森本祥子「日本のアーカイブズで家系調査は可能か:課題整理と可能性の探求」(2010年)目次と本文

欧米やオーストラリアにおけるアーカイブズ利用者の多数を占めるのは自分の先祖のことについて調べる一般の市民です。このような家系調査の存在が、アーカイブズの存在を社会的に支えているとも言えます。この点に着目して、本論文では、「日本のアーカイブズで欧米のような家系調査をすることは可能か。またアーカイブズはそれを奨励すべきか」(90ページ)という問いを立てて検討しています。

この問いに対する著者の結論は、「アーカイブズの本質が十分理解されているとは言いがたい現在の日本では、無闇に家系調査を奨励することは危険だが、同時に家系調査を契機とする一般利用が増えることによって、アーカイブズに好ましい刺激が与えられる可能性があることも理解すべき」(96ページ)というものです。

情報公開法や個人情報保護法がアーカイブズの公開に与えた影響についても言及されています。

何を公開し、何を非公開とするのかは、文化によっても異なれば、時代によっても変わってきます。その中で筆者が、アーカイブズの在り方=原則として、「アーカイブズは、いまの社会をきちんと後世に伝えるためにはどんな資料を残せばいいのかを第一に考えるべきであり、その中の何を公開するかはその時々の社会と相談しながら決めればよい」(97ページ)と述べている点に共感をおぼえます。

[書誌情報]

著者:森本 祥子(もりもと さちこ)

タイトル:日本のアーカイブズで家系調査は可能か:課題整理と可能性の探求

掲載誌名:海港都市研究

出版年:2010年3月

巻号:5

掲載ページ:89-97

[目次]

はじめに

Ⅰ はじめに:旧メルボルン監獄の衝撃

Ⅱ 個人情報の取り扱いに関する法制度とアーカイブズの対応

Ⅲ 日本における家系調査の可能性

1 個人に関する情報へのアクセス
2 家系調査支援に伴う問題点と利点

Ⅳ 終わりに

[本文]
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81002114.pdf
**********************

〈参考ページ〉

神戸大学学術成果リポジトリ
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000003kernel_81002114

CiNii
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007523402

NDLサーチ
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000024-I004639259-00
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2013-10-09 11.12.18

渡辺悦子「イギリス国立公文書館の連携事業」(2014年)目次と本文

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イギリス国立公文書館の連携事業の歴史的展開をまとめたものです。最近のイギリスにおけるアーカイブズ・セクターの動向を知るのにもっとも詳しい論文です。著者は国立公文書館統括公文書専門官室公文書専門員。

[書誌情報]

著者:渡辺 悦子(わたなべ えつこ)

タイトル:イギリス国立公文書館の連携事業

シリーズ名:公文書管理・公文書館をめぐる動き

掲載誌名:アーカイブズ / 国立公文書館 編

出版年:2014年10月

巻号:54

掲載ページ:50-60

[目次]

はじめに

1. NRA:全国アーカイブズ登録局

1.1 NRAとは
1.2 NRA以前
1.3 NRAの発足とその活動

 

2. 全国アーカイブズネットワーク構想:ICTの時代の連携

2.1 全国アーカイブズ・ネットワーク構想
2.2 Access to Archives (A2A)
2.3 Pan-archivesへの道

3. セクター・リーダーシップの時代へ

3.1 The Recordプロジェクト
3.2 Explore Your Archivesプロジェクト

おわりに

[本文]
http://www.archives.go.jp/about/publication/archives/pdf/acv_54_p50.pdf
**********************

〈参考ページ〉

CiNii
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020241712

NDLサーチ
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I025868024-00
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2014-11-12 13.17.052014-11-12 13.17.54

「イギリスにおける『アーカイブズへのコミュニティ・アクセス・プロジェクト(CAAP)』:その歴史的背景と概要について」(2008年)目次と本文

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イギリスで2003年から2004年にかけて実施された「アーカイブズへのコミュニティ・アクセス・プロジェクト(CAAP)」に関してまとめたものです。

[書誌情報]

著者:松崎 裕子(まつざき ゆうこ)

タイトル:イギリスにおける「アーカイブズへのコミュニティ・アクセス・プロジェクト(CAAP)」:その歴史的背景と概要について

掲載誌名:コミュニティ政策研究 / 愛知学泉大学コミュニティ政策研究所 [編]

出版年:2008年3月

巻号:10

掲載ページ:75~90

[目次]

1.はじめに

2.CAAP実施の背景:イギリスにおけるアーカイブズ体制の変容

2.1 19世紀から1990年代まで: PROとHMC
2.2 1990年代以降:アーカイブズのデジタル化とネットワーク化

3.CAAPの概要

3.1 コミュニティ・アーカイブズ(community archives)の定義

3.2 プロジェクトの目的

3.3 プロジェクトの方法

3.3.1 プロジェクト参加者
3.3.2 実施期間
3.3.3 ケース・スタディに関して
3.3.4 ベストプラクティス・モデルの探求過程

3.4 CAAPが検討した範囲

3.4.1 コミュニティにとってのコミュニティ・アーカイブズの価値
3.4.2 正規のアーカイブズ(formal archivesとコミュニティ・アーカイブズの交流
3.4.3 オンラインで利用できることの重要性
3.4.4 倫理的挑戦とアーカイブズ標準における課題
3.4.5 アーカイブズの文脈から社会的排除を理解する

3.5 ベストプラクティス・モデル

3.6 資金の流れについて

4.コミュニティとアーカイブズ:CAAPの提起するもの

 

5.おわりに

[本文]

http://bit.ly/1uE8hKD

英国アーカイブズへのコミュニティ・アクセス・プロジェクト

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〈参考ページ〉

CiNii
http://ci.nii.ac.jp/naid/40015943190

NDLサーチ
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I9441188-00

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2008-06-01 13.24.39

 

 

大磯町郷土資料館「年報」入手方法について

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大磯町郷土資料館「年報」は、一般に有償販売しているものではなく、関係者に無償配布しているものとのことです。

ご希望の方は下記までご連絡をお願いします。

[宛先]大磯町郷土資料館学芸員・富田さん
TEL:0463-61-4700
FAX:0463-61-4660
MAIL:kyodo-han5★town.oiso.kanagawa.jp
※メールアドレスの★を@に変えてください。

2014-04-16 09.40.25

富田三紗子「博物館が所蔵する文献資料の整理におけるISAD(G)の考え方の応用:大磯町郷土資料館における整理方法を検討して」(2014年)

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博物館が所蔵する文献資料の整理方法に、アーカイブズ学における記述標準ISAD(G)を適用することを検討した論稿をご紹介します。

富田三紗子「博物館が所蔵する文献資料の整理におけるISAD(G)の考え方の応用:大磯町郷土資料館における整理方法を検討して」(2014年)

[書誌情報]

著者:富田 三紗子(とみた みさこ)

タイトル:博物館が所蔵する文献資料の整理におけるISAD(G)の考え方の応用:大磯町郷土資料館における整理方法を検討して

掲載誌名:年報[大磯町郷土資料館]

巻号:平成25年度

発行者:大磯町郷土資料館

掲載ページ:44‐51

[目次]

1. はじめに

2. 当館開館前から平成24年度までの文献資料の整理

3. ISAD(G)の考え方による今後の整理方法の検討

4. おわりに

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本稿は、「はじめに」で、博物館資料論における博物館資料の整理・分類は、それぞれの研究領域での、資料の特性とその背景にある個別学問の資料論に対応して確立していくとされていることを指摘しています。このような博物館資料論によれば、文献資料の整理にあたっては、すでのその整理の方法が確立しているアーカイブズ学の方法が参考になると考えられます。そして、本稿ではアーカイブズ学における記録資料記述の標準である、ISAD(G)=General International Standard Archival Descriptionを用いて、著者が働く大磯町郷土資料館所蔵の文献資料を整理する方法が示されています。

(この試みの背景にあるのは、収蔵庫の収蔵率が100%近くに達し、抜本的に収蔵資料を整理することが求められているためであると記されています。)

著者は”文献資料”に関し、「博物館において収集、保管、展示、調査研究の対象とする資料を博物館資料とし、その博物館資料の内、歴史分野において活用される資料を歴史資料、 歴史資料の内、文字によって記録されている資料を文献資料とする」と定義します。また”文献資料”は、「アーカイブズ学における、アーカイブズ=記録史料とほぼ同義とする」、”記録史料の記述”とは「記録史料を管理し、参照を容易にするために、検索手段の手がかりとなるように記録史料の情報を書き記すという、アーカイブズ学の用語である」と説明したうえで、議論を始めています。

次に、本稿は、現在同館が所蔵している文献資料状況をたどり、平成2年に開始された町史編さんによる整理が行われたものと、それ以後に取得した未整理のものが混在している状況であることを確認し、以後具体的に所蔵文献資料へのISAD(G)の適用方法を検討しています。そして、資料の階層構造(フォンド、シリーズ、ファイル、アイテム)ごとに情報を記述していく「マルチレベル記述規則」であるISAD(G)を同館所蔵資料整理に適用するにあたっては、ユーザーへの迅速な提供のために、フォンドとアイテム・レベル記述を優先するという方針で作業することにしたといいます。

本稿の意義は、地域の博物館が抱える問題に対する、ひとつの解決策を示している点にあります。以下、長くなりますが原文を引用します。

「基礎的自治体が設置する地域博物館は、だいたいが小規模館であり、専門職の学芸員が配置されたとしても、各研究分野に1人確保できればいい方で、文献資料を扱うことができる担当者が複数配置されることはまず想定し難い。また、その1人の担当者が退職するときに、後任者への引継ぎを考慮して、ある程度の期間を重複して雇用することも、日本においてはあまり配慮されていない。すなわち、1人の担当者が退職するまで長年にわたって一つの業務を抱え、その者が退職した瞬間、長年の蓄積がなくなるという現実がある。業務の継続性を考えたとき、担当者が得た情報を記録化することがまず重要だが、地域博物館では今までこの点を考慮することがほとんどなかった。ISAD(G)の考え方に基づく資料調書は項目が多く、記述が困難であることが指摘されることもあるが、実際には、それらの項目はいずれも大切な情報であり、資料群の出所や来歴などを調書として残すことが、担当者が館を離れた後も、業務を継続する礎を築くことになる。ISAD(G)の記述要素を意識して文献資料の整理を行うことは、博物館運営において有益な方法と言えるだろう。」(47ページ)

上の引用には、業務の継続性を確保するために標準に則った資料の記述を行うことは、ムダの削減にダイレクトにつながることが示されています。限られたリソース、あるいはリソースが縮小しつつあるなかで、なによりも優先すべき事項ではないでしょうか。事業の継続性を支える資料整理の方法という点で、本稿は、一時に比べて議論が低調になっているようにもみえる、記録資料記述標準ISAD(G)の意義を改めて訴える論文です。

余談ですが、先日(11月5日)開催された企業史料協議会第3回ビジネスアーカイブズの日(テーマ「社史からアーカイブズへ」)では、各社それぞれの方法でアーカイブズの運営、文書がアーカイブズに流れてくるような仕組み作りに取り組んでおられるなぁという感想を持ちました。一方、人材の養成や引き継ぎが難しい、というお話が印象に残りました。必ずしも資料の記述方法に直接関係するわけではありませんが、企業においても「事業・業務の継続性」が大きな課題と認識されていることは、本稿の問題意識と繋がるものと感じました。
http://www.baa.gr.jp/news_h.asp?NoteAID=12

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大磯町郷土資料館発行の「年報」の所蔵状況は下記の通りです。

カーリルローカルで神奈川県内の公共図書館を検索すると、いくつかの館で平成24年度まで所蔵が確認できます。
http://calil.jp/local/search?csid=kanagawa&q=%E5%B9%B4%E5%A0%B1%E3%80%80%E5%A4%A7%E7%A3%AF%E7%94%BA%E9%83%B7%E5%9C%9F%E8%B3%87%E6%96%99%E9%A4%A8

CiNii
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA12255831

NDLサーチ
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000071769-00
(平成23年度まで)

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大磯町 郷土資料館のページ
http://www.town.oiso.kanagawa.jp/bunka_sports/bunka/kyodosiryokan/

大磯町郷土資料館刊行物一覧ページ(ただし「年報」は含まず)
http://www.town.oiso.kanagawa.jp/bunka_sports/bunka/kyodosiryokan/1358819527406.html

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2012-12-05 13.39.25大磯町郷土資料館ISAD(G)

JSAS2014大会での報告「企業アーカイブズを持続可能なものとする:日本的経営におけるアーキビストとは?」目次

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日本アーカイブズ学会2014年度大会企画研究会(テーマ「私たちの『アーカイブズ学』をとらえ直す──批判・検証・展望」)での報告が『アーカイブズ学研究』21号に掲載される予定です。

昨日初校を編集担当委員の方にお戻ししました。最終的な目次は下の通りです。

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「企業アーカイブズを持続可能なものとする:日本的経営におけるアーキビストとは?」
Making Corporate Archives Sustainable: Archivists in Japanese-style Management

1.はじめに

2.ビジネスアーカイブズの歩みと組織アーカイブズとしての企業アーカイブズの課題
2-1.ビジネスアーカイブズのこれまで
2-2.組織アーカイブズとしての企業アーカイブズの特色
2-3.企業の「組織アーカイブズ」が持続性を保つには? 諸外国と共通する課題

3.日本的経営スタイルと企業アーカイブズ
3-1.日本アーカイブズ学会でのこれまでの議論をめぐって
3-2.欧米型の雇用と日本型の雇用の比較
3-3.日本企業におけるアーカイブズ担当者
3-4.社史編纂と企業アーカイブズ

4.日本的経営におけるアーキビスト:付加価値創出に寄与できるアーキビストとは?
4-1.二つの観点:「アーカイブズ学・実務」と「会社業務経験」
4-2.人材育成の出口問題
4-2-1.社外専門家としての企業アーカイブズ支援
4-2-2.韓国での仕組みづくりの例
4-3.雇用政策の今後の変化とのかかわり
4-4.愛情・愛着

5.企業アーカイブズを持続可能なものとするために
5-1.取締役会、社長、経営企画、持ち株会社等の経営トップとのつながり
5-2.経営者団体への働きかけ:ISO26000、日本経団連「企業行動憲章」
5-3.組織アーカイブズでの業務に対応できる教育研修プログラムの開発
5-4.アーカイブズ学の基本の提示、テキストの開発・翻訳テキストの普及
5-5.アーカイブズ関連ビジネスの振興

6.おわりに

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[図1] 企業史料協議会会員数推移
[表1] IBM社企業アーキビスト(マネージャーレベル)求人広告(2014年2月)における職務の記述
[表2] 社内人事異動者のアーカイブズ業務に対する考えの変化と取り組みの展開事例

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来月中に刊行予定です。

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2014-06-17 14.26.38

北の丸 国立公文書館にて(2014年6月17日)

関 正雄『ISO 26000を読む 』(2011年)目次

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企業のIR部門の方から、日本におけるCSRに関する考え方も変わってきているというお話をうかがいました。日本ではCSRが「法令遵守+社会貢献+環境対応」として理解されてきたものの、2010年にISO 26000(SR=社会的責任の国際規格。企業のみならず、すべての組織を対象としたもの)が発行され、国際的なスタンダードに沿ってCSRを理解する必要が生じつつあるといいます。

そこで、最近読んだ本の中でとても分かりやすくISO 26000を解説している文献の目次を紹介します。末尾の著者紹介によると、関正雄氏は株式会社損害保険ジャパンCSR部上席顧問であり、ISO26000作業部会において日本産業界代表エキスパートとして5年間規格策定に関わったほか、経団連の企業市民協議会企画部会長、国際協力NGOセンター理事他も務めているということです。

作業部会での議論の紛糾や合意に向けての粘り強い交渉の様子が伝わってきます。ひとつの事例に「4.3.5 性的指向と差別をめぐる議論」の紹介があります。文化・宗教を背景とした価値観の違いから、「性的指向(sexual orientation)を差別禁止事由の一つに入れるか入れないか最後まで紛糾し、専門のタスクチームによって議論を行った結果、最終的には「個人的関係(personal relationships)」と言い換えたうえで、差別禁止事由に入れることになったとあります。(82-83ページ)

[書誌情報]

タイトル:ISO 26000を読む : 人権・労働・環境…。社会的責任の国際規格:ISO/SRとは何か
著者:関正雄
出版者:日科技連出版社
価格:2,500円 (税別)
刊行年:2011
ページ数:163p
ISBN:978-4-8171-9393-3
出版者ページ:
http://www.juse-p.co.jp/cgi-bin/html.pl5?i=ISBN978-4-8171-9393-3

[目次]

まえがき

第1章 ISO 26000の概要

1.1 ISO 26000とは何か

1.1.1 ISO 26000をひと言でいうと
1.1.2 何が書いてあるか

1.2 CSRではなくSR規格であることの意味

1.3 規格の背景にあるもの

1.3.1 期待が失望に変わった温暖化国際交渉
1.3.2 「差異はあっても共通の責任」という考え方

1.4 ISO標準化の歴史と持続可能な発展

1.4.1 ISOは何を標準化してきたか
1.4.2 ISOはこれから何を標準化するのか

1.5 開発の経緯~難航した開発プロセス~

1.5.1 問題提起から作業部会の立ち上げまで
1.5.2 求心力を高めていった作業部会
1.5.3 規格発行後は各国で国内規格化へ

第2章 ISO 26000を理解するためのキーワード

2.1 ガイダンス文書

2.1.1 推奨事項を記述した手引き書
2.1.2 手引き書とした理由は何か
2.1.3 PDCAサイクルと認証問題

2.2 マルチステークホルダー・プロセス

2.2.1 定義
2.2.2 欧州のマルチステークホルダー・フォーラム
2.2.3 ISO 26000におけるマルチステークホルダー・プロセス
2.2.4 社会的責任に関する円卓会議

2.3 ステークホルダー・エンゲージメント

2.3.1 定義をめぐる議論
2.3.2 これまでのエンゲージメント、これからのエンゲージメント
2.3.3 経団連企業行動憲章における定義
2.3.4 コミュニケーションとエンゲージメント

2.4 サプライチェーンとバリューチェーン

2.4.1 規格策定の原動力となったサプライチェーン
2.4.2 監査からキャパシティ・ビルディングへ
2.4.3 「影響力の範囲」の議論
2.4.4 バリューチェーンが重要に
2.4.5 持続可能なカシミア・プロジェクト

第3章 規格解説その1 社会的責任の基本(箇条1~4)を理解する

3.1 基本の理解が重要

3.2 適用範囲(箇条1)

3.3 社会的責任の定義(箇条2)

3.4 社会的責任の理解(箇条3)

3.4.1 歴史的理解
3.4.2 社会的責任が求められる理由
3.4.3 持続可能な発展と組織の社会的責任の関係

3.5 社会的責任の原則(箇条4)

3.5.1 原則とは何か
3.5.2 国際行動規範の尊重
3.5.3 原則を活用する

第4章 規格解説その2 社会的責任の中核主題(箇条6)を理解する

4.1 中核主題の全体像(箇条6)

4.2 組織統治(箇条6.2)

4.3 人権(箇条6.3)

4.3.1 人権とラギー報告
4.3.2 人権パートに何が書いてあるか
4.3.3 人権デューディリジェンスとは何か
4.3.4 「加担」について
4.3.5 性的指向と差別をめぐる議論
4.3.6 今後の他の規範への影響

4.4 労働慣行(箇条6.4)

4.4.1 ILOとISOの協力覚書の意味
4.4.2 人権との関連の深さ
4.4.3 日本のCSRと労働
4.4.4 児童労働
4.4.5 労働における5つの課題

4.5 環境(箇条6.5)

4.5.1 環境問題の理解
4.5.2 汚染の予防
4.5.3 持続可能な資源の利用
4.5.4 気候変動の緩和および気候変動への適応
4.5.4 環境保護、生物多様性、および自然生息地の回復

4.6 公正な事業慣行(箇条6.6)

4.6.1 基本的な考え方
4.6.2 具体的なアクション

4.7 消費者課題(箇条6.7)

4.7.1 SRの中核主題としての特徴
4.7.2 保護すべき消費者の権利
4.7.3 持続可能な消費について
4.7.4 「消費者市民社会」を目指して

4.8 コミュニティへの参画およびコミュニティの発展(箇条6.8)

4.8.1 SRの中核主題としての特徴
4.8.2 具体的な課題とアクション
4.8.3 社会貢献とSR

第5章 規格解説その3 社会的責任を組織の活動に組み込む(箇条5および7)

5.1 社会的責任の認識およびステークホルダー・エンゲージメント(箇条5)

5.1.1 組織とステークホルダーと社会の関係
5.1.2 課題の絞込み
5.1.3 影響力の範囲
5.1.4 ステークホルダーの特定
5.1.5 ステークホルダー・エンゲージメント

5.2 組織全体に社会的責任を統合するための実践(箇条7)

5.2.1 基本的な考え方(箇条7.1~7.3)
5.2.2 組織全体に社会的責任を統合するための実践(箇条7.4)
5.2.3 社会的責任に関するコミュニケーション(箇条7.5)
5.2.4 社会的責任に関する信頼性の向上(箇条7.6)
5.2.5 社会的責任に関する組織の行動および慣行の確認および改善(箇条7.7)
5.2.6 社会的責任に関する自主的なイニシアチブ(箇条7.8)

第6章 ISO 26000をどう活用していけばよいか

6.1 規格のインパクト

6.1.1 中国とISO 26000
6.1.2 途上国の積極姿勢
6.1.3 さまざまな規範への影響
6.1.4 日本企業の反応

6.2 具体的にはどう活用したらよいか

6.2.1 考え得る活用方法
6.2.2 教育・啓発ツールとしての活用
6.2.3 企業行動憲章の活用
6.2.4 中小組織向けには
6.2.5 全ての組織の社会的責任という視点

6.3 求められている企業のリーダーシップ

6.4 結びに代えて

6.4.1 時代が求めた社会的責任規格
6.4.2 変化を生み出すためのソフトロー

あとがき
参考文献
索引
著者紹介

・。・。・。・。・。・。・。・。・

そして、次の引用で本文が結ばれています。(156ページ)

「見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい。」

‘You must be the change you want to see in the world.’

Mahatma Gandhi (1869-1948)
・。・。・。・。・。・。・。・。・

2014-07-05 14.02.58

 

 

【その他参考】

川村 雅彦「サプライチェーンのCSRリスクに疎い日本企業 (その1):“日本型CSR”に潜むリスク促進要因」(ニッセイ基礎研究所『基礎研レポート』2013-09-17)
http://www.nli-research.co.jp/report/nlri_report/2013/report130917.html

藤井敏彦『ヨーロッパのCSRと日本のCSR:何が違い何を学ぶのか』(日科技連出版、2005年)
http://www.juse-p.co.jp/cgi-bin/html.pl5?i=ISBN4-8171-9160-0

 

芳賀町総合情報館特別展「わが町学校のあゆみ─小学校編─」

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栃木県芳賀郡芳賀町総合情報館で開催中のアーカイブズ関係特別展「わが町学校のあゆみ─小学校編─」に行ってきました。
http://www.town.haga.tochigi.jp/jouhoukan/hakubutsukan/2014tane.html

2014-08-19 15.30.46

【芳賀町総合情報館について】

同館は2008年10月3日に開館した全国初の図書館・博物館・文書館の複合館です。HPの「運営理念」には次のようにあります。

http://www.town.haga.tochigi.jp/jouhoukan/riyouannai/uneihoushin/uneirinen.html

「総合情報館は、町民と町が一体となって文化・地域・行政情報資源を収集活用し、社会の急速な変化に十分対応できる、新たな地域創造を図る新世紀芳賀町の生涯学習と文化活動の総合拠点とすることを理念として掲げました」

「規模の小さな単独館を別々に設置しても、いずれも不十分なものとなりがちです。そのため、総合情報館は町民のニーズの変化や情報の高度化にも対応しやすく、一体的に利用することでその利便性を高めることができるとし、機能の集約性をメリットにしています」

【町制施行60周年記念 夏の特別展 わが町学校のあゆみ─小学校編─】

芳賀町では1998年度から小学校区の再編が開始され、それまで9校あった小学校の統廃合が進められ、現在は3校になったということです。総合情報館を所管する同町生涯学習課では、明治期から閉校直前まで作成されていた学校資料の収集を続け、この資料群が今回の展示の基となったといいます。

展示の内容は次の9つの分野の記録で構成されています。

〈学校日誌〉

〈沿革史〉

〈学校一覧表〉

〈寄付の記録〉

〈児童褒賞の記録〉

〈校歌制定記録〉

〈創立周年事業の記録〉

〈戦前期の学校写真〉

〈閉校関係〉

★   ★   ★

館内で配布されている「展示資料概要解説」によると、「学校日誌」は1947年の学校教育法施行規則28条で保存期間が5年間と定められているもので、それを過ぎると廃棄できます。しかし、一年365日、一日も漏らさず書き綴られており、過去の活動が確認できる最も基本的な記録であるため、全ての学校ではほぼ永続的に保存されてきたということです。また、展示されている1919年(大正8年)の「学校一覧表」には、その年の行事欄に「運動会、修学旅行、遠足」といった記載が確認でき、現在小学校で行われている行事は大正年間には始まっていたことも分かります。

戦前期の学校写真に加え、各小学校に残されていた戦後の写真も興味深いものでした。昭和40年代の創立記念の行事の写真には、黒羽織を着用している女性の姿なども確認できました。わたしの母親(1940年生まれ)の世代は、普段の生活ではほとんど洋装になっていたようですが、入学式・卒業式などでは現在よりは和装の女性も多く、いまはほとんど見かけない黒羽織が一世を風靡(?)していたと上の世代の方々から何度かうかがったことがあります。

黒羽織は一つの小さな例にすぎません。しかし、この展示によって、学校記録は学校内の出来事や生徒に関わる情報のみならず、学校を取りまく地域社会に関する豊かな情報を含むことが理解されるでしょう。

期間: 2014年8月2日~2014年9月21日 09時30分から17時00分
(月曜休館。但し、9月15日は開館・9月16日は休館、)

http://www.town.haga.tochigi.jp/jouhoukan/hakubutsukan/2014tane.html

★   ★   ★

同情報館では所蔵する「歴史的な記録(アーカイブズ)」の閲覧、利用が可能です。ただし、

「文書館資料の利用については、ご来館のご予定を含め事前に電話などで必ずご相談ください」
http://www.town.haga.tochigi.jp/jouhoukan/bunshokan/shiryou.html

とHPに明記されています。歴史的な記録にはプライバシーに関わる情報が含まれている可能性もあります。利用にあたっては担当者への事前の連絡を欠かさないようにしたいものです。

<文書館利用案内>
http://www.town.haga.tochigi.jp/jouhoukan/bunshokan/riyouannai.html

■ アクセス ■

JR東日本宇都宮駅からタクシーで30分程度、川口ジャンクションから東北自動車道利用の場合は約1時間30分程度、バスを利用する場合はJR宇都宮駅西口3番乗場から祖母井・茂木方面行に乗車して「芳賀温泉ロマンの湯」バス停下車、徒歩約10分

2014-08-19 17.56.30

JR宇都宮駅前広場の不思議な像

企業アーカイブズと統合報告(Integrated Reporting)

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2014年8月4日の日本経済新聞社朝刊の社告「企業価値を創る情報開示とは:『統合報告』シンポ開催 9月2日」が目にとまりました。
http://www.nikkei.com/article/DGKDZO75186570U4A800C1MM8000/
http://adnet.nikkei.co.jp

統合報告とは国際統合報告評議会(International Integrated Reporting Council) http://www.theiirc.org/ (IIRC)が中心になって進めている企業報告の新しいあり方で、これまで別々に作成されてきた財務情報に関する報告と非財務情報に関する報告(ESG=環境、社会、ガバナンスに関する報告)を統合し、企業の長期にわたる価値創造に関わる情報をより分かりやすく投資家をはじめとするステークホールダーに提供することをめざしたものです。実際に作成される報告書が統合報告書と呼ばれます。

下記のサイトが分かりやすく統合報告について説明しています。

新日本有限責任監査法人 市村清「統合報告」を語るシリーズ(全10回)
http://www.shinnihon.or.jp/services/advisory/ir/column/

野村インベスター・リレーションズ
シニアコンサルタント 佐原 珠美
企業の価値創造プロセスを伝える「統合報告」とは
1)非財務情報の重要性の高まりと統合報告の背景
http://nomura-ir-webtsushin.e-ir.ne.jp/column/integratedreport01.html
2)日本の統合報告の現状と策定のポイント
http://nomura-ir-webtsushin.e-ir.ne.jp/column/integratedreport02.html

これがどのようにアーカイブズと関係するのか?

前回のブログ(奥村健治「企業史としての記録保存と活用」(2006年))で触れたように、2006年の段階で「環境会計という概念のような考え方をアーカイブや記録管理に応用できないか」という意見が記録管理やアーカイブズ関係者の間で表明されていました。

そこで思い出したのが、2012年8月の国際アーカイブズ評議会(ICA)のブリスベン大会でのインネッケ・デセルノIneke Deserno(NATO=北大西洋条約機構のアーキビストでありオーストラリア・モナシュ大学大学院博士課程に在籍中)の発表「レコードキーピング:企業の社会的責任の証拠か?」です。

公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター「ビジネス・アーカイブズ通信」41号(2012年11月6日発行)では次のように紹介しています。
http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20121106.html

「発表はデセルノ氏の博士論文のためのリサーチの途中経過の報告でした。グローバル企業が発行する「サステナビリティ・レポート」は企業が社会、経済、環境に影響を与える活動や決定に関する情報を提供してくれます。記録は企業活動と決定に関する証拠なので、レコードキーピングの原則とプログラムは、サステナビリティ報告業務における重要な要素です。しかしながら現時点では企業は持続可能な活動を支援するために、レコードキーピング・プログラムを使用していないし、さらに重要なことは記録に関わる専門職の人々がこれらの活動に十分に関わっていない点にあります。このペーパーでは、CSRにおける記録管理の役割と、記録がサステナビリティ報告に寄与するものかどうかという問いを検討しています。デセルノ氏はウェブ上で公開されている各社のサステナビリティ報告を基にしつつ、関係者へのインタビューを行い、研究を進めています。

暫定的な結論として、記録の専門家たち、特に企業で働く記録プロフェッショナルは、組織の業務に積極的に関わり、それぞれの業務過程の中に、記録管理・レコードキーピングに必要な要件を組み入れるべきであることを示唆しています。そして、今こそCSRのための効果的なレコードキーピング体制を確立すべき時であると結論づけています。」

わたしもこの発表の場に居合わせました。立ち見が出るほどの盛況ぶりで、アーカイブズ、記録管理関係者が大いに注目する報告でした。

デセルノ氏の問題意識は、グローバル化した多国籍企業が透明性を確保し、信頼しうるサステナビリティ・レポートを作成するためには適切な記録管理が欠かせない、という点にあります。
http://infotech.monash.edu/research/about/centres/cosi/documents/ineke-phd-summary.pdf
(デセルノ氏の博士論文リサーチプロポーザル)

統合報告の議論でわたしが注目するのは、報告作成における記録管理の役割に加え、アーカイブズ機能のもたらす付加価値が非財務情報=ESG情報(企業の長期的価値創造に寄与する)としてより可視化される可能性がある点です。

宝印刷株式会社総合ディスクロージャー研究所編『統合報告書による情報開示の新潮流』(2014年、同文舘出版)46ページにオムロン作成「今後の企業価値の考え方」の図が掲示されています。これによると「非財務指標 見えない資産」には「理念の浸透度」「企業文化の濃さ」「CSR」「ガバナンス」「次世代経営者」といった指標があげられています。(オムロンは2012年からアニュアルレポートに変えて統合レポートを発行しています。)
http://www.omron.co.jp/ir/irlib/irlib_list.html

ビジネスアーカイブズ、企業史料関係者のこれまでの主張、すなわち「企業アーカイブズの利活用は企業理念、企業文化、ガバナンス、CSR・・・といった多様な価値に貢献する」ということが、投資家をはじめとするステークホールダーに理解してもらえる方向に進んでほしいと思います。

なお、以下の点を企業のIR関係の方からご教示いただきました。

《統合報告の導入が近年日本でもさまざまに取り上げられるようになった背景としては、スチュワードシップ・コードや年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)といったものとの関係から日本の機関投資家が、(企業報告)発行体に対してガバナンスをはじめとする中長期的な質問をするようになったこともある。さらに発行体側にもルールを課すためにコーポレートガバナンス・コードといったものの検討も始まっている》

【参考①】

平成26年6月10日 金融庁「責任ある機関投資家」の諸原則
≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~の受入れを表明した機関投資家のリストの公表(第1回)について
http://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20140610-1.html

平成26年8月7日(木)9時30分~11時00分
金融庁 コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議(第1回)議事次第
http://www.fsa.go.jp/singi/corporategovernance/siryou/20140807.html

【参考②】

下記のIIRC関係の動画も参考になります。

Paul Druckman 国際統合報告評議会CEO
「統合報告フレームワークが解決しようとしている課題」
What problem is the integrated reporting framework trying to fix?
2013年4月15日アップロード
https://www.youtube.com/watch?v=n2Qv5L2f-So&feature=youtu.be

斉藤惇 株式会社東京証券取引所グループ代表執行役社長
「ビジネスにおける統合報告の重要性」
2011年1月17日 中国・北京で収録
2011年9月27日アップロード
https://www.youtube.com/watch?v=FJGYUldoWM4&list=UUee53PLVUpXLL5kIsfMw7aQ&index=30

英国チャールズ皇太子
「新しい統合報告フレームワークを支持する」
HRH The Prince of Wales endorses the new International Integrated Reporting Framework
2013年12月5日アップロード
https://www.youtube.com/watch?list=UUee53PLVUpXLL5kIsfMw7aQ&v=BIVWxmqGs9M&app=desktop

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奥村健治「企業史としての記録保存と活用」(2006年)

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企業史料関連論稿の紹介です。

[書誌情報]

著者:奥村 健治(おくむら けんじ)

タイトル:企業史としての記録保存と活用(研究発表,記録管理の社会的責任,<特集>2006年研究大会)

英文タイトル:Preservation and usage of records for a corporate history (Article presented at the annual meeting of the Society, Social responsibility of records management)

雑誌名:レコード・マネジメント : 記録管理学会誌

巻号:(52), 37-42, 2006-12-18

発行者:記録管理学会

Cinii Articles: http://ci.nii.ac.jp/naid/110005717847
(オープンアクセス。本文PDFへのリンクがあり、本文が読めます。)

[目次]

1. はじめに

2. キヤノン史アーカイブ室沿革

3. 史料の収集、保存、利用の基本

4. 業務方針

5. 今後の課題

**********************

2006年5月20日に開催された2006年度記録管理学会研究大会における特別事例紹介を元にした論稿です。冒頭「はじめに」で、キヤノンの企業史アーカイブの基本姿勢は「身の丈にあったアーカイブ」であると宣言しています。その内容は

(1)「安定した運営のために、中長期計画及び日々の業務の判断基準や運用ルールの明確化が必要」

(2)「保存する情報や物品と、保存のためのルール整備が確実になされることで、はじめてその基盤ができ、初めてアーカイブが社内認知され、積極的な運営が可能になる」

(3)「過剰でもなければその逆でもない身の丈に合った品質とそれを実現する経営資源が必要」

とまとめられています。(37ページ)

今から8年前の発表ですが、企業アーカイブズの構築と運営の指針として、多くの企業にとっては今もって追求されるべき事項ではないでしょうか。

論稿本文では続いて、「キヤノン史アーカイブ室沿革」「史料の収集、保存、利用の基本」「業務方針」「今後の課題」が順に述べられています。実際に社内で利用されている(た)「製品管理台帳」、「毎月発行の月次年表」、「歴史的製品推薦リスト」は、社内記録のデータベースのフィールドを考えるのに有用でしょう。

イントラネットによる掲示板GCIP(Global Canon Information Plaza)で情報を社内公開→ストックした後、年表作成を行うというアーカイブ室における業務の流れが紹介されています。

2006年以降の変化を上げるならば、企業情報発信のアウトレットとしてインターネットの割合が高まったことがあるでしょう。その点を除くならば、8年前の論考ですが、企業内記録の保存と活用に関する考え方としてまったく色褪せた感じを受けません。

本文の最後に研究大会当日の質疑応答も収録されています。以下、長くなりますが、引用します。(42ページ)

Q1:
「組織の名称をキヤノン史編集室からキヤノン史アーカイブ室に変えたというのはすばらしいと思います。社史編纂室だとその度に組織がなくなります。その点でアーカイブ室にするというアイデアはすばらしく、他の会社でも同じようにしたらよいと思います。それから保存のコストに苦慮されていることです。これは記録管理学会の皆様に考えていただきたいことですが、企業会計は収入と支出が計上され、保存するコストばかりが問題になり結局捨てろということになる。保存しておくことの会計上のメリットができていないのではないか。数年前から環境会計という概念ができ認められてきた。そのような考え方をアーカイブや記録管理に応用できないのでしょうか?」

A1:
「名和先生の著作権の話でロビー活動が必要だという話がありましたが、役員をはじめ社内に対して、アーカイブの大切さを平易に訴求することが効果を生むと思います。アーカイブに限ることではないのですが、コストのみがかかっているというのではなく、過去の資産を再利用して利益を生んでいることを示すため、アーカイブがどれ位利益に寄与したかというような試みをしてみたことはあります。」(以上、引用)

「役員をはじめ社内に対して、アーカイブの大切さを平易に訴求することが効果を生む」点は引き続き各企業のアーカイブズ担当者が進めていくべき課題だと思います。一方、この8年間での変化には、財務情報のみならず、非財務情報(環境、社会、ガバナンス=いわゆるESG)を企業報告に取り込んでいく動きが目立ってきたことがあげられます。サステナビリティレポート、環境レポート、社会貢献レポートなどです。非財務情報を企業報告に取り入れていくにあたり、アーカイブズや記録管理が何らかの貢献を果たすことができるのではないか、そんなことを考えています。

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