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タグアーカイブ: ビジネスアーカイブズ

2015年度BAA(+α)を個人的に振り返る

14 土曜日 5月 2016

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アーカイブズ, ビジネスアーカイブズ, BAA, business archives, 編成, 記述, 企業史料協議会

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再来週の金曜日(5月27日)、企業史料協議会(Business Archives Association: BAA)の第35回総会・記念講演会が開催されます。会場は四ツ谷駅そばの主婦会館。初めての会場です。
http://www.baa.gr.jp/news.asp?NoteAID=11
http://www.baa.gr.jp/syousai.asp?id=393

総会を前にBAAのこの一年(2015年5月~16年5月)を振り返りました(私が参加した範囲で、です)。

・総会(第34回:2015/5/29日本教育会館、第35回:2016/5/27予定)
・広報部会(7/14、9/2、11/30、2/9、3/2、3/29、5/10、5/17予定、すべてBAA事務所)
・理事会(5/29、10/2、12/4、3/18、5/27予定、5/27を除きスクワール麹町)
・資料管理研修セミナー:「電子データの長期保管:現状と動向」(10/9一般社団法人全水道会館)、「史資料のデジタル管理と活用」(3/1中央大学駿河台記念館)
・第4回BA(ビジネスアーカイブズ)の日打ち合わせ(9/8アジア歴史資料センター、9/28国立情報学研究所)
・第4回BAの日講演会・シンポジウム(11/5日本教育会館)
・広島地方見学研究会(11/26-27)
・ビジネスアーキビスト研修講座「多様な価値を持つ企業アーカイブズとは」出講(12/10東京大学本郷キャンパス小島ホール)
・博物館セミナー「これからの企業ミュージアム」(3/8中央大学駿河台記念館)

■7月11日の資料管理研修セミナー
「資料活用のための目録作成のヒント:資生堂企業資料館での資料整理を事例として」

企業史料協議会では30年以上にわたって企業史料の取り扱い、管理、活用等に関してセミナーを行ってきました。研修担当理事によると(不思議なことではあるのですが)「目録」(アーカイブズの用語としては「編成、記述」)に関するセミナーを開催するのはおそらく初めてではないか、ということでした。これは日本における企業史料の保存と活用が長らく社史編纂を目的としてきたことと関係するのかもしれません。

講師を引き受けてくださったのは東京大学文書館准教授の森本祥子先生(「目録の標準化とは何か」)と学習院大学大学院アーカイブズ学専攻博士課程の清水ふさ子さん(「アーカイブズ資料記述および目録作成の一例:資生堂企業資料館所蔵資料を例に」)のおふたりです。申し込み多数のため急きょ大きな会場を確保して約80名の参加者にお越しいただきました(当初の募集人員定員は20名弱)。この分野に関する学習・研修の機会が求められていることを痛感しました。

通常司会は研修部会担当理事が行うのですが、研修部会に企画を持ち込んだ関係で私が司会を担当させていただきました。

http://www.slideshare.net/Business_Archives_Association/ss-50534474
http://www.slideshare.net/Business_Archives_Association/ss-50596064
http://www.slideshare.net/Business_Archives_Association/201507105-50418367
https://www.facebook.com/kigyoushiryou/posts/744653425657162
https://www.facebook.com/kigyoushiryou/posts/744656185656886
■11月5日のビジネスアーカイブズの日
「デジタル時代におけるビジネスアーカイブズ」

このイベントは毎年広報部会が企画運営します。2015年は特別講演をアジア歴史資料センター長の波多野澄雄先生(アジア歴史資料センターセンター長)に、今年のBAの日のテーマ「ビジネスアーカイブズと情報発信」に関する基調講演を高野明彦先生(国立情報学研究所コンテンツ科学研究系教授、東京大学大学院情報理工学系研究科教授)にお願いしました。

パネルディスカッションでは「デジタル時代におけるビジネスアーカイブズ」をテーマに石川敦子氏(㈱乃村工藝社)、佐藤朝美氏(㈱資生堂)、渡邉淳氏(セイコーミュージアム)の三人をパネリストにお招きし、高野先生にはモデレータをお願いしました。資料のデジタル化による積極的な情報発信は各社の事業に貢献するのはもちろんですが、情報発信がアーカイブズへの関心を高めると言う点も非常に重要です。
https://www.facebook.com/kigyoushiryou/posts/803890816400089
■(+α)1月の全史料協近畿部会(尼崎市総合文化センター7階 会議室)
「東京大学文書館における資料管理のとりくみについて:理論の理解と実践の試み」

これは7月のBAAでのセミナーを聞きつけた(!)全史料協関係者から、関西でも森本先生のお話が聞きたいということで実現した企画であると聞いています。コメンテータとして参加させていただきました。

記録資料整理における国際標準に関する理論(ICAがまとめたISAD(G)とオーストラリアで採用されて利用されているシリーズ・システム)と、東京大学文書館での実践(既に完結した歴史資料はISAD(G)で記述し、現在も作成され続けている大学法人文書に関してはシリーズ・システムに依拠して記述する)について詳しいお話をうかがいました。
http://jsai-kinki.com/blog-entry-66.html
https://www.facebook.com/AmagasakiMunicipalArchives/posts/827267230719049
企業で資料整理をする場合「なぜ国際標準が必要なのか」という疑問を持つ方も多いと思います。つい先日も「日本では今のところ、どの資料管理システム・ベンダーからも、アーカイブズ記述の国際標準に依拠したシステムは提供されていないんですよね」とお話したところ、ある企業資料館の館長さんから「いま使っているシステムで全然問題がない。国際標準でなくてもいいんじゃないの」という趣旨のコメントをいただきました。現在のシステムによって必要な資料を的確に探し出すことができる、満足できている場合、そして相応の投資をしている場合原価償却するまでにシステムを変えるといった必要性はもちろんないでしょう。

ただし、企業も政府もいずれ担当者は異動したり、退職したり・・・つまり変わります。文書作成者や作成者に近い人が資料管理をしている間はその文書に関するコンテクスト情報を得ることは難しくないかもしれませんが、アーカイブズの担当者が代替わりしていくうちにコンテクスト情報が失われていくのは避けられません。アーカイブズ資料が標準(規格)に則って記述されていれば、このような代替わりによっても、正確なコンテクスト情報を継承していくことができます(以上、森本先生の講演での説明を要約。http://www.slideshare.net/Business_Archives_Association/ss-50534474 スライド14)。ですから、システムの更新などの時期を迎えるならば、目録作成において標準という考え方を取り入れていくことを考えるのは好ましいことであると言えます。

そして、森本先生がもうひとつ強調していた「アーカイブズ資料は、資料の数だけ個性がある」から「ゆるやかにうけとめることがポイント」という点も重要です(前記スライド22)。アーカイブズはひとつとして同じものがありません。企業でも、同じ業種のアーカイブズであっても所蔵資料はまったく異なってきますし、編成(一般的な日本語に置き換えると「分類」)・記述も違ってくるのは避けられません。マニュアルがない、とも言えます。そのため所蔵資料を自らが分析して、編成(分類)、記述する必要が生じるわけで、そこが難しいところでもありますし、また面白いところでもあります。

 

■(+α)ICAソウル大会
そして今年は4年に一度のICA Congressがお隣韓国ソウルで9月に開催されます。私が関わるICASBAのセッション・プロポーザルが受理されたほか、加藤丈夫国立公文書館館長が「日本のアーカイブズの伝統をグローバル時代の新たな需要と調和させる:日本のビジネスアーカイブズに焦点をあてて」というタイトルでプレゼンテーションを行われるという発表がありました。
http://www.ica.org/sites/default/files/ICA%20Congress%20Seoul%202016%20accepted%20papers%20by%20TOPIC.pdf
http://www.ica.org/sites/default/files/ICA%20Congress%20Seoul%202016%20accepted%20papers%20by%20subID.pdf

加藤館長にはBAAの第2回ビジネスアーカイブズの日記念シンポジウム(2013年11月5日)で特別講演「企業が語り継ぐもの」を行っていただきました。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.432643056858202.1073741826.223260084463168&type=3

国立公文書館館長がビジネスアーカイブズをテーマに掲げて講演すると知り、たいへん驚きつつ、BAA関係者にとってはうれしい知らせでした。

 

■(+α)『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』翻訳プロジェクト
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784816926112

私も編訳者の一人として参加した翻訳プロジェクトの成果物『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』が来月中旬日外アソシエーツから刊行されます。先日無事校了を迎えました。

この本は今年度のBAAの活動とは直接の関係はありません。しかし校了を迎えたのを機に、もう少し長いスパンで振り返ってみると、これもBAAの活動に連なるものであるなぁ、といささか感慨深く感じています。

始まりは東日本大震災があった2011年。前々年から公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センターが準備を進めていたビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」(2011年5月11日)に、この年設立30周年にあたるBAAも共催者として、準備に関わってくださいました(国際アーカイブズ評議会企業労働アーカイブズ部会 (ICA/SBL)も共催)。
http://www.shibusawa.or.jp/center/network/01_icasbl_Tokyo.html

大震災のため一時は中止かとも思われました。しかし、海外のビジネスアーキビストの参加キャンセルも少数にとどまり、無事に開催できました。この時のプレゼンテーションを基に、主催者の公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センターは『世界のビジネス・アーカイブズ:企業価値の源泉』を編集し、2012年4月に日外アソシエーツから刊行することができました。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20120215/1329283710

本書刊行にあたっては日本のアーカイブズ界で活躍する方々に翻訳チームに参加してもらいました。英国国立公文書館のアレックス・リッチー氏による「ビジネス・アーカイブズに関する全国的戦略(イングランドおよびウェールズ)」を担当してくれたのが、学習院大学大学院人文科学研究科(当時)の森本祥子氏でした。またSBL議長でシンポジウム開催にリーダーシップを発揮してくれたフランスのサンゴバン社アーキビストであるディディエ・ボンデュー氏の部分を担当してくれたのが立教大学共生社会研究センターの平野泉氏。ボンデュー氏の章「フランスのビジネス・アーカイブズ、経営に役立つツールとして:サンゴバン社の例」の翻訳・編集にあたっては英語のみならずフランス語にも通じている方がどうしても必要で、平野さんはまさに適任でした。

この本の刊行もご縁となり、森本さんにはBAA編『企業アーカイブズの理論と実践』(2013年11月刊)第4章「機能としてのアーカイブズ」の執筆を担当していただきました。
http://www.baa.gr.jp/kankobutu.asp?NoteAID=32
http://www.amazon.co.jp/%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%96%E3%82%BA%E3%81%AE%E7%90%86%E8%AB%96%E3%81%A8%E5%AE%9F%E8%B7%B5-%E4%BC%81%E6%A5%AD%E5%8F%B2%E6%96%99%E5%8D%94%E8%AD%B0%E4%BC%9A/dp/4863451768

一方、ちょうどこの時期(記録によると2013年11月13日)、日本アーカイブズ学会委員の平野さんから翌2014年年4月のアーカイブズ学会設立10周年記念大会企画研究会「私たちの『アーカイブズ学』をとらえ直す──批判・検証・展望」に森本さん、京都大学文書館の坂口貴弘さんとともに発表できますかという打診を受けました。

日本アーカイブズ学会2014年度大会(設立10周年記念大会)2014年4月20日(日)学習院大学
http://www.jsas.info/modules/taikai02/index.php?id=12

この時の発表は『アーカイブズ学研究』21号(2014年12月刊)に収録されています。
http://www.jsas.info/modules/publications01/index.php?id=35

この企画研究会や当時の出版状況を見渡す中で、アーカイブズ管理の実務をしっかり支えるテキストが必要なのではないか、という意識が高まり、それが『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』翻訳プロジェクトを立ち上げる動機ともなりました。

2011年の国際シンポジウム以前のBAAのアカデミック・コミュニティとの関わりは、もっぱら経済史・経営史研究者に限られていたように思います。ですので、過去5年の間にアーカイブズ学研究者とのつながりを深めたことは特筆すべきことかと思います。理論にガチガチにしばられて自由な発想でアーカイブズを運営できないのは論外でしょう。しかし、確固とした理論・研究活動から栄養をいただいていくことは、企業アーカイブズのレベルアップ、成長に不可欠であると思います。

『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』は組織における文書管理・記録管理・アーカイブズ管理のための包括的な手引書です。編訳者としては、企業の方々にもぜひ参照していただきたいと希望しています。

最後にBAAの話題に戻ると、今年が創立35周年ということは2021年の40周年(anniversaty!)まであと5年です。5年後、今回の翻訳プロジェクトに加わってくれた30代の若手アーキビスト・研究者がさらに活躍している姿は目に浮かびます。5年後のBAA、5年後のビジネスアーカイブズ、5年後の自分は一体はどうなっているでしょう。私個人としては、研鑽を怠らず、科学と技術の発展に取り残されないよう心がけるばかりです・・・

2015-11-26 13.06.41
広島地方見学研究会(11/26-27) にて

 

BACのビジネスアーカイブズ1日研修講座  続報

24 金曜日 1月 2014

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ビジネスアーカイブズ, BAC, business archives

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BACのビジネスアーカイブズの1日研修講座が終了しました。(2014年1月22日)

BACのチェアのMike Anson (イングランド銀行アーカイブズ)によるTwitterでの中継があったので、だいたいの様子が分かりました。

1日研修講座用のハッシュタグ#busarchtrain のついたつぶやきをまとめてみました。

http://togetter.com/li/619807

講座の対象者を尋ねてみたところ、アーカイブズ/レコードマネジメントの修士もしくはディプロマをめざす大学院生ということでした。

https://twitter.com/BAC_Chair/status/426409194590576640

詳しい情報がウェブに掲載される予定とのことですので、こちらも楽しみに待ちたいです。

BACのビジネスアーカイブズ1日研修講座

20 月曜日 1月 2014

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ビジネスアーカイブズ, BAC

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2010年1月15日にTwitterを開始した当初は、海外のアーカイブズ関係アカウントというと、もっぱら米国かドイツのものをフォローしてきました。

2012年の半ばにスコットランドのBallast Trust、同年末にグラスゴー大学アーカイブズがTwitterアカウントを取得して、イギリスのBA関係情報の取得もずいぶんスピードアップしました。

2013年になるとBAC関係者(現在のChairであるMike Anson)がアカウントを開設し、これが情報を共有するのにとても役立っています。

さて、本日目についたつぶやきはBACが開催する1日研修講座のお知らせです。
https://twitter.com/BAC_Chair/status/425173665479933952

リンク先であるアーカイブズ・記録協会のサイトでプログラムをチェックしてみました。 http://www.archives.org.uk/si-brg/news-and-events.html

プログラム
http://www.archives.org.uk/images/documents/Business_Records/Business_Archives_Training_Day_2014_-_Programme_copy_copy_copy.doc

9時 受付開始
9時半 企業記録と企業環境の紹介
     HSBCアーカイブズ James Mortlock 
11時15分 重要企業記録
     ユニリーバ・アーカイブズ Kelda Roe
12時 ビジネスアーカイブズとアウトリーチでの協力
     マークス&スペンサー社アーキビスト Katharine Carter 
12時45分 ランチ
1時半 ビジネスアーカイブズにとってのデジタル保存の挑戦
     国会アーカイブズ Adrian Brown
2時15分 ビジネスアーカイブズにおけるアクセスとリサーチ
     小グループセッション:ビジネスアーカイブズへのアクセス─企業と研究者の要求は対立する?
     ロスチャイルド・アーカイブズ Natalie Broad & Justin Cavernelis-Frost
3時45分 あるビジネスアーキビストの一日
     ロンドン・メトロポリタン・アーカイブズ Richard Wiltshire
     BTアーカイブズ David Hay
     イングランド銀行アーカイブズ Lorna Williams
4時半 終了

受講者はアーカイブズ専攻の大学院生か、すでにアーカイブズ関係でMScを取得して企業以外のアーカイブズに勤務する現職者か、あるいは大学院レベルのアーカイブズ学は未履修者で企業アーカイブズ在職の初心者か、、、あたりをもう少し調査したいと思います。

「なぜアーカイブズは必要なのか―文書保存の意義と実態」講演会(2013年11月17日、盛岡市)

20 水曜日 11月 2013

Posted by archivesstudio in 国文学研究資料館 アーカイブズ・カレッジ

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ビジネスアーカイブズ, 盛岡, 遠野, 公文書管理, 宇都宮, 東北, 東日本大震災

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下記の催し物に参加しました。

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国文学研究資料館・いわて高等教育コンソーシアム講演会
 「なぜアーカイブズは必要なのか―文書保存の意義と実態」
日時:2013年11月17日(日) 13:00~17:00
会場:ホテルルイズ(3階 万葉の間)
  (岩手県盛岡市盛岡駅前通り7-15)
プログラム:
第1部 アーカイブズの意義
松岡資明氏 (日本経済新聞社)
 「東日本大震災後、公文書管理は変わったか」
 大石泰夫氏 (盛岡大学教授)
 「アーカイブズと民俗学―報告書『花輪祭り』の実例から」
青木直己氏 (元虎屋文庫研究主幹)
 「ビジネスアーカイブズと地域社会」
加藤聖文氏 (国文学研究資料館助教)
 「公文書管理法を活かして記録を残す」
第2部 地域社会におけるアーカイブズ
平田輝明氏 (元栃木県小山市文書館長)
 「地域文書館の設立を振り返って-アーカイブズ未設置地域の博物館の役割」
 [体調不良のためご欠席。代わって青木睦氏から趣旨説明がありました]

 小笠原晋氏 (遠野市文化研究センター調査研究課長)
 「遠野市行政文書館の設置目的と岩手県内自治体における文書管理の現状」
青木睦氏 (国文学研究資料館准教授)
 「被災文書の保存活用と市町村における文書中間保管庫の設計」
講演者によるディスカッション 
 司会 岩手大学教授 藪 敏裕氏
問い合わせ先 盛岡大学総務部総務課 電話019-688-5555(代)

Morioka

「第1部 アーカイブズの意義」はわたしの仕事にも重なるところがあったので、メモを基にして講演の概要をまとめてみました。

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第1部に入る前に、国文学研究資料館の大友一雄先生から次のようなあいさつがありました。

国文学研究資料館が資料保存にかかわるようになったきっかけは、戦後の資料保存にかかわる国会請願により文部省史料館ができたところに始まる。資料保存のための『ひとづくり』のためにアーカイブズ・カレッジを長年主催してきた。震災後、『人づくり』に加えて、資料保存のための『仕組みづくり』も必要であると強く感じている。

■松岡氏「東日本大震災後、公文書管理は変わったか」■

2011年4月、前月の東日本大震災の直後、公文書管理法施行がスタートした。同年4月12日には瀧野内閣官房副長官が「大震災の事実経過の記録資料の保存にご留意願いたい」と要請した。

その後、昨年1月ごろから震災関係会合の議事録・議事概要を作らせていなかったことが問題となった。その後さらに、明治以来閣議・閣僚懇談会の記録も作成されてこなかった事態も明らかに。

公文書管理法が施行されたにも関わらず、公文書管理委員会は出席者が足らず、きちんとした議論が行われていない。また、この間、政府各省庁から国立公文書館への公文書の移管率が低い水準でとどまっていることも明らかになっている。

つい最近の特定秘密保護法案に関わる議論の中では、防衛庁の防衛秘密は公文書管理法が適用されない領域の公文書であることが明らかになった。公文書管理法の第3条に「公文書等の管理については、他の法律又はこれに基づく命令に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる」という条項があり、これが防衛省の公文書の扱いに適用されている。この条文を挿入した官僚おそるべし、である。

近年、大量公開請求によって行政が阻害されているという認識から、情報公開が制限されるような方向も出てきている。自治体では公文書管理条例が制定され公文書館が設置されるところも出てきてはいるが、一方で民間資料の保存機関が減ってきている状況もある。

今週は衆議院における特定秘密保護法案の審議の山場にあたる。衆議院のHPに行くと、審議の様子が中継されているので、ぜひ注目していただきたい。

■大石氏「アーカイブズと民俗学―報告書『花輪祭り』の実例から」■

専門は万葉集と民俗学。民俗学研究のなかで、アーカイブズの力を感じた経験を、秋田県鹿角市花輪地区に伝わる「花輪ばやし」を例に紹介する。

花輪ばやしとは、8月19、20日に行われる屋台行事のこと。この祭りはある時期、二つの祭りが統合されたと推測される。ところが、いつどのように統合されたのか、神社には記録はなく、地域の人々の記憶もあいまいであった。

手掛かりを探すなかで、『鹿角時報』『広報はなわ』の二つの資料に巡り合った。図書館に所蔵されていた『鹿角時報』の1957年=昭和32年6月11日発行 第506号に掲載された「お輿を二つ並らべて」と題した寄稿文と、それに続く投書(同年6月28日発行第509号)、花輪神明社総代会での議論に関する投書(同年7月11日発行第511号)から、二つの祭りが統合が検討され始めたのが昭和32年であり、実際に統合されたのは、花輪町発行『広報はなわ』 1960年=昭和35年8月2日発行第31号によって、この年1960年であることが分かった。

※大石氏配布資料(タイトルは「花輪ばやしの概要」)より。
『鹿角時報』
最初「花輪青年」という名称で青年団の会誌として大正5年(1916)に発刊。大正10年(1921)6月から「青年乃鹿角」に改称、タブロイド判とな る。昭和2年(1927)8月に「鹿角時報」に改称。昭和14年(1939)から戦時統制のため休刊となるが、昭和21年(1946)に復刊し、昭和46 年に廃刊。

民俗学は歴史学との差異化欲求から、口頭伝承をたいへん重視してきたが、それだけでは解明できない事象が存在する。この花輪ばやしの例のように、口頭伝承に文献からの情報を加えることによって、生き生きとした人々の生活の変化を描きだすことができる。

同地区の「お休み堂の迎え太鼓」は、お休み堂が使われなくなって、「迎え太鼓」も廃れてしまったのだが、それがいつのことなのか、人々の記憶・口頭伝承からでは明らかにできなかった。

この件に関しても『鹿角時報』『広報はなわ』が大きな手掛かりを与えてくれた。『広報はなわ』第31号(昭和35年=1960年8月2日発行)で、この年まで迎え太鼓が行われていたことが確認できる。昭和43年(1968)8月17日発行『鹿角時報』第1136号には地区への転入者による「お祭り雑感」という記事が掲載されており、迎え太鼓が廃れたのは昭和35年から43年のあいだのどこかの時点であることが分かる。

現代では核家族化によって家族間における伝承が困難なものとなるとともに、地域社会も職業の多様化によって民俗の伝承母体としては弱体化している。そのような状況で、民俗学においてもアーカイブズのようなものをきちんと把握する必要が生じている。

■青木氏「ビジネスアーカイブズと地域社会」■

和菓子製造販売会社虎屋に1989年入社。同社のアーカイブズ「虎屋文庫」に長年勤務の後、先ごろ退職。この10月、同文庫顧問に就任。

ビジネスアーカイブズとは、第一義的には記録を作成した企業自身のために存在する経営資源である。そのため非公開性、という特性を持つ。かつては社史を作成するために記録を保存する、という意識が強かったが、近年は広報などさまざまな社業に活用されるようになってきている。虎屋は480年の歴史を持つ会社であり、社のアーカイブズを広報・宣伝に活用したりしている。

虎屋に見るアーカイブズ保存の理念は、1945年5月の東京大空襲時に先輩たちが会社の重要記録を本社から持ち出して弁慶堀に沈めて避難させた例に表れているように思う。この件に関しては、社史『虎屋の五世紀 通史編』に記載されている。あるいは、1971年1月の社内報『まこと』第6号では当時の社長黒川光朝が「資料の整理、分類は無事故への指針である」と述べている。ちなみに、 この光朝社長が昭和48年(1973)に虎屋文庫を設立した。

現在虎屋文庫には7名のスタッフがおり全員社員である。社員総数960名の会社としては、アーカイブズ部門に配置しているスタッフは多いほうだと思う。かつては最大で9名ほど在籍していた時期もある。

さて、本日の本題は地域の近代化と鉄道・電力会社の関係である。かつて国分寺市史編纂に携わった時分、民家の蔵から東京電力の株券が出てきたり、思わぬところで企業資料に接する機会があった。

企業と地域社会の関係は、企業城下町などと言われることもあるように、大きな企業の場合地域への影響も大きい。東北の電力会社に関しては『東北電力事業史』 が参考になる。岩手県では大正4年(1915)岩手軽便鉄道が開業したほか、同年花巻電鉄も開業している(前身は大正元年に開業)。

関東の例では京王電気軌道(株)の例を見てみたい。同社は明治43年(1910)開業、大正2年(1913)府中火力発電所を竣工、同年電気鉄道も開業した。これに伴い、世田谷以西はそれまで電気がなかったのが、新たに沿線住民へ電灯が供給されることになった。大正2年の灯数は1387。昭和15年(1940) には灯数は46万5677、この年の料金収入は232万円。対して、電車収入は132万円。このように、民間企業の事業は地域の近代化に大きな影響を与え ている。ちなみにこれらの事実は『京王電鉄30年史』に記されている。

このことからわかるように、社史は地域社会を知るツールとして利用することができる。ビジネスアーカイブズは先に述べたように、一般には非公開であるけれども、社史が企業と地域社会の関係を探るための代替物としての役割を果たしてくれる。

最後にビジネスアーカイブズの公開と、公開促進についても触れておきたい。一つは社史を通じた公開があげられる。しかしこれには限界がある。イギリスのグラスゴーでは、企業資料を寄託する機関があると聞いている。このような仕組みづくりも大切であると思う。

また、本日の講演と関連して日外アソシエーツから刊行された『世界のビジネス・アーカイブズ─企業価値の源泉』がとても役に立つので、ぜひ手にとってもらいたい。

■加藤氏「公文書管理法を活かして記録を残す」■

岩手県庁で公文書を閲覧請求してみた。岩手では永年保存文書の目録をウェブ公開している。永年保存文書でも目録に載っていないものもある。有期限文書の目録はウェブには掲載されていない。有期限文書は情報公開請求によって閲覧する。

閲覧申請は県の総務部法務学事課が対応。今回は「引揚」「援護」関係の文書を閲覧しようとしたが、目録にない。目録にある「移民」も申請。県からは援護関係 については文書がない、という連絡があった。ただし1972年に発行された『援護の記録』はある、という。もちろん私(加藤氏)はその冊子についてはすで に知っているので、この冊子の元になった現記録をみたいと伝えた。一方、「移民」関係の文書は個人情報だから見せられない、という。

ここで問題点を考えてみる。

①まず、公開している永年保存文書の目録に掲載されている文書も、即日では閲覧できない。事前申し込みしないといけない。また、文書の内容をあらかじめチェックしていないため、申請があってから個別に確認する作業を行わねばいけない。

②永年保存文書が歴史的公文書になっていないため、いつまでも現用文書として扱われ、情報公開請求の対象である。そこで非常におかしなことであるが、南部藩から引き継いだ近世文書も現用文書ということになってしまっている。

③作成原課が異なるので、請求者に対してバラバラに連絡が来る。

④個人情報のチェックで無駄なやり取りと時間を要する。

⑤専門的知識のある職員がいない。公文書の中身を把握していない職員が対応するため、効率的でない。

国の個人情報保護法と地方自治体の個人情報保護条例には違いがあることも指摘しておきたい。個人情報保護法は生きている人だけが対象であるが、条例は死没者まで対象としている。また条例には適用除外がない。法律では第50条で適用除外を定めている。ということは、地方の場合は何百年たっても「個人情報」のままということになってしまっている。地域の歴史は個人の歴史の積み重なりであり、個人を隠すことは地域の歴史の抹殺に等しい。

ここまで見てくると、現在の公文書管理の状況は市民にとってはデメリットしかなく、行政にとっても無駄な労力と時間を費やす大変非効率なものであるということができる。

ここで他県の例も見ておきたい。佐賀県の例である。情報公開請求によって戦後引揚援護関係の公文書を請求してみた。当初は、「見当たらない」「記憶にない」 という対応であった。その後「探したら出てきた」に変わった。なぜか?そもそもファイル名からでは中身がわからないからである。公文書に関する専門知識を持った職員が不在なのである。県の職員は長くても3年で異動するため、3年前の文書もわからないということになっている。「今を起点に過去を見る職員の不在」である。

さらに公文書に関するイメージのズレ、があるように思う。職員は自分たちが作成した文書(起案して最終的に決裁を受けたもの) が管理対象であり、他から取得した文書や調査報告書の類は、自分たちが管理すべき公文書ではなく、それらを作成した原課の公文書である、という意識が強い。取得文書や調査報告書には保存年限が付与されていない傾向があり、こうなると捨てることも残すこともできない、という極めて困った状況に職員は置かれることになる。言葉を換えて言うと、文書を評価選別する職員が不在である、ということ。公文書館があっても、内容を把握していない文書は、内容を把握していないため(何が書かれているかわからないから)責任を持って移管できない。つまり、移管の主導権を握る公文書館は不在なのである。

「情報公開法があるからいい」? 何十年も前の文書まで作成原課が責任を持って対応しなければならない。はたしてこれは可能か。自分たちが関わったこともない文書は原課から切り離したほうが現実的である。

まとめ。作成から一定年限(30年)経過した文書は公文書館、または公文書館的機能を持つ組織へ移管したほうがよい。そうすれば次のようなメリットが得られる。

☆原課の書庫からわけのわからない文書を除去することが可能。
☆原課は何十年も前の内容もわからない文書に対する情報公開請求に対応しないで済む。
☆専門的知識を持つ職員が移管された文書に対応すれば、事務効率が上がる。
☆原課職員も無駄な仕事や責任から解放される。
☆文書を閲覧したい市民も長期間待たされたり、無駄なやり取りに対応するストレスから解放される。

————————————————————

第1部ではとくに加藤氏の公文書閲覧請求体験に基づく講演が興味深いものでした。今のままの公文書管理体制が市民にはストレス、職員には負担となっていることがよくわかりました。専門職を置くことは行政の効率化に大きく寄与するはずです。

第2部は遠野市の行政文書館、釜石市における被災文書の保存活用といった現場の具体的お話でした。第1部、第2部合わせて講演内容がパブリッシュされたらいいな、と思います。

岩手県には県の公文書館は未設置、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協、JSAI)加盟アーカイブズもまだないとうかがいました。これを機会にアーカイブズへの関心が高まることを期待します。

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