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タグアーカイブ: 公文書管理

「原課」ということば(2020年7月)

12 日曜日 7月 2020

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公文書, 公文書管理

アーカイブズ、アーカイブズ学で使われる基本的な概念・用語の話のなかで、「出所」(provenance)と「原課」の違いは何か、という質問を受けました。

「出所」とは、provenanceの翻訳であり、国際アーカイブズ評議会アーカイブズ教育部会が編纂した多言語によるアーカイブズ用語集の日本語版によると、

「provenance 記録センター又はアーカイブズ機関に移管される以前に、業務遂行の中で記録を作成、蓄積/維持し、使用した組織又は個人。」

です。「その文書のoriginはどこか、そのように考えてね」という説明も行いました。別の回の公文書管理に関する話の中で、現用、非現用、公文書館への「移管」のところで、日本では「原課」という言葉もよく使われるという話をしたところ、上のような質問が出た次第です。

「原課」–これは、日本国語大辞典、大漢和辞典にも、地方自治百科大辞典にもない。Wikipedia日本語版で「官房」を引くと、次のような説明があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%98%E6%88%BF

「なお、官房を除く各局、各部の建制順上の筆頭にある課(筆頭課)は、各局における人事・文書・会計等の総括管理を掌っており、各局における官房の機能を有する。官房、筆頭課に対して、実際の行政事務を掌る各局、各課は「原局」(げんきょく)、「原課」(げんか)と称される。」
(この部分出典の注なし)

あくまで「官房」と対になった呼称のようです。「官房学」はドイツのカメラールヴィッセンシャフトから。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%98%E6%88%BF%E5%AD%A6

「官房」は国家行政組織法、内閣府設置法には出現する一方、原局、原課はともにゼロ。公文書管理法には官房も原課も出てきません。

大森彌『官のシステム』(東大出版会、2006)、東田親司『現代行政と行政改革』(芦書房、2004年)など行政学の文献ではどのように説明されているのか確認してみたところ、後者が第6章「府省内組織とその役割」のなかの「中二階ポストと課レベル組織−課レベルポスト」の項で次のように述べています。

「同じ本省の課長でも筆頭は官房課長であり、次に局の筆頭課長、その次に局の原課の課長という順番で年次的にも配分されている。I種採用者の昇進ポストも最初に課長になるのは原局課長で、これを2〜3箇所勤めて将来性を見込まれれば局の筆頭課長となりさらに官房課長になるコースを歩む。他方、原局課長時代の評価が不十分等で第1グループに入らない場合には、出先機関であるブロック機関の部長や府県単位機関の長に転出していくケースが多い。」(59ページ)

著者自身は行政管理庁に入庁したあと、総務庁行政監察局長を経て退官、本書執筆時点では大東文化大教授。これ以前のページに「原局」「原課」の説明はないので、官僚にとってはあまりにも当たり前で、説明するようなものではないのかもしれません。Wikipediaに典拠資料がないのもこのあたりに由来するのでしょう。

一方、Ciniiアーティクルで「原課」を全文検索すると、203件ヒットします(2020年7月12日)。

すべてがアーカイブズ学関係ではありませんが、地方自治体における文書管理関係の論文がいくつかあります(嶋田 典人「地域記録の作成・保存・利活用 : 法整備と組織体制・運営」など)。ほかに上川陽子元法務大臣の講演録にも1箇所登場します。

国の機関に勤務している人に聞いたところ、「原課」とは「官房」(あるいは「総務」など省庁内の秘書的な部門)以外を指す言葉で、省庁の職員なら100%知っているだろうということでした。

そういうわけで、国レベルの行政機関と地方公共団体では「原課」という言葉の意味は異なっているようです。そこで、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)が発足1976年(昭和51年)から委員会体制に移行する前年の1994年(平成6年)度まで同協議会の事務局を担当した埼玉県立文書館の主任専門員の太田富康氏(館内で全史料協事務局を担当したのは1989年(平成1年)度から1993年(平成5年度)、同氏は今年度のアーキビスト認証委員会委員)にうかがってみました。

太田氏は今年3月で通算37年間の埼玉県職員生活を送られています。以下のように説明をうけました。

—–

「原課は「当該文書等に係る事案を所掌する課及び所」という意味で使い、それで混乱なく通用してきました。それは県での仕事でも全史料協等のアーカイブズ界の場においても、です。たとえば、当館は永年保存文書を現用のまま「管理委任」という形で預かっています。

文書の流れは、原課→文書課→文書館、です。

それらの文書のうち、情報公開条例上非公開となっているものを見たい、と言われたときに「その判断、権限は原課にあります」とか「原課に聞いて下さい」というように使います。あくまで「原課」は文書課でも部局の筆頭課でもなく文書を発生させた元の課を指して使ってきました。

ただ、これはいわゆる「俗語」と思っており(埼玉県の法規DBで検索しても出てきません)、正式な場や文章、講師などでは「主務課」を使ってきました。

全国的にこの用語がどれだけ普遍的かは確認したことはありませんが、埼玉県の文書規則ではそのように定義があり(前述の「原課」の意味はその引用です)、埼玉県地域史料保存活用連絡協議会(埼史協)の研究会でも市町村の人から同じ使い方と教えて貰い、埼史協の文献でもこの「主務課」を使いました。

なお、「主管課」というのは、埼玉県の行政組織規則では各部の筆頭課(とりまとめ課)をいいます。企画財政部では企画総務課、福祉部では福祉政策課などがそうです。

ただ、私は「文書主管課」「文書管理主管課」というような使い方もよくしていますし、よく使われていると思います。

「部」という組織のとりまとめではないですが、文書事務という業務の県(知事部局)全体のとりまとめ課、すなわち、例規で言えば、公文書管理法や文書管理規則を主管する課、というような意味合いで、です。

——–

とのことでした。太田氏のご説明にあるように、これは「俗語」なのでしょう。アーカイブズや公文書管理の話に初めて接した人、とくに役所外の人々には「原課」というのはよくわからない、疑問に思う言葉の一つかもしれません。じっさい自分がそのような質問を受けたのでここに記録しておきたいと思いました。

なお、「出所」に関しても、その意味合いについていろいろご教示いただいたので、別の記事として後ほどまとめられたら、と思っています。

【参考】

Multilingual Archival Terminology
The section on Archival Education (SAE) | 13 March 2012
International Council on Archives
https://www.ica.org/en/online-resource-centre/multilingual-archival-terminology

Multilingual Archival Terminology
http://www.ciscra.org/mat/

日本語
Multilingual Archival Terminology
http://www.ciscra.org/mat/mat/termlist/l/Japanese

「出所」
Multilingual Archival Terminology
http://www.ciscra.org/mat/mat/term/4007

全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)
http://www.jsai.jp/

新井浩文「埼玉県地域史料保存活用連絡協議会(埼史協)40年のあゆみ」
http://www.archives.go.jp/publication/archives/no057/4156

埼玉県立文書館「埼玉県地域史料保存活用連絡協議会(埼史協)」
https://monjo.spec.ed.jp/%E5%9F%BC%E7%8E%89%E7%9C%8C%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5%8F%B2%E6%96%99%E4%BF%9D%E5%AD%98%E6%B4%BB%E7%94%A8%E9%80%A3%E7%B5%A1%E5%8D%94%E8%AD%B0%E4%BC%9A

国立公文書館つくば分館にて(2020年6月24日)

同上

同上

 

国立公文書館「アーキビストの認証」申請・認証スケジュールの公示(2020年6月)

20 土曜日 6月 2020

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アーキビスト, 公文書管理, 国立公文書館

国立公文書館が進めてきたアーキビストの認証制度が始まります。申請スケジュールについて、同館ウェブサイトで公示されています。
http://www.archives.go.jp/ninsho/index.html

【2020年度の申請スケジュール】

申請受付:2020年9月1日(火)~9月30日(水) ※消印有効
◎10月1日(木)以降の消印のものは、受け付けない。
審査期間:2020年2年10~12月
審査結果通知:2020年12月15日(火)まで(郵送及びメール)
認証:2021年1月

『令和2年度 認証アーキビスト 申請の手引き』(2020年6月 国立公文書館)
http://www.archives.go.jp/ninsho/download/005_shinsei_tebiki.pdf

申請書様式 
PDF   
http://www.archives.go.jp/ninsho/download/006_2020yoshiki.pdf

Excel
http://www.archives.go.jp/ninsho/download/006_2020yoshiki.xlsx

「アーキビストの職務基準書」
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/syokumukijunsyo.pdf

詳しくは国立公文書館のページを確認してください。
http://www.archives.go.jp/ninsho/index.html

*国立公文書館ニュース第22号(2020年6月)
加藤丈夫館長と高埜利彦アーキビスト認証委員会委員長のインタビュー記事「公文書等の管理を支えるスペシャリスト-認証アーキビストの誕生で変わること-」が掲載されています。
http://www.archives.go.jp/naj_news/22/special.html

 

 

国立公文書館「アーキビスト養成・認証制度調査報告書」(2019年11月)

23 土曜日 11月 2019

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アーカイブズ, アーキビスト, NA, NAJ, 公文書管理, 国立公文書館

独立行政法人国立公文書館が「アーキビスト養成・認証制度調査報告書」を公開しました。
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/archivist_report_R01.pdf

アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、韓国、中国(参考)におけるアーキビストの養成と認証制度に関わる詳細な報告です。アーカイブズ関係者のみならず、文化機関の人材養成や専門職制度に関心のある方々には広く参考となるレポートです。

アーキビスト養成・認証制度
調査報告書
令和元年(2019)11 月
独立行政法人 国立公文書館

http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/archivist_report_R01.pdf

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【目次】

Ⅰ 日本におけるアーキビスト養成・認証制度

1 日本におけるアーキビスト養成
1.1 高等教育機関における養成
1.2 その他の機関における養成

2 日本におけるアーキビスト関連認証・資格制
2.1 関連認証・資格制度
2.2 参考となる資格制度

Ⅱ 諸外国におけるアーキビスト養成・認証制度
1 アメリカ
2 イギリス
3 フランス
4 オーストラリア
5 韓国

(参考)
6 中国 ……………………………….

資料 日本における既存のアーキビスト等養成・認証制度

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【執筆者】
アメリカ : 坂口貴弘(創価大学講師)
イギリス : 白川栄美(日本アーカイブズ学会役員)
フランス : 岡崎敦 (九州大学大学院教授)
オーストラリア : 森本祥子(東京大学文書館准教授)
韓国 : 元ナミ (京都大学大学文書館助教)

(参考) 中国 : 大澤武彦(国立公文書館公文書専門官)

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【編集】
独立行政法人国立公文書館統括公文書専門官室(人材育成担当)

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Archives 101 — 図書館基礎特論「アーカイブズの基礎」

28 月曜日 5月 2018

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アーカイブズ, ICA, 公文書, 公文書管理

2018年度の春学期、司書課程の授業を行っています。選択科目の図書館基礎特論です。わたしの授業のテーマは「アーカイブズの基礎」。図書館基礎特論については、これからの図書館の在り方検討協力者会議 「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在り方について」(2009年2月)の最後のページに説明があります。

司書課程での授業なので、「司書としての価値を高める(そしてそれによってパブリック=公共に寄与する)ための、アーカイブズの知識と考え方」という視点で毎回授業を行っています。アーキビストの養成やアーカイブズ学の授業というよりは、司書としてアーカイブズを利用するために知っておくとよい、とわたしが考えていることをお話しています。

アーカイブズの仕組みは、原理的にレコード・マネジメントを含むものです。この部分は、どのような職業につくにせよ、あらゆる職業に関わってきます。司書として働く場合以外でも、企業であろうと、役所であろうと文書管理、記録管理は知っておく必要があります。

当初の計画ではガイダンスの次の回(第2回目)で基礎的な話をして、以後10回にわたりさまざまな種類のアーカイブズ(公的な文書館、企業アーカイブズ、その他)、デジタル長期保存について1回、デジタル展示・キュレーションとしてのデジタルアーカイブとコミュニティアーカイブに関して1回、というシラバスにしました。

しかし実際に行ってみると、基礎的な部分は1回で終わらず、もう1回費やすことに。その次の回に小テスト(20180507)を行いました。ここまでは理解してほしい、という部分に関する内容です。(PDFの4ページ目は、アーカイブズ管理に関するセミナーなどでは言及したくなる部分ですが、これは興味があったら読んでみてね、という位置づけです。)

内容は以下のようなものです。(PDF)

—————————————

2018年5月7日

図書館基礎特論「アーカイブズの基礎」復習テストと補足

1. (    )に授業で学んだ用語(カタカナ)を入れてください。

レコードとは・・・ある活動の記録された証拠(        )すべて

【出典】エリザベス・シェパード、ジェフリー・ヨー〔共著〕 森本祥子ほか〔編訳〕
『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』(2016年)21ページ

2. 授業で学んだ「アーカイブズ」の意味に含まれるものに○をつけてください

(    ) 業務遂行の過程で個人又は組織により作成・収受されて蓄積され、並びにその持続的価値ゆえに保存された文書。

(    ) アーカイブズを保存し、閲覧利用できるようにする建物又は建物の一部。アーカイブズ保存所とも呼ばれる。

(   ) 文書の出所に関わりなく、何らかの特徴(たとえば、取得方法、作成者、主題、言語、媒体、形式、収集家の名前)に基づいて集められた、文書の人工的まとまり。

(    ) アーカイブズを選別、取得、保存、提供することに責任をもつ機関又はプログラム。アーカイブズ機関、アーカイブズ制度、アーカイブズ事業とも言われる。

【出典】ICA(国際アーカイブズ評議会)オンライン多言語用語集日本語ページ http://www.ciscra.org/mat/mat/termlist/l/Japanese

3. 図書館司書、レコード・マネジャー/アーキビストがそれぞれ扱う対象について線で結んでください。

図書館司書・                                        ・レコード・               ・証拠(     )

レコード・マネジャー/アーキビスト・      ・情報プロダクト・       ・インフォメーション

【出典】『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』35, 43-45, 142, 160, 169, 179-187ページ

4. レコードの一生(ライフ)について、説明に当てはまる用語を(  )に記入してください。

「組織の現在の業務で日常的に使用されるレコードで、作成された場所で保管され続けているものである」
・・・(         )レコード

「現在の業務遂行にあたってはほとんど必要とされないので、オフィスからレコードセンターに移送し、そこで最終的な処分を待つべきとされるものである」

・・・(         )レコード

「現在の業務にはもはや必要とされないレコードである」

・・・(         )レコード

【出典】『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』27ぺージ

5. アーカイブズ機関には2種類の機関があります。(   )の中に用語を入れてください。

「組織内で作成されたものや、その組織と外部との間でやりとりされた通信といったアーカイブズ(記録資料)を保存・管理・提供する」

・・・(         )アーカイブズ

「あるテーマ・主題の下にさまざまな組織で作成されたアーカイブズ(記録資料)を収集して保存・管理・提供する」

・・・(         )アーカイブズ

【出典】企業史料協議会編『企業アーカイブズの理論と実践』(2013年)6ページ
公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター編『世界のビジネス・アーカイブズ:企業価値の源泉』(2012年)6-8ページ

6. アーカイブズの組織化・整理を考える上で最も重要や考え方について述べた文章です。これを表す用語(日本語、漢字2字)を(   )に書き入れてください。英語は下に記したものです。

「業務遂行過程で記録を作成し、管理し、利用してきた組織や個人」

・・・(         ) provenance

【出典】全国歴史資料保存利用機関連絡協議会監修『文書館用語集』(1997年)58ページ

7. レコード(そしてアーカイブズ)にとって大切な「コンテクスト」とは「記録が作成された際、それが誰によって作成されたのか、どのような組織における機能や活動のもとで作成されたのか、その記録は他の記録とはどんな関係にあるのか、といったことを意味する」ものです。

レコードとして意味を持ち、証拠として利用することができるために必要なモノ/コトをあげてください。

【参考】『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』33, 108ぺージ
アメリカ・アーキビスト協会用語集 context の項目 https://www2.archivists.org/glossary/terms/c/context
“1. The organizational, functional, and operational circumstances surrounding materials’ creation, receipt, storage, or use, and its relationship to other materials. – 2. The circumstances that a user may bring to a document that influences that user’s understanding of the document.”

8. アカウンタビリティとは「個人、組織および集団が責任を負っている行動や決定に関して、その行動や決定についての疑問に答えたり、説明したり、あるいはそれらが正当であると主張できる能力」(アメリカ・アーキビスト協会用語集日本語訳)です。通常「説明責任」とも言われますが、アーカイブズ、レコード・マネジメントの文脈では「説明責任」の前にある用語を補うことが必要です。それはなんですか。(  )の中に入る用語(漢字2字)を記してください。

・・・(         ) 説明責任

【参考】アメリカ・アーキビスト協会用語集 accountability の項目 https://www2.archivists.org/glossary/terms/a/accountability
“The ability to answer for, explain, or justify actions or decisions for which an individual, organization, or system is responsible.”

9. アーキビストの基本的な業務/職務には「移管・収集」「評価選別」「整理」「目録作成(編成・記述)」「保存(配架等)」「利活用(・公開)」といったものがあります。このうち、アーキビスト(レコード・マネジャーの場合もある)に特有で、非常に難しい業務/職務とみなされているものの一つが「評価選別」です。どのような点に注意して、この業務/職務に取り組む必要があるでしょうか。

10. レコード(そしてアーカイブズ)を保存・管理・提供する(つまりマネジメントする)目的を図中に書き込んでください。
【参考】『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』16ぺージ

ARMA東京支部会誌最新号(第30号、2016年2月)

26 金曜日 2月 2016

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コバルト賞, 公文書管理

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——————–

ARMA International の地域支部のひとつARMA東京支部の会誌最新号の目次です。

[目次]

■RIM News

◎海外News

オーストラリアは行政サービスで紙文書の使用を禁止
青木延一訳(ARMA International 東京支部)

調査レポートが予測する2016年のサイバー脅威トレンド
青木延一訳

米国連邦民事訴訟規則(FRCP)修正案が前進
青木延一訳

NISTのプライバシー・リスク・マネジメント(ドラフト版)
青木延一訳

調査によると、ヒューマンエラーがデータ遺漏の最大の原因
青木延一訳

国境を超えたディスカバリーのチャレンジ
青木延一訳

■海外論文

一貫性のあるリーガルホールド・プロセス構築のステップ
Richard Vestuto, J.D., and Bill Piwonka 著/青木延一訳

ビックデータを使いこなすためのRIMの役割
Kevin L. Dale, CRM 著/青木延一訳

■国内論文

日本の地方公共団体における公文書管理条例の制定要因
株式会社データ・キーピング・サービス常務執行役員、渡邊健著

■RIM広場

CUNA Mutual Group訪問レポート:コバルト賞受賞企業の文書情報管理
公益社団法人日本文書情報マネジメント協会 特別研究員/ARMA International 東京支部
木村道弘

『「公文書等の管理に関する法律」施行後5年見直しに関する共同提言書』の全文掲載について
2016年2月7日
ARMA International 東京支部 会長 西川康男

■トピックス:ARMA International 東京支部 Webニュース2016年1月号から

<Global POlicy Brief>
・eディスカバリー関連の製品とサービスのグローバル市場が100億ドル超え
・セーフハーバー協定の無効化にもかかわらず米国クラウドプロバイダーは利益を出している

<Washington Policy Brief>
・議会はサイバーセキュリティ情報共有法を施行
・議会は国務省が速やかに連邦記録法に準拠することを要求

<NewsWire>
・フォルクスワーゲン社は文書の提出をドイツのプライバシー法を根拠に拒否
・調査レポート:従業員は退職時に会社の機密データを持ち出す
・EUは16歳未満の子供のソーシャルメディア利用の禁止を含む新データ保護規則を承認した

 

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この号は、渡邊氏の「日本の地方公共団体における公文書管理条例の制定要因」をはじめ、ARMA International 東京支部・記録管理学会・日本アーカイブズ学会・学習院大学人文科学研究所共同研究プロジェクト「情報基盤としてのアーカイブズ制度を構築する戦略的研究」が共同で作成して、安倍晋三内閣総理大臣・有村治子内閣府特命担当大臣・宇賀克也内閣府公文書管理委員会委員長・大島理森衆議院議長・山崎正昭参議院議長・寺田逸郎最高裁判所長官・谷垣禎一「世界に誇る国民本位の新たな国立公文書館の建設を実現する議員連盟」代表・政党党首宛に共同提出した『「公文書等の管理に関する法律」施行後5年見直しに関する共同提言書』全文など、公文書管理に関わる重要な文献が掲載されています。

一方、企業における文書情報管理、記録管理の観点からは木村道弘氏による「CUNA Mutual Group訪問レポート:コバルト賞受賞企業の文書情報管理」がたいへん参考になりました。コバルト賞とはARMAが記録管理・情報ガバナンスで最も優れたと認める企業に送る賞で、CUNA Mutual Group(金融・保険サービス提供、従業員4500名規模)は同賞を2013年に受賞しています。7年前に開始した文書情報管理改革の目的は「法的に義務付けられた記録には何時でもアクセス出来るようにし、必要とされないもの(ジャンク)は確実に廃棄し(背景には、Eディスカバリ対策)、早めに捨てることにより、リスク低減、ストレージ容量削減をはかること」(39ページ)にあるとのことです。業務分類は250→150に簡素化し、セントラルストレージとしてはDocumentum、Sharepoint、シェアドライブ(ファイルサーバ)を持ちます。「法的に保存が求められている文書情報はDocumentumで10年保存、その必要のない文書情報はSharepointまたはシェアドライブに保存」(同)、上司の承認のもとに廃棄するということです。改革プログラムを確立するのに5年を要し、これへの投資額は総額400万ドル、実現された便益が210万ドル(情報全体の20%相当の159テラバイトを処分)、今後10年で投資を回収できる見込みだそうです。

法的に保存が求められているものを10年保存した後、評価選別してアーカイブズとして管理するものがないのかには特段の言及がなく、非常にもどかしくも感じました。この種の調査を行う場合には、アーカイブズへの移管の有無なども調査事項としていただけたら、と希望します。

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以前にも書きましたが、

ARMA東京支部会誌最新号(第25号、2014年2月)


HPではRecords Information Journal (略称 「RIMジャーナル」)とあります。
http://www.arma-tokyo.org/rimjournal.htm

NDLの書誌情報では下記の通りです。
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008915828-00

Records & information management journal : the information management professionals

別タイトル:レコード&インフォメーションマネジメントジャーナル
別タイトル:RIM journal
別タイトル:Records and information management journal
別タイトル:RIMジャーナル

2010-08-14 01.12.36

 

国際アーカイブズ評議会(ICA)議会・政党のアーカイブズ・アーキビスト部会(SPP)

14 土曜日 6月 2014

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立法, 議会, ICA, spp, 公文書, 公文書管理, 公文書管理法, 国会, 国会図書館, 政党

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国際アーカイブズ評議会(ICA)には13の専門部会があります。
http://www.ica.org/?lid=2310&bid=171

そのひとつに「議会・政党のアーカイブズ・アーキビスト部会」(Section of Archives and Archivists of Parliaments and Political Parties: SPP)があります。
http://www.ica.org/792/about-section-for-archives-of-parliaments-and-political-parties-spp/about-parliamentary-and-political-party-archives-spp.html

会長はオーストリア議会アーカイブズのGünther SCHEFBECK氏。
http://www.ica.org/804/steering-committee/spp-steering-committee.html

ベルギー、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、スペイン、スイス、ドイツ、イタリア、イギリス、ブルキナファソ、ギリシア、韓国その他の中央政府・地方政府、あるいは欧州議会といった議会アーカイブズ、議会図書館など現在120団体・個人がメンバーです。
http://www.ica.org/?lid=852&group1=32

SPPによる各種刊行物も公開されています。

「ガイドライン 議会組織:ドキュメントの評価選別基準」
Guidelines Parliamentary Institutions: The criteria for appraising and selecting documents
http://www.ica.org/download.php?id=52
http://www.ica.org/?lid=810&bid=200

「ウェブサイトのアーカイビングのためのガイドライン」
Guidelines for the archiving of websites
http://www.ica.org/3432/public-resources/guidelines-for-the-archiving-of-websites.html
http://www.ica.org/download.php?id=53

日本では公文書管理法が対象とするのが行政機関に限られているので、国会や国会図書館といった機関の組織アーカイブズに関する法律は存在しません。

国立国会図書館内の憲政資料室は政治家等の個人文書の収蔵先として知られており、それら所蔵資料の管理はもちろん行われています。これは国会図書館が収集したり寄贈を受けた資料の管理であって、国会図書館自体の組織アーカイブズとはまったく異なります。衆議院・参議院といった議会の公文書の管理を定める法律も存在しません。

法制度の整備へ向けた準備とともに、国会・地方議会関係者によるSPPへの参加は検討に値するのではないでしょうか。

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東洋文庫にて

「なぜアーカイブズは必要なのか―文書保存の意義と実態」講演会(2013年11月17日、盛岡市)

20 水曜日 11月 2013

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ビジネスアーカイブズ, 盛岡, 遠野, 公文書管理, 宇都宮, 東北, 東日本大震災

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下記の催し物に参加しました。

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国文学研究資料館・いわて高等教育コンソーシアム講演会
 「なぜアーカイブズは必要なのか―文書保存の意義と実態」
日時:2013年11月17日(日) 13:00~17:00
会場:ホテルルイズ(3階 万葉の間)
  (岩手県盛岡市盛岡駅前通り7-15)
プログラム:
第1部 アーカイブズの意義
松岡資明氏 (日本経済新聞社)
 「東日本大震災後、公文書管理は変わったか」
 大石泰夫氏 (盛岡大学教授)
 「アーカイブズと民俗学―報告書『花輪祭り』の実例から」
青木直己氏 (元虎屋文庫研究主幹)
 「ビジネスアーカイブズと地域社会」
加藤聖文氏 (国文学研究資料館助教)
 「公文書管理法を活かして記録を残す」
第2部 地域社会におけるアーカイブズ
平田輝明氏 (元栃木県小山市文書館長)
 「地域文書館の設立を振り返って-アーカイブズ未設置地域の博物館の役割」
 [体調不良のためご欠席。代わって青木睦氏から趣旨説明がありました]

 小笠原晋氏 (遠野市文化研究センター調査研究課長)
 「遠野市行政文書館の設置目的と岩手県内自治体における文書管理の現状」
青木睦氏 (国文学研究資料館准教授)
 「被災文書の保存活用と市町村における文書中間保管庫の設計」
講演者によるディスカッション 
 司会 岩手大学教授 藪 敏裕氏
問い合わせ先 盛岡大学総務部総務課 電話019-688-5555(代)

Morioka

「第1部 アーカイブズの意義」はわたしの仕事にも重なるところがあったので、メモを基にして講演の概要をまとめてみました。

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第1部に入る前に、国文学研究資料館の大友一雄先生から次のようなあいさつがありました。

国文学研究資料館が資料保存にかかわるようになったきっかけは、戦後の資料保存にかかわる国会請願により文部省史料館ができたところに始まる。資料保存のための『ひとづくり』のためにアーカイブズ・カレッジを長年主催してきた。震災後、『人づくり』に加えて、資料保存のための『仕組みづくり』も必要であると強く感じている。

■松岡氏「東日本大震災後、公文書管理は変わったか」■

2011年4月、前月の東日本大震災の直後、公文書管理法施行がスタートした。同年4月12日には瀧野内閣官房副長官が「大震災の事実経過の記録資料の保存にご留意願いたい」と要請した。

その後、昨年1月ごろから震災関係会合の議事録・議事概要を作らせていなかったことが問題となった。その後さらに、明治以来閣議・閣僚懇談会の記録も作成されてこなかった事態も明らかに。

公文書管理法が施行されたにも関わらず、公文書管理委員会は出席者が足らず、きちんとした議論が行われていない。また、この間、政府各省庁から国立公文書館への公文書の移管率が低い水準でとどまっていることも明らかになっている。

つい最近の特定秘密保護法案に関わる議論の中では、防衛庁の防衛秘密は公文書管理法が適用されない領域の公文書であることが明らかになった。公文書管理法の第3条に「公文書等の管理については、他の法律又はこれに基づく命令に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる」という条項があり、これが防衛省の公文書の扱いに適用されている。この条文を挿入した官僚おそるべし、である。

近年、大量公開請求によって行政が阻害されているという認識から、情報公開が制限されるような方向も出てきている。自治体では公文書管理条例が制定され公文書館が設置されるところも出てきてはいるが、一方で民間資料の保存機関が減ってきている状況もある。

今週は衆議院における特定秘密保護法案の審議の山場にあたる。衆議院のHPに行くと、審議の様子が中継されているので、ぜひ注目していただきたい。

■大石氏「アーカイブズと民俗学―報告書『花輪祭り』の実例から」■

専門は万葉集と民俗学。民俗学研究のなかで、アーカイブズの力を感じた経験を、秋田県鹿角市花輪地区に伝わる「花輪ばやし」を例に紹介する。

花輪ばやしとは、8月19、20日に行われる屋台行事のこと。この祭りはある時期、二つの祭りが統合されたと推測される。ところが、いつどのように統合されたのか、神社には記録はなく、地域の人々の記憶もあいまいであった。

手掛かりを探すなかで、『鹿角時報』『広報はなわ』の二つの資料に巡り合った。図書館に所蔵されていた『鹿角時報』の1957年=昭和32年6月11日発行 第506号に掲載された「お輿を二つ並らべて」と題した寄稿文と、それに続く投書(同年6月28日発行第509号)、花輪神明社総代会での議論に関する投書(同年7月11日発行第511号)から、二つの祭りが統合が検討され始めたのが昭和32年であり、実際に統合されたのは、花輪町発行『広報はなわ』 1960年=昭和35年8月2日発行第31号によって、この年1960年であることが分かった。

※大石氏配布資料(タイトルは「花輪ばやしの概要」)より。
『鹿角時報』
最初「花輪青年」という名称で青年団の会誌として大正5年(1916)に発刊。大正10年(1921)6月から「青年乃鹿角」に改称、タブロイド判とな る。昭和2年(1927)8月に「鹿角時報」に改称。昭和14年(1939)から戦時統制のため休刊となるが、昭和21年(1946)に復刊し、昭和46 年に廃刊。

民俗学は歴史学との差異化欲求から、口頭伝承をたいへん重視してきたが、それだけでは解明できない事象が存在する。この花輪ばやしの例のように、口頭伝承に文献からの情報を加えることによって、生き生きとした人々の生活の変化を描きだすことができる。

同地区の「お休み堂の迎え太鼓」は、お休み堂が使われなくなって、「迎え太鼓」も廃れてしまったのだが、それがいつのことなのか、人々の記憶・口頭伝承からでは明らかにできなかった。

この件に関しても『鹿角時報』『広報はなわ』が大きな手掛かりを与えてくれた。『広報はなわ』第31号(昭和35年=1960年8月2日発行)で、この年まで迎え太鼓が行われていたことが確認できる。昭和43年(1968)8月17日発行『鹿角時報』第1136号には地区への転入者による「お祭り雑感」という記事が掲載されており、迎え太鼓が廃れたのは昭和35年から43年のあいだのどこかの時点であることが分かる。

現代では核家族化によって家族間における伝承が困難なものとなるとともに、地域社会も職業の多様化によって民俗の伝承母体としては弱体化している。そのような状況で、民俗学においてもアーカイブズのようなものをきちんと把握する必要が生じている。

■青木氏「ビジネスアーカイブズと地域社会」■

和菓子製造販売会社虎屋に1989年入社。同社のアーカイブズ「虎屋文庫」に長年勤務の後、先ごろ退職。この10月、同文庫顧問に就任。

ビジネスアーカイブズとは、第一義的には記録を作成した企業自身のために存在する経営資源である。そのため非公開性、という特性を持つ。かつては社史を作成するために記録を保存する、という意識が強かったが、近年は広報などさまざまな社業に活用されるようになってきている。虎屋は480年の歴史を持つ会社であり、社のアーカイブズを広報・宣伝に活用したりしている。

虎屋に見るアーカイブズ保存の理念は、1945年5月の東京大空襲時に先輩たちが会社の重要記録を本社から持ち出して弁慶堀に沈めて避難させた例に表れているように思う。この件に関しては、社史『虎屋の五世紀 通史編』に記載されている。あるいは、1971年1月の社内報『まこと』第6号では当時の社長黒川光朝が「資料の整理、分類は無事故への指針である」と述べている。ちなみに、 この光朝社長が昭和48年(1973)に虎屋文庫を設立した。

現在虎屋文庫には7名のスタッフがおり全員社員である。社員総数960名の会社としては、アーカイブズ部門に配置しているスタッフは多いほうだと思う。かつては最大で9名ほど在籍していた時期もある。

さて、本日の本題は地域の近代化と鉄道・電力会社の関係である。かつて国分寺市史編纂に携わった時分、民家の蔵から東京電力の株券が出てきたり、思わぬところで企業資料に接する機会があった。

企業と地域社会の関係は、企業城下町などと言われることもあるように、大きな企業の場合地域への影響も大きい。東北の電力会社に関しては『東北電力事業史』 が参考になる。岩手県では大正4年(1915)岩手軽便鉄道が開業したほか、同年花巻電鉄も開業している(前身は大正元年に開業)。

関東の例では京王電気軌道(株)の例を見てみたい。同社は明治43年(1910)開業、大正2年(1913)府中火力発電所を竣工、同年電気鉄道も開業した。これに伴い、世田谷以西はそれまで電気がなかったのが、新たに沿線住民へ電灯が供給されることになった。大正2年の灯数は1387。昭和15年(1940) には灯数は46万5677、この年の料金収入は232万円。対して、電車収入は132万円。このように、民間企業の事業は地域の近代化に大きな影響を与え ている。ちなみにこれらの事実は『京王電鉄30年史』に記されている。

このことからわかるように、社史は地域社会を知るツールとして利用することができる。ビジネスアーカイブズは先に述べたように、一般には非公開であるけれども、社史が企業と地域社会の関係を探るための代替物としての役割を果たしてくれる。

最後にビジネスアーカイブズの公開と、公開促進についても触れておきたい。一つは社史を通じた公開があげられる。しかしこれには限界がある。イギリスのグラスゴーでは、企業資料を寄託する機関があると聞いている。このような仕組みづくりも大切であると思う。

また、本日の講演と関連して日外アソシエーツから刊行された『世界のビジネス・アーカイブズ─企業価値の源泉』がとても役に立つので、ぜひ手にとってもらいたい。

■加藤氏「公文書管理法を活かして記録を残す」■

岩手県庁で公文書を閲覧請求してみた。岩手では永年保存文書の目録をウェブ公開している。永年保存文書でも目録に載っていないものもある。有期限文書の目録はウェブには掲載されていない。有期限文書は情報公開請求によって閲覧する。

閲覧申請は県の総務部法務学事課が対応。今回は「引揚」「援護」関係の文書を閲覧しようとしたが、目録にない。目録にある「移民」も申請。県からは援護関係 については文書がない、という連絡があった。ただし1972年に発行された『援護の記録』はある、という。もちろん私(加藤氏)はその冊子についてはすで に知っているので、この冊子の元になった現記録をみたいと伝えた。一方、「移民」関係の文書は個人情報だから見せられない、という。

ここで問題点を考えてみる。

①まず、公開している永年保存文書の目録に掲載されている文書も、即日では閲覧できない。事前申し込みしないといけない。また、文書の内容をあらかじめチェックしていないため、申請があってから個別に確認する作業を行わねばいけない。

②永年保存文書が歴史的公文書になっていないため、いつまでも現用文書として扱われ、情報公開請求の対象である。そこで非常におかしなことであるが、南部藩から引き継いだ近世文書も現用文書ということになってしまっている。

③作成原課が異なるので、請求者に対してバラバラに連絡が来る。

④個人情報のチェックで無駄なやり取りと時間を要する。

⑤専門的知識のある職員がいない。公文書の中身を把握していない職員が対応するため、効率的でない。

国の個人情報保護法と地方自治体の個人情報保護条例には違いがあることも指摘しておきたい。個人情報保護法は生きている人だけが対象であるが、条例は死没者まで対象としている。また条例には適用除外がない。法律では第50条で適用除外を定めている。ということは、地方の場合は何百年たっても「個人情報」のままということになってしまっている。地域の歴史は個人の歴史の積み重なりであり、個人を隠すことは地域の歴史の抹殺に等しい。

ここまで見てくると、現在の公文書管理の状況は市民にとってはデメリットしかなく、行政にとっても無駄な労力と時間を費やす大変非効率なものであるということができる。

ここで他県の例も見ておきたい。佐賀県の例である。情報公開請求によって戦後引揚援護関係の公文書を請求してみた。当初は、「見当たらない」「記憶にない」 という対応であった。その後「探したら出てきた」に変わった。なぜか?そもそもファイル名からでは中身がわからないからである。公文書に関する専門知識を持った職員が不在なのである。県の職員は長くても3年で異動するため、3年前の文書もわからないということになっている。「今を起点に過去を見る職員の不在」である。

さらに公文書に関するイメージのズレ、があるように思う。職員は自分たちが作成した文書(起案して最終的に決裁を受けたもの) が管理対象であり、他から取得した文書や調査報告書の類は、自分たちが管理すべき公文書ではなく、それらを作成した原課の公文書である、という意識が強い。取得文書や調査報告書には保存年限が付与されていない傾向があり、こうなると捨てることも残すこともできない、という極めて困った状況に職員は置かれることになる。言葉を換えて言うと、文書を評価選別する職員が不在である、ということ。公文書館があっても、内容を把握していない文書は、内容を把握していないため(何が書かれているかわからないから)責任を持って移管できない。つまり、移管の主導権を握る公文書館は不在なのである。

「情報公開法があるからいい」? 何十年も前の文書まで作成原課が責任を持って対応しなければならない。はたしてこれは可能か。自分たちが関わったこともない文書は原課から切り離したほうが現実的である。

まとめ。作成から一定年限(30年)経過した文書は公文書館、または公文書館的機能を持つ組織へ移管したほうがよい。そうすれば次のようなメリットが得られる。

☆原課の書庫からわけのわからない文書を除去することが可能。
☆原課は何十年も前の内容もわからない文書に対する情報公開請求に対応しないで済む。
☆専門的知識を持つ職員が移管された文書に対応すれば、事務効率が上がる。
☆原課職員も無駄な仕事や責任から解放される。
☆文書を閲覧したい市民も長期間待たされたり、無駄なやり取りに対応するストレスから解放される。

————————————————————

第1部ではとくに加藤氏の公文書閲覧請求体験に基づく講演が興味深いものでした。今のままの公文書管理体制が市民にはストレス、職員には負担となっていることがよくわかりました。専門職を置くことは行政の効率化に大きく寄与するはずです。

第2部は遠野市の行政文書館、釜石市における被災文書の保存活用といった現場の具体的お話でした。第1部、第2部合わせて講演内容がパブリッシュされたらいいな、と思います。

岩手県には県の公文書館は未設置、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協、JSAI)加盟アーカイブズもまだないとうかがいました。これを機会にアーカイブズへの関心が高まることを期待します。

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