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以下の文章は、講演者の大沼太兵衛さんから頂戴したコメントを補足して修正した文章です。大沼さんのコメントは、この文章の後に続きます。(1/25付記)
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フランス国立古文書学校に研究留学された日本国立国会図書館の大沼太兵衛さんの講演「フランス国立古文書学校に研究留学して」 を聴きに行きました。(2014年1月18日、東京・日仏会館)
主催は日仏図書館情報学会。
配布用パンフレット(PDF)
http://www.sfjbd.sakura.ne.jp/03_main/sub/pdf/oonuma.pdf
最初に大沼氏の自己紹介がありました。2006年から国立国会図書館職員、2011年から2013年まで在外研究としてフランスへ研究留学。
フランス国立古文書学校(École nationale des chartes: ENC)は通常の大学とは異なるグランデコール(複数だとグランゼコール)という一群の学校のひとつだそうです。大学にはバカロレアをとれば入学することができますが、グランデコールはたいへん厳しい競争で選ばれた人たちだけが入学を許されるということです。
フランス国立古文書学校の場合は、現在ジャン・ミシェル・ル二オー校長以下、学生が150人余り、教授13人が在籍。卒業後は半分は図書館、1/4がアーカイブズ、その他がミュージアム、研究者への道を進みます。
現在の学校は1987年10月8日の政令n’87-832第3条に基づいて運営されています。
ENCの修士課程の1年次には「アーカイブ、図書館、美術史」の3つのコースがあります。(なお、本科であるArchiviste-paleographeにはそのような区分はなく、入学試験時にA、Bの2カテゴリーを選択しますが、前者は特に「歴史と古い言語」を専門とする学生、後者はもう少し多様な関心を持つ学生が対象で、試験の内容が異なるということです。)
資料を扱うための学問的教育に特化しており、実務教育は全く行わないため、卒業後ENSSIB、INPに進学して実務を学ぶ卒業生も存在します。ENCを卒業して、ENSSIBやINPといった学校に進み、それらを修了すると、コンセルヴァトゥール資格を授与されます。これはアーカイブズ、図書館、博物館等の館長など上の方の役職に就くための高級専門資格ということです。
面白いのは、グランデコールは学位授与機関ではないため、ENCに通いつつ、普通の大学にも通って学位取得する人が多いという点です。
そもそもはフランス革命で没収した貴族・教会財産に含まれる文書資料の整理・解読の専門家養成のため、また19世紀前半における「中世」の再評価・ロマン主義的な動きの中から学校設立の機運が生じたということでした。基本的には図書館ではなく、アーカイブズに関する学校であり、かつ学問的な中心に位置するのがフランス中世研究のための資料整理・読解の専門家養成であるらしいことがわかりました。
詳しいことは学会誌『日仏図書館情報研究』に今後掲載されることと思います。
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講演会終了後、日本のアーカイブズ関係者の方々と情報交換しました。欧州とアメリカでは、アーカイブズ・現用記録の管理に対する考え方にかなり違いがあるのではないか、という点が議論となりました。米国ではアーキビスト、レコードマネジャーが専門職として独立するためでもあったのだと思いますが、現用記録管理とアーカイブズ管理が画然と分かれています。一方、欧州ではアーカイブズが現用記録の管理までを守備範囲とすることにさほどの違和感はないようです。実際にサンゴバン社アーカイブズなどの企業では、アーカイブズの専門家が現用記録管理システムを立ち上げた例があることを、同社アーカイブズに関する論文を翻訳してくださった平野泉さんが指摘してくださいました。
サンゴバン社アーカイブズに関する論文は、『世界のビジネス・アーカイブズ』(2012年、日外アソシエーツ社)に収録されています。