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Archives 101 — 図書館基礎特論「アーカイブズの基礎」

28 月曜日 5月 2018

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アーカイブズ, ICA, 公文書, 公文書管理

2018年度の春学期、司書課程の授業を行っています。選択科目の図書館基礎特論です。わたしの授業のテーマは「アーカイブズの基礎」。図書館基礎特論については、これからの図書館の在り方検討協力者会議 「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在り方について」(2009年2月)の最後のページに説明があります。

司書課程での授業なので、「司書としての価値を高める(そしてそれによってパブリック=公共に寄与する)ための、アーカイブズの知識と考え方」という視点で毎回授業を行っています。アーキビストの養成やアーカイブズ学の授業というよりは、司書としてアーカイブズを利用するために知っておくとよい、とわたしが考えていることをお話しています。

アーカイブズの仕組みは、原理的にレコード・マネジメントを含むものです。この部分は、どのような職業につくにせよ、あらゆる職業に関わってきます。司書として働く場合以外でも、企業であろうと、役所であろうと文書管理、記録管理は知っておく必要があります。

当初の計画ではガイダンスの次の回(第2回目)で基礎的な話をして、以後10回にわたりさまざまな種類のアーカイブズ(公的な文書館、企業アーカイブズ、その他)、デジタル長期保存について1回、デジタル展示・キュレーションとしてのデジタルアーカイブとコミュニティアーカイブに関して1回、というシラバスにしました。

しかし実際に行ってみると、基礎的な部分は1回で終わらず、もう1回費やすことに。その次の回に小テスト(20180507)を行いました。ここまでは理解してほしい、という部分に関する内容です。(PDFの4ページ目は、アーカイブズ管理に関するセミナーなどでは言及したくなる部分ですが、これは興味があったら読んでみてね、という位置づけです。)

内容は以下のようなものです。(PDF)

—————————————

2018年5月7日

図書館基礎特論「アーカイブズの基礎」復習テストと補足

1. (    )に授業で学んだ用語(カタカナ)を入れてください。

レコードとは・・・ある活動の記録された証拠(        )すべて

【出典】エリザベス・シェパード、ジェフリー・ヨー〔共著〕 森本祥子ほか〔編訳〕
『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』(2016年)21ページ

2. 授業で学んだ「アーカイブズ」の意味に含まれるものに○をつけてください

(    ) 業務遂行の過程で個人又は組織により作成・収受されて蓄積され、並びにその持続的価値ゆえに保存された文書。

(    ) アーカイブズを保存し、閲覧利用できるようにする建物又は建物の一部。アーカイブズ保存所とも呼ばれる。

(   ) 文書の出所に関わりなく、何らかの特徴(たとえば、取得方法、作成者、主題、言語、媒体、形式、収集家の名前)に基づいて集められた、文書の人工的まとまり。

(    ) アーカイブズを選別、取得、保存、提供することに責任をもつ機関又はプログラム。アーカイブズ機関、アーカイブズ制度、アーカイブズ事業とも言われる。

【出典】ICA(国際アーカイブズ評議会)オンライン多言語用語集日本語ページ http://www.ciscra.org/mat/mat/termlist/l/Japanese

3. 図書館司書、レコード・マネジャー/アーキビストがそれぞれ扱う対象について線で結んでください。

図書館司書・                                        ・レコード・               ・証拠(     )

レコード・マネジャー/アーキビスト・      ・情報プロダクト・       ・インフォメーション

【出典】『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』35, 43-45, 142, 160, 169, 179-187ページ

4. レコードの一生(ライフ)について、説明に当てはまる用語を(  )に記入してください。

「組織の現在の業務で日常的に使用されるレコードで、作成された場所で保管され続けているものである」
・・・(         )レコード

「現在の業務遂行にあたってはほとんど必要とされないので、オフィスからレコードセンターに移送し、そこで最終的な処分を待つべきとされるものである」

・・・(         )レコード

「現在の業務にはもはや必要とされないレコードである」

・・・(         )レコード

【出典】『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』27ぺージ

5. アーカイブズ機関には2種類の機関があります。(   )の中に用語を入れてください。

「組織内で作成されたものや、その組織と外部との間でやりとりされた通信といったアーカイブズ(記録資料)を保存・管理・提供する」

・・・(         )アーカイブズ

「あるテーマ・主題の下にさまざまな組織で作成されたアーカイブズ(記録資料)を収集して保存・管理・提供する」

・・・(         )アーカイブズ

【出典】企業史料協議会編『企業アーカイブズの理論と実践』(2013年)6ページ
公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター編『世界のビジネス・アーカイブズ:企業価値の源泉』(2012年)6-8ページ

6. アーカイブズの組織化・整理を考える上で最も重要や考え方について述べた文章です。これを表す用語(日本語、漢字2字)を(   )に書き入れてください。英語は下に記したものです。

「業務遂行過程で記録を作成し、管理し、利用してきた組織や個人」

・・・(         ) provenance

【出典】全国歴史資料保存利用機関連絡協議会監修『文書館用語集』(1997年)58ページ

7. レコード(そしてアーカイブズ)にとって大切な「コンテクスト」とは「記録が作成された際、それが誰によって作成されたのか、どのような組織における機能や活動のもとで作成されたのか、その記録は他の記録とはどんな関係にあるのか、といったことを意味する」ものです。

レコードとして意味を持ち、証拠として利用することができるために必要なモノ/コトをあげてください。

【参考】『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』33, 108ぺージ
アメリカ・アーキビスト協会用語集 context の項目 https://www2.archivists.org/glossary/terms/c/context
“1. The organizational, functional, and operational circumstances surrounding materials’ creation, receipt, storage, or use, and its relationship to other materials. – 2. The circumstances that a user may bring to a document that influences that user’s understanding of the document.”

8. アカウンタビリティとは「個人、組織および集団が責任を負っている行動や決定に関して、その行動や決定についての疑問に答えたり、説明したり、あるいはそれらが正当であると主張できる能力」(アメリカ・アーキビスト協会用語集日本語訳)です。通常「説明責任」とも言われますが、アーカイブズ、レコード・マネジメントの文脈では「説明責任」の前にある用語を補うことが必要です。それはなんですか。(  )の中に入る用語(漢字2字)を記してください。

・・・(         ) 説明責任

【参考】アメリカ・アーキビスト協会用語集 accountability の項目 https://www2.archivists.org/glossary/terms/a/accountability
“The ability to answer for, explain, or justify actions or decisions for which an individual, organization, or system is responsible.”

9. アーキビストの基本的な業務/職務には「移管・収集」「評価選別」「整理」「目録作成(編成・記述)」「保存(配架等)」「利活用(・公開)」といったものがあります。このうち、アーキビスト(レコード・マネジャーの場合もある)に特有で、非常に難しい業務/職務とみなされているものの一つが「評価選別」です。どのような点に注意して、この業務/職務に取り組む必要があるでしょうか。

10. レコード(そしてアーカイブズ)を保存・管理・提供する(つまりマネジメントする)目的を図中に書き込んでください。
【参考】『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』16ぺージ

「ディスカバリー」をきっかけに考えたこと

12 木曜日 5月 2016

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Archivematica, Archon, AtoM, オープンソース, ディスカバリー, Calm, Discovery, 記述, 記述標準, ICA, ISAD(G), NRA, Omeka, TNA

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■TNAのディスカバリー・サービス導入

10年と少し前にビジネス・アーカイブズに関わる仕事を始めて以来、イギリス国立公文書館(TNA)のNRA(National Register of Archives、特にビジネス・レコード・インデックス)とアーカイブズ機関情報に関するARCHONディレクトリ、そしてアメリカ・アーキビスト協会(SAA)の企業団体アーカイブズ・ディレクトリは、私にとってずっと、ビジネス関連レコード/アーカイブズ(資料と機関)所在情報のデータベース化・組織化のベンチマークとなってきました。NRAに関しては、3年前に森本祥子氏による日本語文献が公刊されて、イギリスにおけるアーカイブズ所在情報組織化の歴史的な経緯の理解が格段に進んだと思います。その後国立公文書館の渡辺悦子氏によるイギリスでのアーカイブズ機関の連携に関する論文が公開され、TNAが管理する複数の検索システムやデータベースの統合による新たなサービス「ディスカバリー」の紹介も進みました。(TNAではディスカバリー・サービスの提供開始とともに、個々の検索サービスの提供は停止したため、以下ではウェブアーカイブズからのスナップショットを記載しておきます。)

【TNA: NRAディレクトリのスナップショット(2013年9月20日)】
http://webarchive.nationalarchives.gov.uk/20130920012334/http://www.nationalarchives.gov.uk/nra/default.asp

【TNA: ARCHONディレクトリのスナップショット(2008年1月7日)】
http://webarchive.nationalarchives.gov.uk/20080108014935/nationalarchives.gov.uk/archon/

【SAA: 北米における企業団体アーカイブズ機関ディレクトリ】
http://www2.archivists.org/groups/business-archives-section/directory-of-corporate-archives-in-the-united-states-and-canada-introduction#.VzKBh9KLTcs

【TNA: Historical Manuscripts Commission】
http://www.nationalarchives.gov.uk/archives-sector/hmc.htm


【Royal Commission on Historical Manuscripts(1869年設置)についての日本語文献】
ノーマン ジェイムズ. 森本 祥子. 翻訳. イギリスにおける民間アーカイブズ : その保存へのとりくみ. アーカイブズ学研究 / 日本アーカイブズ学会 編.. (19):2013.11. 70-87 ISSN 1349-578X
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=852174&set_entry=000001&format=999

【TNA: ディスカバリー】
http://www.nationalarchives.gov.uk/about/our-role/plans-policies-performance-and-projects/our-projects/discovery/

http://discovery.nationalarchives.gov.uk/

【TNAディスカバリーについての日本語文献】
渡辺 悦子. イギリス国立公文書館の連携事業. アーカイブズ / 国立公文書館 編.. (54):2014.10. 50-60 ISSN 1348-3307
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=853312&set_entry=000001&format=999
(本文PDF)
http://www.archives.go.jp/publication/archives/wp-content/uploads/2015/03/acv_54_p50.pdf


さらに、昨年(2015年)10月に福岡で開催された国際アーカイブズ評議会東アジア地域支部(EASTICA)総会・セミナーにはTNA商務・デジタル関係担当ディレクターのメアリー・グレッドヒル氏が参加、ディスカバリーに関する詳しい説明もありました。

【「英国国立公文書館におけるボーンデジタル記録管理の課題」】
メアリー・グレッドヒル(英国国立公文書館商務・デジタル関係担当ディレクター)
(要旨・本文PDF)
http://www.archives.go.jp/news/pdf/151106gledhill_ja.pdf
http://www.archives.go.jp/news/20151106.html

※関連文献として下記も上げておきたいです。
 齋藤歩(学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻博士後期課程)
 「アーカイブズのデジタル化がめざすもの」(2016年1月5日)
 http://www.ameet.jp/digital-archives/digital-archives_20160105/

TNAの2015年11月4日付ブログ記事によると、この時点でディスカバリーはTNAと英国国内2500のアーカイブズ機関が所蔵する記録に関する3,300万件の記述へのアクセスを提供しています。

【More comprehensive Discovery】
http://blog.nationalarchives.gov.uk/blog/comprehensive-discovery/

TNAの新サービスを初めて耳にした当初(2012~3年頃)は、それはアーカイブズに関わる複数のデータベースを横断検索するシステムで、”Discovery”なる名称は単なる固有名詞だろうと素朴に受けとったものでした。しかし、どうももやもやしたものを感じたまま、「ディスカバリー」がずっと気になっていました。

 

■図書館界での「ウェブスケールディスカバリー」に触れて

そこで、思い立って手にとってみたのが『図書館を変える!ウェブスケールディスカバリー入門』です。これは大学図書館(佛教大学図書館)に勤務する著者が「ウェブスケールディスカバリー」と呼ばれるサービスを日本で初めて導入した事例を詳しく解説紹介した本です。

飯野勝則 著. 図書館を変える!ウェブスケールディスカバリー入門. ネットアドバンス ; 出版ニュース社 (発売), 2016.1. 270p ; ISBN 978-4-7852-0156-2 :
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=971079&set_entry=000001&format=040

http://www.amazon.co.jp/%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E3%82%92%E5%A4%89%E3%81%88%E3%82%8B-%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%90%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%85%A5%E9%96%80-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E9%A3%AF%E9%87%8E%E5%8B%9D%E5%89%87/dp/4785201568

本書によると、図書館業界における「ディスカバリーサービス」とは、電子コンテンツが増大するなか、「紙」と「電子」の多様なコンテンツを一元的に管理し提供するために生まれた新しいOPAC、ということです。と言いつつ、TNAのディスカバリー(Discovery=常に大文字のDで始まる名称)と図書館界のディスカバリーサービスの関係は今一つはっきりとはしません。”資料利用者の利便性を高めるために、発達しつつあるテクノロジーを使って実現した、より高度な検索サービス”というほどの共通項なのかなぁ・・・と思いつつ本書をひも解いてみたところ、この問題とは別な部分に目が釘付けとなりました!

 

それは本書が「日本化」と呼ぶ取り組みです。「日本化」は本書のテーマそのものです。どう言うことかというと、ウェブスケールディスカバリーサービスを提供するベンダーは本書執筆時点では四つ、すべて海外のベンダーでした(OCLCのWorldCat Local、ProQuestのSummon、EBSCOのEBSCO Discovery Central、Ex LibrisのPrimo Central、同書35ページ)。佛教大学図書館ではこの4者のうち、ProQuestのSummonを日本で初めて導入、そしてローカラズ(日本化)=日本語に対応させることに取り組みました。(著者は日本化には二つの側面、一つはシステムの日本語化であり、もうひとつはコンテンツの日本化=すなわち日本語コンテンツを増やすことであると説明しています。同書99ページ)

一方、図書館のシステムはどうかというと、多くは国内ベンダーによって提供されているようです。例えば、ブログ「よしなしごと」(2016年1月11日)によると、国立大学法人26校の図書館システムのベンダーは2016年には、NTTデータ九州、富士通、NEC、リコー、日本事務機、丸善・京セラなどの国内企業です。

国立大学法人の図書館システム(2016)
http://otani0083.hatenablog.com/entry/2016/01/11/182900



■アーカイブズ機関の資料管理システム/ソフトウェア

翻ってアーカイブズに関わるシステムの状況はというと・・・。私が知るかぎり、日本国内の企業の資料室(アーカイブズ)で、アーカイブズ専用システム(ここで「専用」として念頭に置いているのは、アーカイブズの原理すなわち出所に基づく編成・記述という考え方を採用したものです)を利用しているという事例を耳にしたことはなく、図書館や博物館向けの資料管理システム、あるいは社史編纂のための年表作成ツールとして開発されたシステムを資料登録管理のために利用しているという例がほとんどです。エクセルやファイルメーカーといった汎用の表計算ソフトやデータベース・ソフトウエアで一から作り上げる、という方法をとっているところも多いと思います。

 

【イギリスの例:Calm】

そこで海外に目を向けるとどうでしょうか。イギリスの場合、アーカイブズ機関の多くが利用するAxiell ALM社提供のプロプライエタリなシステム、Calmがあります。自治体や大学アーカイブズに加え、イングランド銀行、HSBC、ガーディアン、マークス&スペンサー、ユニリーバ社、ウェルカム財団といった企業・団体アーカイブズでもCalmは利用されています。ユーザ機関は400を超えます。

Calmの特徴は ISAD (G)、EAD、EAC、ISAAR (CPF)、OAI-PMH、RDF、SPECTRUMといった国際標準に準拠したつくりになっており、アーカイブズ資料の持つさまざまな階層性をシステム上に再現し、コンテクスト情報を提供できる点にあります。画像ビュー、典拠ファイル(名称、場所、主題、事項、事件、期間)、主題シソーラス、貸し出し管理、修復状況管理、アクセス提供(CalmView)、アクセス権限管理、分類、検索、EADインポート/エクスポート、その他の機能を備えています。

(Axiell ALM社)
http://alm.axiell.com/solutions

(ユーザ一覧)
http://alm.axiell.com/customers/client-list?field_country_tid=17&field_collection_type_tid=All&field_product_tid=9&items_per_page=500

(Calmに関する説明:PDF)
http://alm.axiell.com/sites/default/files/Calm%20ALM.pdf

Calmを利用しているイギリスのアーカイブズ機関は非常に多いのですが、ロンドンの著名な銀行アーカイブズのアーキビストに直接聞いた話によると、同行アーカイブズではファイルメーカーを利用しているということでした。このようなアーカイブズはもちろん他にも存在するでしょう。

【韓国での取り組み:オープンソース・ソフトウェア】

韓国での記録管理学・アーカイブズ学教育の中心機関のひとつ、韓国国家記録研究院副院長であるイム・ジンヒ氏の講演(2014年6月21日、学習院大学にて)は、オープンソース・ソフトウェアを利用して民間アーカイブズを普及するという活動に関するものでした。わたしもこの講演会に参加しました。その講演内容は、学習院大学大学院アーカイブズ学専攻が発行する年報『GCAS Report』第4号(2015年2月28日発行)に全文収録されています。

任 眞嬉. 元 ナミ. 訳. 金 甫榮. 訳. 講演 韓国におけるオープンソース・ソフトウェア記録システムの普及活動 : 〈記録文化〉を浸透させるために. GCAS report = 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報 / 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻 編.. (4):2015. 6-22 ISSN 2186-8778
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=976026&set_entry=000001&format=999
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-hum/arch/02gcas-report.html

韓国では日本より10年早い1999年に公文書管理に関する法律「公共機関の記録物管理に関する法律」が制定され、これを嚆矢として公共部門における電子記録管理、アーカイブズ管理が飛躍的に進展したのでした。イム先生の講演によると、近年アーキビストたちは民間におけるアーカイブズ構築に着手し、その中でシステム構築の方向性が議論になったといいます。

「民間アーカイブズ(※)では、システムを構築するにあたって、さまざまな困難に直面していました。サーバーの確保やソフトウェア購入費用などは、民間アーカイブズにとって大きな負担でした。システムを構築するとしても、持続的に維持することが可能なのかという問題がありました。また、記録システムをまったく扱ったことのないアーキビストが、備えていなければならない機能要件を整理することは不可能でした。私は多くの民間アーカイブズをコンサルティングする中で、このようなシステムの問題の存在を知ることができました。

結局、私は2013年春、一つの決心をします。オープンソース・ソフトウェアを利用して記録システムを構築してみようということでした。そうすればまず、システムの構築費用は安くすむでしょう。そして、多くのアーカイブズが共通のオープンソース・ソフトウェアを使うことによって、技術的な問題を共同で解決していくことも可能となります。さらに、アーキビストたちがシステムを経験することによって、今後、高度なシステムを設計する能力を身につけることもできるでしょう。」(8ページ)

(※)ここで言う民間アーカイブズとは、欧米でcommunity archivesと呼ばれるようなものと考えられます。日本で「民間」というと企業なども含まれることが多いのですが、ここでは企業のアーカイブズは想定されていないようです。

イム先生たちは、記録の登録と記述のためには「AtoM」、長期保存には「Archivematica」、「基本目録の管理とオンライン展示のためには「Omeka」をオープンソース・ソフトウェアとして選びました(9ページ)。(AtoMに関しては後述)

 

■オープンソース・ソフトウェア

日本でもオープンソース・ソフトウェアの利用の試みの事例があります。2011年7月11日に開催された全史料協(全国歴史資料保存利用機関連絡協議会)近畿部会のテーマは「オープンソースのアーカイブ資料管理情報システム:日本語化の取り組みと試用実践の一例」で、講師は京都大学研究資源アーカイブ・デジタルコレクションアーキビストの五島敏芳氏でした。最初に五島氏の講演があり、続いてワークショップ形式でオープンソース・ソフトウェア(Archon)を用いて実際に参加者が資料登録を行いました。
http://www.jsai.jp/iinkai/kinki/e20110702.html
http://togetter.com/li/974084

五島先生の講演でも触れられていたように、当時はArchonのほか、Archivists’Toolkit(AT)やICA-AtoMなどのオープンソース・ソフトウェアが利用可能でした。その後2013年の9月に、ArchonとATを統合し新たな機能を付加したArchivesSpaceがリリースされています。ArchivesSpaceはウェブ上の次世代アーカイブズ情報管理システムであり、紙・電子・紙と電子のハイブリッド状態での記録の収集・記述・編成、典拠と権利の管理、レファレンス・サービスのための機能を備えています。加えてオーサリング・ツールの機能では、EAD, MARCXML, MODS, Dublin Core, and METS 各フォーマットでメタデータを生成することもできます。
http://www.archivesspace.org/overview
http://archivesspace.org/programtimeline

一方、イム先生の講演で言及されていたAtoMは、もともとはユネスコの資金を得て、2005年から国際アーカイブズ評議会(ICA)がカナダのArtefactual社と共同で開発、無償で提供してきたアーカイブズの記述とその目録のオンライン公開用ソフトウェアです(多言語対応)。当初はICA-AtoMというブランド名でした。しかしその後Artefactual社は独自に開発を進め、ICA-AtoMとAtoMという二つのバージョンが併存する状況となりました。結局、2015年以降ICM-AtoMの開発・バージョンアップは停止し、現在はArtefactual社のAtoMのみが継続的に更新されています。AtoMはICAが定めたアーカイブズに関わる国際標準(ISAD(G)等)に完全に準拠したソフトウェアです。
http://www.ica.org/en/ica-statement-access-memory-atom-0
https://www.artefactual.com/ica-publishes-position-statement-on-atom/

■おわりに

ここまでややまとまりなく書いてきましたが、私がささやかながら主張したいことは、事業活動の証拠と組織の記憶の保存・継承・活用のためのアーカイブズ管理を支えるシステムやソフトウェアの開発がこれからもっともっと盛んになってほしい、ということです。その際、記録資料の特性を最もよく活かすような資料の組織化・公開を可能にするものが必要だろう、ということです。オープンソースでもよいですし、プロプライエタリのものでもよいです。使いやすく、安定したものがいいですね。場合によっては海外製品のローカライズ(日本化)であってもよいのでは。TNAのディスカバリーは3,300万件のアーカイブズ記述情報へのアクセスを提供しているそうです。記述情報(つまりメタデータ)のデジタルなシステムへの登録を増やし、アクセスの対象を広げるためにも、使いやすいシステムが必要であろう、と考えた次第です。

20140621gakushuin

 

 

国際アーカイブズ評議会(ICA)議会・政党のアーカイブズ・アーキビスト部会(SPP)

14 土曜日 6月 2014

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立法, 議会, ICA, spp, 公文書, 公文書管理, 公文書管理法, 国会, 国会図書館, 政党

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国際アーカイブズ評議会(ICA)には13の専門部会があります。
http://www.ica.org/?lid=2310&bid=171

そのひとつに「議会・政党のアーカイブズ・アーキビスト部会」(Section of Archives and Archivists of Parliaments and Political Parties: SPP)があります。
http://www.ica.org/792/about-section-for-archives-of-parliaments-and-political-parties-spp/about-parliamentary-and-political-party-archives-spp.html

会長はオーストリア議会アーカイブズのGünther SCHEFBECK氏。
http://www.ica.org/804/steering-committee/spp-steering-committee.html

ベルギー、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、スペイン、スイス、ドイツ、イタリア、イギリス、ブルキナファソ、ギリシア、韓国その他の中央政府・地方政府、あるいは欧州議会といった議会アーカイブズ、議会図書館など現在120団体・個人がメンバーです。
http://www.ica.org/?lid=852&group1=32

SPPによる各種刊行物も公開されています。

「ガイドライン 議会組織:ドキュメントの評価選別基準」
Guidelines Parliamentary Institutions: The criteria for appraising and selecting documents
http://www.ica.org/download.php?id=52
http://www.ica.org/?lid=810&bid=200

「ウェブサイトのアーカイビングのためのガイドライン」
Guidelines for the archiving of websites
http://www.ica.org/3432/public-resources/guidelines-for-the-archiving-of-websites.html
http://www.ica.org/download.php?id=53

日本では公文書管理法が対象とするのが行政機関に限られているので、国会や国会図書館といった機関の組織アーカイブズに関する法律は存在しません。

国立国会図書館内の憲政資料室は政治家等の個人文書の収蔵先として知られており、それら所蔵資料の管理はもちろん行われています。これは国会図書館が収集したり寄贈を受けた資料の管理であって、国会図書館自体の組織アーカイブズとはまったく異なります。衆議院・参議院といった議会の公文書の管理を定める法律も存在しません。

法制度の整備へ向けた準備とともに、国会・地方議会関係者によるSPPへの参加は検討に値するのではないでしょうか。

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東洋文庫にて

国立公文書館によるICA策定「アーカイブズ所蔵機関に関する記述標準」記述実験

26 水曜日 2月 2014

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記述標準, ICA, ISDIAH, 国立公文書館

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ICAが策定した「アーカイブズ所蔵機関に関する記述標準」に基づいた機関情報の記述実験を行った結果が国立公文書館『北の丸』第46号に掲載されています。

中島康比古・水野京子「国際標準に基づくアーカイブズ所蔵機関情報記述の試み:国立公文書館を事例として」
http://www.archives.go.jp/about/publication/kita/pdf/kita46_p056.pdf

記録資料へのアクセス向上のためには目録情報の記述の標準化のほかに、記録資料を所蔵する機関に関する情報の記述も標準に則ったものであることが望まれます。

上記の記述実験を参考に、日本各地のアーカイブズ、とくに公文書館が、自館の機関情報を標準的なフォーマットで記述する試みに挑戦してほしいと感じました。

(参考)

『北の丸』第46号
http://www.archives.go.jp/about/publication/kita/046.html

「アーカイブズ所蔵機関に関する記述標準」(英語版)
International Standard for Describing Institutions with Archival Holdings (ISDIAH)
http://www.ica.org/download.php?id=1657

ISDIAH 日本語版「アーカイブズ所蔵機関に関する記述標準」
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/isdiah_jpn.pdf

東アジアアーカイブズ共同研究会主催セミナー「銀行アーカイブズの現状と課題」

08 日曜日 12月 2013

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Archon, BAC, bank, banking, EABH, 銀行, HSBC, ICA, NRA, SAA, TNA

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昨日(2013年12月7日)、東アジアアーカイブズ共同研究会主催セミナー「銀行アーカイブズの現状と課題」でお話させていただきました。

私のテーマは「海外における銀行アーカイブズ概観」です。最初にお話が来たときは、「海外の銀行アーカイブズについて話を」ということでした。「なぜ銀行アーカイブズ?」と思いつつ、海外の銀行アーカイブズの機関情報・資料情報といったリソースについてお話しいたしました。あくまでoverview、「概観」です。

当日の配布資料を掲載します。

20131207海外における銀行アーカイブズ概観(松崎)
【別紙①】ICAディレクトリからみた銀行アーカイブズ
【別紙②】欧州銀行・金融史協会(EABH)会員
【別紙③】HSBCアーカイブズ変遷図

このほかに【別紙④】を配布しました。これはHSBCアーカイブズの利用条件に関する文書で、下記URLからダウンロードしたものです。
Conditions of access (下記ページの真ん中あたりにあります)
http://www.hsbc.com/about-hsbc/history/hsbc-s-archives

ICAメンバーディレクトリからみた銀行アーカイブズをgoogle mapで表現してみたのは、こちらです。
https://mapsengine.google.com/map/edit?mid=z9zFQRtOpRgc.ksm_ClIErhw

配布資料に記載をいたしませんでしたが、英国国立公文書館(TNA)のNational Register of Archives (NRA)に討論の中で言及しました。記録資料の所在情報に関するたいへん優れたデータベースだと思います。
http://www.nationalarchives.gov.uk/nra/aboutapps/nra/about.htm

NRAに関してはTNAのNRA担当者Dr Norman Jamesによる論文 Private Archives in the United Kingdom を森本祥子さんが翻訳されております(日本語タイトル「イギリスにおける民間アーカイブズ:その保存へのとりくみ」)。間もなくパブリッシュされるとうかがっております。

またICASBLの運営委員であるAlison Turtonが編纂に関わった書籍(Business Archives Councilの叢書の一冊) British Banking: A Guide to Historical Records, Ashgate, 2000 はイギリスの銀行関係記録資料の所在と概要を記したガイドです。663ページに及ぶ記録資料所在情報の組織化に圧倒されます。(セミナー会場で参加者に手にとってご覧になっていただきました)

会場にはARMAインターナショナル東京支部理事の渡邊健さんも参加してくださいました。ながらく銀行に勤務されたご自身の経験に基づくお話はたいへん参考になりました。例えば、銀行における現用記録管理はしっかりしている点、日本のメガバンクは過去20年あまり合併・統合を繰り返し、歴史遺産をアイデンティテイ構築やブランディングに活用することが困難である点、さらにHSBC等はグローバルレベルで競争優位性を争っているが、日本のメガバンクはもう少しローカルな存在であるという点、などです。渡邊さんがご自身のブログで本セミナーについて取り上げておられます。

渡邊健さんのブログ
http://ameblo.jp/tsuyoshiwatanabe/entry-11721754154.html

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