
http://www.jugemu-tech.co.jp/about/index2.html#01

NPO法人知的資源イニシアティブはこちらの会社のお隣さんですね。
http://www.jugemu-tech.co.jp/about/map.html
http://www.tvac.or.jp/eh/each.cgi?id=9879#

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■アーカイブズとは?

私はこれまで、企業を主な対象としてアーカイブズの普及・振興に取り組んできました。言うまでもなく、普及・振興のためには、「アーカイブズとは何か」、「なぜアーカイブズは必要なのか」、「アーカイブズの意義とは何か」、「アーカイブズがあるとどんなよいことがあるのか」(組織の中のアーカイブズ部署に異動してくる人すべてが希望して異動してくるわけではありません)、「アーキビストとはどのような仕事をする人たちであるのか」…をまず理解してもらわねばなりません。頭で理解してもらったら、次には「やってみよう」、「やってみたい」という意欲を感じてもらう必要があります。さらに、実際の仕事の中でさまざまな成果を生み出してもらえたら、「普及・振興」がある程度達成された、と言えるでしょう。私のこれまでの活動がどこまで到達しているか分かりませんが、関連する経験を交えながら、本書の感想を述べたいと思います。

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この本には3つのインタビューと14の個別論考、「まえがき」、「総論にかえて」、「あとがき」から成ります。全体を読んでみて読者は「アーカイブズってなんだろう」、「(これからの)アーキビストってどんなことをする人たちなのか」、という疑問に対してくっきりとした答えを得ることができたでしょうか。「まえがき」には、

「実に多様な実践者たちによる論考は、実は個々には見解に相違があると思える点もあるだろう。だが、それこそが近年の日本におけるアーカイブの展開の広がりを示すものだろう」(iiページ、太字強調は松崎による)

とあります。結びにあたる「〈これからのアーキビスト〉に求められる資質と環境:総論にかえて」では、

「本書が扱うアーキビストという職業や職能は、まだ社会一般に浸透したとはいいがたく、完全に市民権を得たことばではないために、その解釈や内容も多岐にわたっている。よって、総論として巻末に配される本論考では、個々の論文について寸評を加えていくというスタイルは避け・・・」(241ページ)

と述べられています。総論をまとめることが難しかったようです。

ICA(国際アーカイブズ評議会)の部会のひとつSBL(企業労働アーカイブズ部会)に関わっている立場から言うと、本書冒頭で毛塚万里氏が言及しているアーカイブズの説明は、国際標準に則った基本理解であると言えます。以下の部分です。

「資料となる情報資源の蓄積手法が、図書館や博物館は『収集』であるのに対し、アーカイブズ機関では『移管』を原則とする。またアーカイブズ機関 は、親組織と関係が親密であり、親組織の文書のライフサイクル全般にわたって一貫した管理を担う。文書の作成段階から関与し、永久保存すべき文書を確実に 残すしくみと、保存期間が満了となった不要文書を確実に廃棄するしくみをつくり、『組織(または機関)アーカイブズ』として機能する。これが、アーカイブ ズシステムの基本形であり、非現用となってから、親組織の文書を『収集』する姿は国際標準ではない」(4ページ)

ただ、限られた紙数のためでしょう、もう少し説明が必要ではないかと思いました。

例えば、朝日崇氏による「企業において求められるアーキビストの役割」の次の部分です。これは毛塚氏のアーカイブズに関する説明と密接に関連します。

朝日氏は「言葉の定義をきっ ちり押さえよう」(117ページ)といい、「デジタルアーカイブ」「デジタルアーキビスト」という言葉の意味に関して架空の会社員K氏に次のように語らせて います。

「デジタルアーカイブとは第一に、従来手書きなどで作られたアナログ文書や写真・絵画等、あるいは今となっては読み取り不能のデジタル文書のデジタル化を指す場合で、これを『ターンドデジタル(Turned Digital)』と呼ぶこと。
第二には、現在使用しているWord、Excelといったコンピュータソフトによって作成されたもの、あるいは電子メールやインターネット等いわば、生ま れながらのデジタル文書、いわゆる『ボーンデジタル(Born Digital)』のアーカイブ化を指す場合であること。
さらには、博物館の収蔵資料や国宝級の襖絵などをデジタル化してバーチャル空間を作り鑑賞してもらう仕組みなども、デジタルアーカイブというのだという。 アーカイブとは、組織体の活動の結果うみだされる資料を指す、と習ったばかりなので、これなどは『デジタルコレクション』ではないかと、ちょっと違和感を 覚えたが、学者ではないので、アーカイブという言葉が市民権を得られれば、自分の仕事にもいい影響があるだろう、と納得した」(117‐118ページ、太字強調は松崎による)

K氏のとまどいをどう考えたらよいのでしょうか?

ここで再び前述の「まえがき」に戻りましょう。

「実は個々には見解に相違があると思える点もあるだろう。だが、それこそが近年の日本におけるアーカイブの展開の広がりを示す」

そのように考えることも可能かもしれません。しかし、企業を主な対象としてアーカイブズの普及・振興に取り組んでいる私としては、このような疑問に対して丁寧に答えて行くことが、真にアーカイブズを(アナログであれデジタルであれ)、社会に根付かせるのに必要なのではないかと感じます。しっかりとしたアーカイブズに関する理解があってこそ、企業経営者をはじめとするステークホールダーはスタッフ、予算をアーカイブズに振り向けようと意思決定するものでしょう。

また、鈴木宏宗氏が「日本近現代政治史料とアーキビスト:収集アーカイブの視点から」の中で言及している「組織(機関)アーカイブズ」と「収集アーカイブズ」の区別も大切です。この2つのタイプのアーカイブズの区別をはっきり意識していないと、冒頭の毛塚氏の説明する「収集」と「移管」の違いも理解することが困難ではないでしょうか。編集者がどこまでこの点を意識しているのか気になりました。

本書は全体としてみるならば、多様な収集アーカイブズの事例集と言えます。このことは裏を返すと、組織(機関)アーカイブズに関する事例と説明が少ないということでもあります。さらにさきほどのK氏の疑問も、組織アーカイブズに関する説明が十分でないので、読者としてはどう判断してよいのか途方に暮れるほかないように思います。

そこで、以下ではかつて私が行った企業アーカイブズと企業アーキビストに関するお話で使ったスライドの一部を用いながら、本書が十分に紙数を割いていないと思われる点について、私なりの説明を試みたいと思います。そのことを通じて本書の価値について考えてみたいと思います。なお、理解を容易にするために、企業アーカイブズ・アーキビスト向けの言葉を、アーカイブズ・アーキビスト一般をさす言葉に置き換えています。またオリジナルのスライドでは「資料」「史料」の用語を使っているところがありますが、アーカイブズの特性を考えた場合「記録」がよりふさわしいと考え、そのように置き換えているところがあります。

◇参考ページ◇
企業史料協議会 第18回ビジネスアーキビスト研修講座 入門コース3日目 ②ビジネスアーカイブズ (2013年10月18日)
専門図書館協議会 第19回情報サービス研究会 「経営資源としてのアーカイブズ」 (2013年11月25日)
配布資料1「経営資源としてのアーカイブズ」
配布資料2「参考文献リスト」

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■継続的に保管される記録としてのアーカイブズ

まず、「アーカイブズ」には2つの意味があります。物理的な建物(「館」)と機能・プログラムを分ければ、3つの意味があるとも言えます。
(以下のスライドは、画像をクリックすると別ウィンドウで大きなサイズでご覧になれます。)

アーカイブズのふたつの意味

 

それでは、記録物としてのアーカイブズとはなんでしょうか。

アーカイブズとは「人間の日々の活動から生み出された記録物のなかで、継続的な価値を持つことから、長期にわたって保存維持管理されるもの」を指します。パリに本部を置く、アーカイブズに関する国際的専門団体である国際アーカイブズ評議会(略称ICA、1948年設立)は、「会議」を例にしてアーカイブズを説明しています。

コンテクストの共有

会議に伴う記録物には、議題、報告、関連資料、プレゼンテーション、発言内容や決定内容を記した議事録、場合によっては個人的なメモや、もしかしたら会議に参加するために利用した交通機関のチケットといったものが存在します。つまり、一つの会議から一連の文書が残されます。これらは、誰が、何を、どのように、なぜ、どこで、いつ行ったかに答えるための証拠となるものです。

 

証拠

これらは当座の業務・活動を行うために必要なもの(現用)ですが、時を経て、当座の業務・活動にはもはや直接必要でなくなったものも、違った意味で、後世の人々にとっては価値あるものとなるのです。もしかしたら何世紀も後の人々にとって価値がある可能性をも持つものなのです。

現用と非現用
このように、もはや当座の業務・活動には利用しない(非現用)けれども、過去の業務や活動を記録する性格を持ち、長期的・継続的な価値を持つ記録物としての資料がアーカイブズなのです。

 

 

毛塚氏がアーカイブズは、図書館や博物館が所蔵資料を「収集」するのとは異なり、親機関からの記録の「移管」を基本とする、それが国際標準である、と述べているのは下の図を参照すると理解しやすいかもしれません。親機関で現用から半現用になり、最後には業務に使われなくなった記録のうち、永続的に保管すべきものが、アーカイブズに「移管」されるのです。

記録のライフサイクル

 

以上の説明中でとくに留意してほしいのは、継続的保管価値を持つ記録としてのアーカイブズは、

指紋

指紋のようなものである、という点です。

それは、何かの行動・出来事を証拠づけるという性格を持つものです。アーカイブ(ズ)=歴史資料あるいは文化資源、という理解が日本では強いと思います。が、記録としてのアーカイブズがアーカイブズである理由はそれが何らかの行為や事柄を証明するエビデンスとしての価値をもっていることにあるのです。

私は最近諸外国のアーカイブズ専門職養成コースで利用されているテキストの中で「アーカイブズ」と「記録」がどのように定義されているのか調べてみました。少しずつ表現は異なるものの、ある組織(個人を含める場合もあります)がその活動や業務の過程で作成したり受け取って蓄積した記録のうち、永続的保管価値を持つものをアーカイブズと呼ぶ、という共通理解があります。このような記録の利用のされ方はさまざまであり得ます。しかし、重要なのは、記録は活動や業務を証明するものであるという理解の仕方です。

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■アーカイブズをどのように使えるものにするか?

そのような記録の集積としてのアーカイブズを使えるようにするにはどうしたらよいのでしょうか?

フォンドとシリーズ

アーカイブズでは、主題による分類といった手法をとりません。記録が作成されたコンテクストが分かるように整理されるのです。同じ出所(しゅっしょ、英語ではProvenance)ごとにまとめる、同じ出所の中では、あるファイリングシステムによってまとめられている記録の束を、シリーズとしてひとつの単位とする、といった考え方をとります。

フォンド

ここで国立国会図書館、という組織を例に、この組織の記録の分類を考えてみたいと思います。

 

国会図書館の場合はたいへん大きな組織ですので、この全体レベルをスーパーフォンドに設定し、その下位に位置する「総務部」、「調査及び立法考査局」、「収集書誌部」、「利用者サービス部」、「電子情報部」、「関西館」、「国際子ども図書館」をフォンドと分類上設定できるでしょう。ここでは「電子情報部」を例にとります。この部内には「電子情報企画課」、「電子情報流通課」、「電子情報サービス課」、「システム基盤課」があります。このレベルをサブフォンドと把握すると下の図のようになります。電子企画課が担当している「デジタル情報資源ラウンドテーブル」の全体事務局、という業務がひとつのシリーズを構成し、このシリーズの中にいくつかのファイルが含まれると考えることができるでしょう。

国会図書館asスーパーフォンド
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■アーキビストの仕事と人材養成について

以上述べてきたことが組織(機関)アーカイブズの基本です。収集アーカイブズとは、記録を作成した母体から切り離されたアーカイブズを収集・管理・公開・提供するさまざまな機関(図書館や博物館、美術館、その他個人や団体が運営するもの)を指します。

それではアーキビストはどのような仕事をするのでしょうか。またどのようなことを知っている必要があるのでしょうか。

下の図は、アーカイブズに記録が移管(収集アーカイブズの場合は収集)されてから、利用者がアーカイブズを利用できるようにするために、アーキビストが行うべき基本業務をまとめたものです。

本書『これからのアーキビスト:デジタル時代の人材育成入門』の毛塚氏の論考10~12ページの「表2 アーカイブズに関する専門的業務の基準」と「表3 アーカイブズ学に関する専門科目の履修要件」を併せて読んでいただければ、アーキビストはどのような知識と技術を持っていなくてはいけないのかが理解できると思います。

アーキビストの基本業務

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■「デジタル」であることの意味

アーキビストが紙の記録だけを扱う時代はとっくに過ぎ去りました。紙の他にデジタルファイル、デジタルオブジェクト、デジタルデータ・・・デジタルな対象を扱う必要があります。そのためデジタル技術に関わる知識、デジタルな複製物を扱うことに伴う法律的知識など、デジタル媒体の長期保存方法など、紙の時代以上に多くの学ぶべきことがあるのは明らかです。

しかし、そのことがアーキビストの業務を根本的に変えてしまったのでしょうか。わたしはデジタル化がアーキビストの業務を根本的に変えたとは考えていません。上の図に示した基本業務は、紙であろうとデジタル記録であろうと対処しなくてはいけない一連の業務であると思います。大切なのは、適宜新たな知識を獲得しながら、必要とあれば外部のスペシャリスト(個人、企業、グループなど)と協力していくことではないでしょうか。

紙とデジタル

デジタル技術によって、記録の活用の仕方が劇的に多様化し、情報発信・情報共有も格段に容易になったと思います。その利点をうまく活用し、アーカイブズを社会に(組織アーカイブズの場合は、親組織の業務や活動に)役立てていくことこそ、アーカイブズの設立(スタート)、運営の目的でしょう。
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■K氏の疑問は?

K氏の疑問への回答は、、、私ならば、もしそのデジタルなオブジェクトの集まりが、何の記録性(証拠性)も持たないならば、「デジタルアーカイブ(ズ)」とは呼びません。しかし、現在の風潮は、「アーカイブ(ズ)」と命名することがある種の価値を生み出している(ブランド価値のようなもの?)にも見受けられます。

なお、企業アーカイブズに関しては企業史料協議会編『企業アーカイブズの理論と実践』(2013年)が現時点では日本語で読める最も詳しい文献です。企業のアーカイブズに関心を持つ方々におすすめします。
http://www.baa.gr.jp/kankobutu.asp?NoteAID=32

『企 業アーカイブズの理論と実践』では、デジタル社内文書(ボーンデジタル文書)を対象にした企業アーカイブズの基本について「第5章 デジタル文書と企業 アーカイブズ」で、社内資料のデジタル化とその管理については「第6章 史資料の資源化」「第7章 史資料の管理」を中心に、デジタル化された社内資料の 活用については「第8章 情報発信とサービス提供」を中心に説明しています。

 

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■組織アーカイブズの秘訣…「アーカイブ体質になろう」 /  収集アーカイブズのサステナビリティ

さて本書『これからのアーキビスト:デジタル時代の人材育成入門』を組織(機関)アーカイブズと収集アーカイブズという区分で振り返ってみると、

毛塚万里氏「日本のアーキビストの現状と問題点」、
朝日崇氏「企業において求められるアーキビストの役割」、
リブヨ氏 「リブヨ」によるデジタルアーカイブ」、
坂口貴弘氏「アーカイブズ関連情報の収集と発信」、
工藤安代・清水裕子・井出竜郎各氏「interview アートをアーカイブする:NPO法人アート&ソサイエティ研究センターの視点」

がいわゆる組織アーカイブズ的な観点からの論考と言えます。リブヨ氏や坂口氏の活動は、組織としての業務や活動ではないのですが、個人の仕事の記録の集積といえるもので、わたしは組織(機関)アーカイブズ的なものとしてとらえたいと思います。

このほかの論考は、収集アーカイブズの多様な事例、あるいは収集アーカイブズに関する新しい考え方に関するものと言えるでしょう。さきほどのアーキビストの基本業務との関係でいえば、収集アーカイブズの新たな取り組み事例や考え方を知ることによって、アーキビストは新たに獲得すべき知識やスキルについてのヒントを得ることができるのではないかと思います。

私としては本書には、政府、自治体、企業、各種団体、学校などの組織アーカイブズの事例と理論的考察に関する論考がもう少し欲しかったと思います。そのような思いを抱きつつも、この本を読んで非常に啓発されたが、「interview アートをアーカイブする:NPO法人アート&ソサイエティ研究センターの視点」です。インタビューでは、「種は船 in 舞鶴」というアートプロジェクトの記録を保存する試みを通じて、「写真や映像は残りやすいが事務局が持つ資料がなくなりやすい」、「資料を作る段階で公開可能か、非公開にするのかチェックをいれてもらう」、「記録管理のルール化の必要」といった具体的な発見が語られています。「アーカイブ体質になろう」がアートプロジェクト中のメンバーの合言葉になったそうです。少数の担当者(アーキビストやレコードマネージャー)だけが記録を残そう、と思ってもアーカイブズはうまくいきません。メンバーそれぞれが、記録の管理、アーカイブズの保存の大切さを理解することが組織アーカイブズ運営の秘訣だと感じました。

このような視点がプロジェクトにもたらされた理由のひとつには、本書では触れられていませんが、伝統的なアーカイブズ学を学んだ記録管理の専門家が関わっていることも指摘しておきたいと思います。

http://www.rmsj.jp/app/download/7549776490/2014_taikai_program_0413.pdf?t=1399597960 (PDF)
※記録管理学会2014年度大会研究発表5月24日 齋藤柳子「アートプロジェクトにおける記録管理の仕組み」
(この研究発表の対象は、公益財団法人東京都歴史文化財団の傘下の東京文化発信プロジェクト室とNPO法人アート&ソサイエティ研究センターの共催による「種は船」という2012年に行ったアートプロジェクト(舞鶴~新潟までの航海記録)。アーティストの代表は東京芸術大学教授 日比野克彦氏。齋藤柳子氏は同プロジェクトの記録管理プログラムの監修者)

他の二つのインタビュー

大井夏代・中野純各氏「interview 『自宅ミュージアム』という新たな出会いの場:少女まんが館の試み」
佐藤正実氏「interview 『地域アーカイブ』と『震災アーカイブ』:NPO法人20世紀アーカイブ仙台の挑戦」

は収集アーカイブズを長く続けるために心がけている点が印象に残りました。少女まんが館の場合は「無理をしない」、NPO法人20世紀アーカイブ仙台の場合はアーカイブズを丁寧に「編集」することによって、後世に役立つようにする点がとりわけ重要であるということです。

※本節では、組織アーカイブズ的な取り組み以外の事例に関して、厳密に言うならばコレクションと呼ぶ方が適切と思われる事例も便宜的に「収集アーカイブズ」とみなしています。収集によるコレクションをどう呼ぶべきかについては、基本的には「自称」(当事者による命名)を尊重すべきなのではないかと考えます。

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2つほど大切な部分に誤記(と思われます)がありました。増刷時には訂正を期待します。誤った情報が伝えられてしまうことは困ります。、大切な部分に誤記があると、記述全体に対する信頼性が損なわれてしまうでしょう。

[1] ivページ
(誤) 福島幸弘(ふくしま・ゆきひろ)京都府立総合資料館
(正) 福島幸宏(ふくしま・ゆきひろ)京都府立総合資料館
http://researchmap.jp/fukusima-y/

[2] 213ページ
表「高度文化資源専門職の資質」のArchivesの項目に4か所「アーカイブズ権利研究」とありますが、「平成25年度アーカイブズ・カレッジ長期コース科目より」という記述からすると、正しくは「アーカイブズ管理研究」と思われます。
(誤)アーカイブズ権利研究
(正)アーカイブズ管理研究

クリックしてH25a_youkou.pdfにアクセス

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