非会員でも参加可能だったので、社会・労働関係資料センター連絡協議会と東京大学経済学部資料室共催の表記のセミナーに参加してみました。
https://sites.google.com/site/rodoshiryokyo/sokai/semina

プログラムはリンク先にあります。講義3つと見学、ワークショップ、実習+質疑、という内容濃き3時間半でした。

●講義「デジタルアーカイブ入門:歴史と課題」
報告「エル・ライブラリーの事例から教訓を学ぶ 労働組合旗、労働史オーラルヒストリー、産業映画フィルムのデジタル化について」
講師:谷合佳代子(エル・ライブラリー〈大阪産業労働資料館〉館長)

●講義「東京大学経済学図書館の蔵書管理におけるデジタル化の位置づけ」
講師:矢野正隆(東京大学経済学部資料室助教)

●講義「東京大学経済学部資料室における撮影システム構築の考え方」
講師:小島浩之(東京大学経済学部資料室講師)

●見学「東京大学経済学部資料室の撮影室」

●ワークショップ「資料のデジタル撮影のポイントと注意点」
講師:岸剛史(東京大学経済学部資料室学術支援職員)

●実習+質疑「デジタル化のプロセスについて参加者と考える」
講師:矢野正隆(東京大学経済学部資料室助教)

以下、特に注目した部分の簡単なメモです。

東京大学経済学部資料室ではデジタル化の目的は、「保存管理(preservation)の一環としてのデジタル画像作成」。所蔵資料のうち「貴重」資料は「利用のための代替物作成」のためにデジタル化、「一般」資料の場合は、「保存のための代替物作成(代替保存)」のためにデジタル化する(この部分は矢野先生のお話)。

過去様々な資料デジタル化の取り組みを経て、現在資料のデジタル化は外注ではなく内製しています。どうしてこの仕組みで行くことにしたのか、という点について、以下は小島先生のお話の一部です。

講義によると、資料保存のための教育は誰も受けていない。デジタル化のための写真撮影についても、同様の問題がある。デジタル化の撮影とは、資料所蔵機関からすると、修正などをほどこされない、現物のありのままのデジタル代替品を作成することが目的。でも、実は日本での写真撮影に関わる教育は、ずっと芸術作品(著作権が生じる)撮影の教育しか行われてこなかった。そこに流れる価値観は「写真はキレイであるべき」という価値観。どの業者さんも同じ。

入札を行う場合は、価格を下げるために人件費を下げる、これによって撮影のクオリティ、デジタル代替品のクオリティが下がる。色々大変な目にあった(例えば納品された正副2setのデジタル画像数と原本の画像数が合わないとか)。

様々な試行錯誤(?という言葉は使っておられませんでしたが)の末、ブックショットという資料撮影機材を導入を決めた。ただし、求める品質の画像を得るために色々工夫した。さらに、岸さん、前任者タケウチさんという写真撮影の専門家(岸さんは芸術学部出身)に学術支援職員としてチームに加わってもらい、東大経済学部資料室のニーズと目的(保存管理の一環としてのデジタル画像作成)という考え方を共有し、ワークフローを整えて、現在の資料室における撮影システムを構築した。

きっちり頼れる体系的な理論・方法・知識・・・が存在しない。なので、自分たちはデファクト・スタンダードを作っていくつもりである。「何を残すのか」「何を撮りたいのか」が大切。これによってデジタル化の考え方や方法が変わってくる。

以上のようなお話でした。

利用(とくに学術利用、と私は理解しましたが)可能な品質を備えたデジタル化画像を作成できる人的な能力・リソースは限られており、過去潤沢なデジタル化予算が付き短期間で大規模デジタル化が行われたことがあったが、その品質、持続性については精査しなければならない、という趣旨のお話も大変参考になりました。