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日別アーカイブ: 2016年1月26日

三宅茜巳「デジタルアーカイブ教育カリキュラムの見直しに関する考察:企業アーカイブの観点の導入」(2014年)

26 火曜日 1月 2016

Posted by archivesstudio in BAA

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This work is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
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岐阜女子大学の三宅茜巳先生(企業史料協議会会員)から「デジタルアーカイブ教育カリキュラムの見直しに関する考察:企業アーカイブの観点の導入」(『デジタルアーカイブ研究誌』2014, Vol.2, No.1, p.17-24)の抜き刷りをご恵送いただきました。

英文タイトル:Reconsideration of a Digital Archive Education Curriculum

国立国会図書館の書誌情報によれば、収録誌『デジタルアーカイブ研究誌』の団体著者標目が日本教育情報学会、出版者がデジタルアーカイブ研究会事務局です。

NDLサーチ
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024612841-00

本論文によると、岐阜女子大学では1994年に発表されたデジタルアーカイブ構想に呼応し、デジタルアーキビスト育成教育を開始し、以後常にカリキュラムの見直しを行ってきたといいます。近年の企業アーカイブズへの関心の高まりを受けて、本稿は、「従来のカリキュラムに欠けていた企業アーカイブの観点を導入しカリキュラムを見直すことの必要性について考察」(17ページ)しています。

【目次】

1. はじめに
2. 経緯
3. デジタルアーカイブ教育カリキュラム カリキュラム構成
4. 文化の理解
5. 企業文化
6. 企業アーカイブ
企業におけるアーカイブの価値
何をどのようにアーカイブするか
7. まとめと課題

以下では簡単に内容をご紹介いたします。

——————————————————-

【概要】

論文によると、岐阜女子大学では2000年4月に文化情報研究センターを設置し、デジタルアーカイブの開発と研究に着手したという。以後、2001年に文学部内に文化情報メディア学科を設置、2004年に「デジタルアーキビストの養成─文化情報の創造、保護・管理、流通利用を支援する─」が文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラムに採択され、デジタルアーキビスト養成教育のカリキュラムの開発と教育実践に取り組んできた。(2. 経緯)

同大学におけるデジタルアーカイブ教育プログラムは次の3つの分野からなる。すなわち、第1分野「文化の理解」、第2分野「情報の記録と利用」、第3分野「法と倫理」である。この分野に対応し、基礎科目とコア・カリキュラムとして以下の11科目を設定した。「デジタルアーキビスト概論」「文化情報処理」「マルチメディア」「デジタルアーカイブ」「メディアと著作権」「文化情報管理と流通」「文化情報システム」「文化情報メディア」「マルチメディア演習」「情報記録検索演習」「メタデータ情報処理演習」。(3. デジタルアーカイブ教育カリキュラム カリキュラム構成)

次に著者は第1分野「文化の理解」が想定している「各種文化」について検討している。それは「文学、言語、異文化理解、文化財、文化遺産、伝統文化、教育文化、博物館、図書館、文書館、学校教育といった言葉で表現される文化であり、そこに企業文化は含まれていなかった」(19ページ)と振り返っている。このような認識のあり方は、ひとり著者のみにとどまるわけではなく、実は文化庁サイト「我が国の文化政策」(平成26年度)目次を見てもほぼ同様であると本稿は指摘する。目次の細目で唯一「企業」が現れるのは、Ⅰ「文化行政の基盤」の9「企業等による芸術文化活動への支援」、すなわち企業メセナへの言及のみであるという。(4. 文化の理解)

ここから著者は、企業史料協議会創立30周年記念講演として行われた株式会社資生堂名誉会長福原義春氏による「経営者のバイブルとしての企業史料と社史」講演録(同協議会によって冊子化された)を参考に「企業文化」を考察している。著者は福原氏の講演から引き出される企業文化とは「企業内の組織の連帯感、会社の原点、理念、ミッション、記憶、進むべき方向性等を含む会社の風土、雰囲気、行動様式或いは企業のアイデンティティ、存在意義等を総称したもの」(20ページ)であることを述べる。さらに、「企業文化と言うと、企業が提供するオペラやコンサートみたいなものが企業文化だとおっしゃる方があるのですが、そうではなくて、企業が何を感じて、何を目指して、何を蓄積してきたかということが企業文化である、と私は考えています」(21ページ)という福原氏自身の言葉を引いて、文化庁の認識とのズレを指摘する。(5. 企業文化)

著者は福原氏の講演を参考にしながらさらに、「日常的に史料を収集・整理・保存・管理するにはどうすれば良いのだろうか」(21ページ)という問いを立て、そこに企業アーカイブズの必要性を見出している。著者は企業史料協議会が2013年に刊行した『企業アーカイブズの理論と実践』(丸善プラネット)第1章における組織アーカイブズとしての企業アーカイブズ、組織アーカイブズ+収集アーカイブズとしてのビジネスアーカイブズという考え方(と定義)を参照しつつ、「企業文化を体現したアーカイブとは、企業に置ける組織アーカイブだということになる」(21ページ)と指摘する。さらに著者は「企業アーカイブが企業経営にどのような効果をもたらすかを共同で研究」(21ページ)した結果、企業文化を伝える社史は編纂が終わると編纂のために収集された資料はほとんど利用されることもなく「死蔵」されるが、デジタルアーカイブ化し、インターネットを媒介として情報発信にもちいることによってさまざまな効果が期待できるという。だが、それにはひとつの条件が必要となる。つまり筆者によれば、「このデジタルアーカイブの開発のためには、事前に企業アーカイブの存在が必要なのである」(22ページ)。そこから著者は「何をどのようにアーカイブするか」という問題について、前述の福原氏、佐藤正則麗澤大学教授(『社風に応じた企業アーカイブを:歴史資料を現在と将来に活かす』、筆者(松崎)の諸論、また著者のチームによる企業アーカイブ調査に基づいて、「企業アーカイブに何をアーカイブするかというアーカイブの内容に関しては、当該企業のことをよく知っており、資料の価値判断を行い、残すべき資料の選定をする能力を持った人材が必要である。また、アーカイブ化には資料の保存、整理、管理、提供等に関する技術や知識を持った人材が必要である。従って、基本的には社内にアーキビストの能力を持った人材を養成することが重要であると私は考える」(23ページ)と結論づけている。(6. 企業アーカイブ)

以上の考察から、著者は岐阜女子大学における「デジタルアーカイブ教育カリキュラムにも企業アーカイブの観点を導入し、企業アーカイブの開発を担う人材育成につなげることが必要になってきた」(23ページ)ことを導き出している。一方、教育カリキュラムを開発するための企業アーカイブ研究は始まったばかりであり、これを深めることが必要であるとも述べる。(7. まとめと課題)

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【松崎感想】

かねてより岐阜女子大学、また「日本デジタルアーキビスト資格認定機構」によるデジタルアーキビスト養成に関しては、その動向に注目していたのですが、企業における「このデジタルアーカイブの開発のためには、事前に企業アーカイブの存在が必要なのである」という指摘には、心の奥底から共感しました。

一方、企業アーカイブズの構築の具体的なあり方は、業界あるいは個々の企業の事業内容によって変わってくる部分が多々あります。そのような点からすると、効果的な教育プログラム・カリキュラムの開発のためにはさまざまな方面と協力しつつ、研究を深める必要があるわけで、本稿の「まとめと課題」は妥当なものであると思います。今後の前進に大いに期待したいと思いました。

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【本稿へのアクセスについて】

論文受理日は2014年11月20日、と記載されています。

Cinii Articles、J-STAGE、JAIRO等での検索ではヒットしないので、電子化はこれからのようです。国立国会図書館の複写サービスの利用がもっとも手近なアクセス方法ではないでしょうか。

NDL-OPAC
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=find-c&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&ccl_term=001%20%3D%20024612841&adjacent=N&x=0&y=0&con_lng=jpn&pds_handle=&pds_handle=

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【その他重要文献】

株式会社資生堂における企業文化事業、企業アーカイブズの考え方を知るには、本稿で資料として用いられた小冊子、福原義春『経営者のバイブルとしての企業史料と社史』(企業史料協議会発行、2012年)に加え、以下の文献が有用です。

資生堂企業文化部編『創ってきたもの伝えてゆくもの : 資生堂文化の一二〇年』(1993年)

NDLサーチ
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002225940-00

NDL-OPAC
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=find-c&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&ccl_term=001%20%3D%20000002225940&adjacent=N&x=0&y=0&con_lng=jpn&pds_handle=&pds_handle=

本書では企業文化の二つの要素、すなわち知的蓄積であるところの「知的資産」と感性的蓄積であるところの「感性的資産」に関する考察も行われています。それによると、前者は「歴史を持つ企業には必ず見られるもので、営業から研究開発部門にわたる企業における知的創造活動の歴史的集積─すなわち取引契約書や特許をはじめ、新しい製品技術などのすべてをさす」ものとされ、後者は「五官を用いて五感に訴える企業の感性的創造活動から生まれる歴史的蓄積をさす。代表例はポスターやパッケージ制作などの宣伝広告活動によるクリエーティブワークである。もちろん視覚に訴えるばかりがすべてではない。聴覚に訴えるCM音楽、味覚に訴える料理なども、感性的資産とみなしてよいだろう。」(17ページ)

1993年段階で企業アーカイブズ(という言葉を使ってはいませんが)の価値と重要性を的確に認識し、これを管理する社内部門=企業文化部(1990年設置)を立ち上げていたことに驚嘆せずにはいられません。同書には、海外企業におけるアーカイブズの重要な役割に関する説明もみられ(19ページ、354ページ)、同社が企業文化活動に関して広く高くアンテナを張って、取り組んできたことがよく理解できます。

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