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タグアーカイブ: ESG

企業アーカイブズと統合報告(Integrated Reporting)

18 月曜日 8月 2014

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サステナビリテイl, CSR, 統合報告, ESG, 非財務情報, IIRC, ISO 26000

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2014年8月4日の日本経済新聞社朝刊の社告「企業価値を創る情報開示とは:『統合報告』シンポ開催 9月2日」が目にとまりました。
http://www.nikkei.com/article/DGKDZO75186570U4A800C1MM8000/
http://adnet.nikkei.co.jp

統合報告とは国際統合報告評議会(International Integrated Reporting Council) http://www.theiirc.org/ (IIRC)が中心になって進めている企業報告の新しいあり方で、これまで別々に作成されてきた財務情報に関する報告と非財務情報に関する報告(ESG=環境、社会、ガバナンスに関する報告)を統合し、企業の長期にわたる価値創造に関わる情報をより分かりやすく投資家をはじめとするステークホールダーに提供することをめざしたものです。実際に作成される報告書が統合報告書と呼ばれます。

下記のサイトが分かりやすく統合報告について説明しています。

新日本有限責任監査法人 市村清「統合報告」を語るシリーズ(全10回)
http://www.shinnihon.or.jp/services/advisory/ir/column/

野村インベスター・リレーションズ
シニアコンサルタント 佐原 珠美
企業の価値創造プロセスを伝える「統合報告」とは
1)非財務情報の重要性の高まりと統合報告の背景
http://nomura-ir-webtsushin.e-ir.ne.jp/column/integratedreport01.html
2)日本の統合報告の現状と策定のポイント
http://nomura-ir-webtsushin.e-ir.ne.jp/column/integratedreport02.html

これがどのようにアーカイブズと関係するのか?

前回のブログ(奥村健治「企業史としての記録保存と活用」(2006年))で触れたように、2006年の段階で「環境会計という概念のような考え方をアーカイブや記録管理に応用できないか」という意見が記録管理やアーカイブズ関係者の間で表明されていました。

そこで思い出したのが、2012年8月の国際アーカイブズ評議会(ICA)のブリスベン大会でのインネッケ・デセルノIneke Deserno(NATO=北大西洋条約機構のアーキビストでありオーストラリア・モナシュ大学大学院博士課程に在籍中)の発表「レコードキーピング:企業の社会的責任の証拠か?」です。

公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター「ビジネス・アーカイブズ通信」41号(2012年11月6日発行)では次のように紹介しています。
http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20121106.html

「発表はデセルノ氏の博士論文のためのリサーチの途中経過の報告でした。グローバル企業が発行する「サステナビリティ・レポート」は企業が社会、経済、環境に影響を与える活動や決定に関する情報を提供してくれます。記録は企業活動と決定に関する証拠なので、レコードキーピングの原則とプログラムは、サステナビリティ報告業務における重要な要素です。しかしながら現時点では企業は持続可能な活動を支援するために、レコードキーピング・プログラムを使用していないし、さらに重要なことは記録に関わる専門職の人々がこれらの活動に十分に関わっていない点にあります。このペーパーでは、CSRにおける記録管理の役割と、記録がサステナビリティ報告に寄与するものかどうかという問いを検討しています。デセルノ氏はウェブ上で公開されている各社のサステナビリティ報告を基にしつつ、関係者へのインタビューを行い、研究を進めています。

暫定的な結論として、記録の専門家たち、特に企業で働く記録プロフェッショナルは、組織の業務に積極的に関わり、それぞれの業務過程の中に、記録管理・レコードキーピングに必要な要件を組み入れるべきであることを示唆しています。そして、今こそCSRのための効果的なレコードキーピング体制を確立すべき時であると結論づけています。」

わたしもこの発表の場に居合わせました。立ち見が出るほどの盛況ぶりで、アーカイブズ、記録管理関係者が大いに注目する報告でした。

デセルノ氏の問題意識は、グローバル化した多国籍企業が透明性を確保し、信頼しうるサステナビリティ・レポートを作成するためには適切な記録管理が欠かせない、という点にあります。
http://infotech.monash.edu/research/about/centres/cosi/documents/ineke-phd-summary.pdf
(デセルノ氏の博士論文リサーチプロポーザル)

統合報告の議論でわたしが注目するのは、報告作成における記録管理の役割に加え、アーカイブズ機能のもたらす付加価値が非財務情報=ESG情報(企業の長期的価値創造に寄与する)としてより可視化される可能性がある点です。

宝印刷株式会社総合ディスクロージャー研究所編『統合報告書による情報開示の新潮流』(2014年、同文舘出版)46ページにオムロン作成「今後の企業価値の考え方」の図が掲示されています。これによると「非財務指標 見えない資産」には「理念の浸透度」「企業文化の濃さ」「CSR」「ガバナンス」「次世代経営者」といった指標があげられています。(オムロンは2012年からアニュアルレポートに変えて統合レポートを発行しています。)
http://www.omron.co.jp/ir/irlib/irlib_list.html

ビジネスアーカイブズ、企業史料関係者のこれまでの主張、すなわち「企業アーカイブズの利活用は企業理念、企業文化、ガバナンス、CSR・・・といった多様な価値に貢献する」ということが、投資家をはじめとするステークホールダーに理解してもらえる方向に進んでほしいと思います。

なお、以下の点を企業のIR関係の方からご教示いただきました。

《統合報告の導入が近年日本でもさまざまに取り上げられるようになった背景としては、スチュワードシップ・コードや年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)といったものとの関係から日本の機関投資家が、(企業報告)発行体に対してガバナンスをはじめとする中長期的な質問をするようになったこともある。さらに発行体側にもルールを課すためにコーポレートガバナンス・コードといったものの検討も始まっている》

【参考①】

平成26年6月10日 金融庁「責任ある機関投資家」の諸原則
≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~の受入れを表明した機関投資家のリストの公表(第1回)について
http://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20140610-1.html

平成26年8月7日(木)9時30分~11時00分
金融庁 コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議(第1回)議事次第
http://www.fsa.go.jp/singi/corporategovernance/siryou/20140807.html

【参考②】

下記のIIRC関係の動画も参考になります。

Paul Druckman 国際統合報告評議会CEO
「統合報告フレームワークが解決しようとしている課題」
What problem is the integrated reporting framework trying to fix?
2013年4月15日アップロード
https://www.youtube.com/watch?v=n2Qv5L2f-So&feature=youtu.be

斉藤惇 株式会社東京証券取引所グループ代表執行役社長
「ビジネスにおける統合報告の重要性」
2011年1月17日 中国・北京で収録
2011年9月27日アップロード
https://www.youtube.com/watch?v=FJGYUldoWM4&list=UUee53PLVUpXLL5kIsfMw7aQ&index=30

英国チャールズ皇太子
「新しい統合報告フレームワークを支持する」
HRH The Prince of Wales endorses the new International Integrated Reporting Framework
2013年12月5日アップロード
https://www.youtube.com/watch?list=UUee53PLVUpXLL5kIsfMw7aQ&v=BIVWxmqGs9M&app=desktop

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奥村健治「企業史としての記録保存と活用」(2006年)

13 水曜日 8月 2014

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タグ

ESG, 非財務情報

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This work is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
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企業史料関連論稿の紹介です。

[書誌情報]

著者:奥村 健治(おくむら けんじ)

タイトル:企業史としての記録保存と活用(研究発表,記録管理の社会的責任,<特集>2006年研究大会)

英文タイトル:Preservation and usage of records for a corporate history (Article presented at the annual meeting of the Society, Social responsibility of records management)

雑誌名:レコード・マネジメント : 記録管理学会誌

巻号:(52), 37-42, 2006-12-18

発行者:記録管理学会

Cinii Articles: http://ci.nii.ac.jp/naid/110005717847
(オープンアクセス。本文PDFへのリンクがあり、本文が読めます。)

[目次]

1. はじめに

2. キヤノン史アーカイブ室沿革

3. 史料の収集、保存、利用の基本

4. 業務方針

5. 今後の課題

**********************

2006年5月20日に開催された2006年度記録管理学会研究大会における特別事例紹介を元にした論稿です。冒頭「はじめに」で、キヤノンの企業史アーカイブの基本姿勢は「身の丈にあったアーカイブ」であると宣言しています。その内容は

(1)「安定した運営のために、中長期計画及び日々の業務の判断基準や運用ルールの明確化が必要」

(2)「保存する情報や物品と、保存のためのルール整備が確実になされることで、はじめてその基盤ができ、初めてアーカイブが社内認知され、積極的な運営が可能になる」

(3)「過剰でもなければその逆でもない身の丈に合った品質とそれを実現する経営資源が必要」

とまとめられています。(37ページ)

今から8年前の発表ですが、企業アーカイブズの構築と運営の指針として、多くの企業にとっては今もって追求されるべき事項ではないでしょうか。

論稿本文では続いて、「キヤノン史アーカイブ室沿革」「史料の収集、保存、利用の基本」「業務方針」「今後の課題」が順に述べられています。実際に社内で利用されている(た)「製品管理台帳」、「毎月発行の月次年表」、「歴史的製品推薦リスト」は、社内記録のデータベースのフィールドを考えるのに有用でしょう。

イントラネットによる掲示板GCIP(Global Canon Information Plaza)で情報を社内公開→ストックした後、年表作成を行うというアーカイブ室における業務の流れが紹介されています。

2006年以降の変化を上げるならば、企業情報発信のアウトレットとしてインターネットの割合が高まったことがあるでしょう。その点を除くならば、8年前の論考ですが、企業内記録の保存と活用に関する考え方としてまったく色褪せた感じを受けません。

本文の最後に研究大会当日の質疑応答も収録されています。以下、長くなりますが、引用します。(42ページ)

Q1:
「組織の名称をキヤノン史編集室からキヤノン史アーカイブ室に変えたというのはすばらしいと思います。社史編纂室だとその度に組織がなくなります。その点でアーカイブ室にするというアイデアはすばらしく、他の会社でも同じようにしたらよいと思います。それから保存のコストに苦慮されていることです。これは記録管理学会の皆様に考えていただきたいことですが、企業会計は収入と支出が計上され、保存するコストばかりが問題になり結局捨てろということになる。保存しておくことの会計上のメリットができていないのではないか。数年前から環境会計という概念ができ認められてきた。そのような考え方をアーカイブや記録管理に応用できないのでしょうか?」

A1:
「名和先生の著作権の話でロビー活動が必要だという話がありましたが、役員をはじめ社内に対して、アーカイブの大切さを平易に訴求することが効果を生むと思います。アーカイブに限ることではないのですが、コストのみがかかっているというのではなく、過去の資産を再利用して利益を生んでいることを示すため、アーカイブがどれ位利益に寄与したかというような試みをしてみたことはあります。」(以上、引用)

「役員をはじめ社内に対して、アーカイブの大切さを平易に訴求することが効果を生む」点は引き続き各企業のアーカイブズ担当者が進めていくべき課題だと思います。一方、この8年間での変化には、財務情報のみならず、非財務情報(環境、社会、ガバナンス=いわゆるESG)を企業報告に取り込んでいく動きが目立ってきたことがあげられます。サステナビリティレポート、環境レポート、社会貢献レポートなどです。非財務情報を企業報告に取り入れていくにあたり、アーカイブズや記録管理が何らかの貢献を果たすことができるのではないか、そんなことを考えています。

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