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日別アーカイブ: 2016年10月22日

JIIMA/ECM委員会「ECMサミット2016-パネルディスカッション ワークスタイル変革とECM」(2016年10月20日)に参加

22 土曜日 10月 2016

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クラウド, デジタル, デジタルトランスフォーメーション, モバイル, リモートワーク, ワークスタイル, BPR, ECM, EFSS, 働き方

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JIIMA ECM2016

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)主催の「eドキュメントジャパン2016/54th文書情報マネジメントショウ」「eドキュメントフォーラム」に行ってきました。

以下にまとめたのは、2日目(10/20)に開催されたJIIMA ECM(統合文書マネジメント)委員会主催フォーラム「【ECMサミット】ワークスタイル変革とECM 」のレポートです。司会・ナビゲータはECM委員会委員長で株式会社イージフ副社長CTOの石井昭紀さん。石井さんには松崎も編訳者として関わった『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』に関する文献紹介を国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)『情報管理』Vol. 59 (2016) No. 7にご執筆いただきました。

◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

最初にナビゲータの石井氏より、ECM委員会に関する簡単な紹介がありました。ECM委員会とはJIIMAのナレッジ系委員会で年に2回、競合ベンダーによるプレゼンテーションの場としてECMサミットを行っています。さらに、今回のテーマ「ワークスタイル変革=働き方変革」について、ワークスタイルとはそもそも何か、なぜ変革する必要があるのかというお話がありました。それによると近年ワークスタイル変革の必要が言われている理由の一つは、社会の要請。例として「働き方改革に関する総理発言・閣議決定資料」(2016年9月、内閣官房働き方改革実現推進室)が上げられていました。世の中で提示されている解決策、展望にはテレワーク、リモートワークがあります。

関連するキーワードは

テレワーク支援
会議システム
ペーパーレス
グループウェア
オフィスデザイン

などです。石井さんによると「テレワークやリモートワークは新しい話題ではない、なぜそれが今また求められているのかというと、

・近年の技術的変化。コミュニケーションのデジタル化
・モバイルを含めた通信環境の整備、デジタルデータは場所に依存しない
・ボーンデジタルな情報の増加、業務に必要な情報はどんどんデジタルになっている

といった最近の急激な環境変化がある」からということでした。

これに続いて、ECMを扱うベンダー4社のパネリスト(日本IBMの三ツ矢さん、ハイランドソフトウェアの金井さん、オープンテキストの市野郷さん、富士通総研の小林さん)から、

◎ワークスタイル変革をどうとらえるのか
◎成功要因
◎利便性
◎失敗例、注意点

に関してお話がありました。下のメモは松崎が聞き取った内容です(各発言者名は省略)。

——————————————

◆パネルディスカッション「ワークスタイル変革とECM」◆

◎ワークスタイル変革をどうとらえるのか

・(自己紹介)ECM実現のためのソフトウェアの営業、開発に携わる。会社としてのグローバルなミッションWork place as a mission がある。それは「生産性向上」「能力向上:トップタレントを引き留める」「場所の提供」。これらの実現のためのツールとしてITがある。

・会社がやってきたこととして、柔軟な働き方の導入がある。「働く時間の柔軟性」「働く場所の柔軟性」。オフィスには固定した席をもたずに、キャビネットだけ。2009年ぐらいからホームオフィスも導入している。

・コンサルタントや営業など顧客の近くで作業する社員はモバイルワーカーで、新橋や品川などにサテライトオフィスを持っている。チームミーティング以外はそこで働くことも多い。結果を出してください。

・一定の勤続年数がありある程度信頼できる人は在宅で勤務できる(eワーク、ホームオフィス)。社員全員がオフィスに出勤した場合、全員が座ることのできる席数はない。

・(自己紹介)本社はアメリカ、創業25年。自分は営業、営業推進等に従事。自分自身もテレワークをしている。自宅で仕事。ワーキングマザー。オフィスも必要があれば行くが、基本は家。上司はシンガポールにいる。話すときはメールやチャットなど。

・「ワークスタイル変革」にはいろいろな定義がある。一つの定義はICTの観点を駆使して働くこと。

・ワークスタイル変革は新しいことではない。これまでも議論されてきた。

・これまでの顧客の要求は定型業務の効率化などであった。いまの状況はオフィスで働いているのと同等の生産性を確保すること。

・ワークスタイル変革に関する会社の解釈は「情報の一元的管理」つまり単一のエンタプライズ情報管理プラットフォームで企業内のさまざまな文書情報を管理することと結びついている。「キャプチャ、コンテンツ管理、既存システムとの連携」「単一のセキュアな情報基盤、プラットフォーム上で管理」「ワンプラットフォームの推進」「情報管理基盤の提供」

・ワークスタイル変革とワンプラットフォームの関係は? 「外にいても担当者に連絡しなくてもいい。必要な情報を見たいときに見ることができる。そういうシステムを提供すること」。

・日本だけではなく他国でもワークスタイル変革は必要なのか? アメリカでは10年、15年前から議論されている。自分の会社は多国籍で業務しているので、ある意味で今に限った話ではない。本社のあるアメリカではリモートオフィスなどはずっと前から使われている。

・(自己紹介)会社はカナダに本社がある。全文検索テクノロジーからビジネスを立ち上げた会社。全世界で1億人ぐらいがユーザー。フォーチュン500社のうち90パーセントが利用している。日本国内にグループ会社がある。

・オフィスにいなくてもビジネスができる。

・ワークスタイル変革をECMベンダーとしてどうとらえるか? CEO&CTOは「デジタル・トランスフォーメーションに備える必要がある。ITを使う、ITの浸透によってわれわれの生活をよい方向に変化させていく」、そういうことを言っている。

・日本国内でもAI(人工知能)、VR(バーチャルリアリティ)、IT技術を自社のビジネスモデルに組み込んでいく、そういう変化が起こりつつある。

・デジタルトランスフォーメンションへのドライバーとしては、ワークフォース(従業員)の変化やデジタル世代の顧客の登場がある。ワークフォース変化とは、つまり人材の確保にある。

・デジタルトランスフォーメーションとITの利活用はどう違うのか?

・(自己紹介)会社はメーカーのシンクタンクで自分はコンサルティングを行っている。

・ワークスタイル変革をどうとらえるか?
わかりやすく。特定の業務を変えていく=BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)
共通の部分を変えていくことがワークスタイル変革
定型的な業務の手順を変えて効率化して、価値を生む=BPR
非定型的な仕事を最適化して、イノベーションを生み出していくことが働き方変革
ホワイトカラーの働き方は非定型的な仕事である。この部分を変えていくことがワークスタイル変革

・グローバルで働いているところからワークスタイル変革が始まったのではないか。

・日本はコンシューマ(消費者)としてのデジタル化が先に進んだ。仕事の仕方のほうの変革は後から。

・ECMのツールを使いこなせないと働き方の変革はできない。ECMはインフラになる。

・コンサルタントの立場はビジョンを作ることとルールをつくる(人事、評価制度、会議の仕方、働く人の意識engagementなどに関わる)。

・東京証券取引所は経済産業省とともに健康経営銘柄を指定している。そのほかに健康経営優良法人ホワイト500という制度も立ちあがっている。ワークスタイル変革のポテンシャルを図る指標などもある。

◎成功要因は?

・フリーアドレス、インフラ、モバイル

・意識改革が一番強力な要因

・ワークスタイルのオンデマンド変革。自分の会社は日本では在宅が4%、世界平均は12%

・顧客と接触する職種の場合、数字が上がっていないでオフィスにいると物理的にオフィスを使えないようにする、というようなこともありえる。この部分は心の健康問題とも関連してくる。

・自社の場合、社内オフィスに固定席のある社員は日本法人30%、全世界平均9%。アメリカはホームオフィスが中心。

・ワークスタイル変革を成功させるにはワンプラットフォーム情報基盤が必要。昔はペーパーレスが言われていたが、いまは精神的な労働環境の整備に重点がある。そのためににはツールが必要。ワークスタイル変革が言われる要因の一つには、ECMの利用がある。

・オフィスの外にいても必要な情報にアクセスできるようにして生産性向上。

・顧客1万5000社からの問い合わせを、世界各国のサポートチームが記録する。そして問題解決策を提示する。

・日々発生するさまざまな問題を一元的に管理し、案件にかかわる情報を360度すべて把握する。

・一つの例であるが、アメリカで問題発生というケースで、ツールを使って東京のスタッフが過去の情報を検索する。そういうケースマネジメントがある。

・次世代ECMは? 例えばEFSS(Enterprise File Synchronization and Sharing)などがある。

・現在の文書管理の目的は”ペーパーレスの実現”からもう一段先に行っている。

・以前のECMに求められていた目的は、「ペーパーレス」「コスト削減」(「物理スペースの削減によるコスト削減」)。今は紙にとらわれないことが働き方変革につながる。

・成功要因はビジネスモデルの変化にある(企業のあり方、今の仕事の生産性をどのように高めていくか)。

・ITの利活用とデジタルトランスフォーメーションはどう違うのか? 東京証券取引所は経済産業省とともに上場会社のIT経営銘柄を決めている(ROI8パーセント以上の会社)。ITを使っていまのビジネスモデルをよりよいものにしていくのがビジネストランスフォーメーション。

・コンサルの現場では「成功とは何か」を一番初めに定義する。(1)(2)は共通。ビジネスとその変革の基盤。本当に定着するかが(3)。
(1)電子、デジタルで仕事を行う環境をつくり、新しいコミュニケーションによる出会いによって、新しいイノベーションを創出する。
(2)会社の仕組みと制度で情報を守る。
(3)使いやすさ、利便性があるかどうか。現場の人に実感してもらう。不平不満を吸収する仕組みがあるか。

◎利便性に関して

・自社ではECMは営業ではあまり大きく活用されていなかったが、昨年他社と提携してセキュリティが充実した。また提携先の製品は使い勝手がよい。

・ECMを情報のハブとして利用し生産性を高めている。例えばCRM(customer relationship management)をハブとして利用し、さまざまな業務に利用することによって利便性が生まれる。

・例えば請求書・契約書を単に管理するだけでは使いづらい。コンテンツを業務プロセスに紐づける(コンテキスト)。するとそれによって価値が生まれる。業務プロセスとつなげることは利便性を生む。

・機械ができることと人ができることをはっきりさせる。例えば領収書電子化のみならず、請求書をスキャンしたらそこから自動的に流れていくような使い方が最近のECM。

・今は非定型の業務での文書作成も作成時点から作成からデジタル。アイデアが生まれた時から全部デジタル。そういうツールの管理が必要。さまざまな業務プロセスをうまく連動しながら、うまくつなげることが利便性をもたらす。

◎失敗例、注意点

・組織替えなどあったりしたときは、リモートワークばかりでなく、上長に顔を見せるなど人間的な接触も大事。心情的なところを考慮したほうがいいときもある。

・ECMはツールなので、それだけ導入しても成功にはつながらない。ワークスタイル変革は会社にいる人もリモートの人と同じように、全社として取り組むべきこと。そのためにはトップのコミットメントが大事。

・一気に何かを変えるのは難しい。明確な課題をもっているところを優先して、成功を実感しながら進めることが大切。働き方に対するカルチャーを改革していく

・失敗例には「タブレットを全社的に導入したが活用方法がわからない」というような例がある。新しいものを配るとワークスタイル変革のような気になるが、ちょっと違う。ワークスタイル変革とは人材確保。ECMだけでは難しい。

・オフィスでないとできないこと、外でないとできないこと、家でもできること、そういうところを考えることが大切。自社ではソフトウェアでできることを考えており、今回展示会にブースを出している。ECMでワークスタイルを変えていくのをデモしている。

・トップダウンで大金でシステムを導入して使われないのが失敗例。現場に寄り添うことが重要。グループ会社と一緒になって、ビジョンの設定をデザインしている。そこにどういう人を引き込むかを考えている。現場で普及してリーダーになってもらう。


現用記録の管理からアーカイブズの管理を統合的に考えるレコードキーピングは記録文書の作成段階がスタートです。現用記録文書の管理はどうなっているのか、とくにITの観点からは何が問題になっているのかを勉強しようと参加したのですが、、、 むしろアーカイブズの側の課題を認識することになりました。テレワークやリモートワークが普通となった場合、これまでフェイス・トゥ・フェイスを前提として考えられていたやり方というのは有効でなくなってしまうかもしれません。自社の歴史に関わるコンテンツは最近は多くの企業で社内イントラネットに掲載されることが増えてきていますが、モバイルが基本の働き方になった場合、デバイスによる最適化のようなことにもっと注意を向ける必要があるかもしれません。さらに、業務への利用(顧客に対する自社の歴史・ヘリテージ関係のプレゼン)を考えてみた場合、アーカイブズ資料やコンテンツを管理するシステムを、全体のシステムのサブシステムとしてハブとなるシステムに結びつけたほうがよい、というような議論ができるかもしれません。

パネルディスカッションに対するわたしの感想は、ECM専門の方々の感想とはだいぶ異なった感想であると思われます。しかし、ワークスタイルの話はこれまでアーカイブズ関係の会合で話題になったことはなかったので、非常に興味深いものでした。

後日、JIIMA ECM委員会のポータルサイトに当日の資料が掲載されるというアナウンスがありました。http://www.ecm-portal.jp/

高千穂大学公開講座「社史の魅力」(2016年10月15日)

22 土曜日 10月 2016

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current record, 現用記録, 社史, shashi, takachiho

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高千穂大学(東京都杉並区)と杉並区教育委員会が共催の公開講座「社史の魅力」(全4回)の最終回に参加しました(2016年10月15日)。
http://www.takachiho.jp/public/kouza/extension.html
この日は次の2つの講義がありました。

(1)「経営史研究者による会社史執筆に関する構造的問題」
フェリス女学院大学国際交流学部准教授 齊藤直先生
http://researchmap.jp/read0078165

(2)「社史の魅力」
高千穂大学経営学部教授 大島久幸先生
http://researchmap.jp/read0195636/

齊藤先生の講義はこれまでの社史との関わり、社史執筆を振り返りながらの自己紹介に続き

1 はじめに
2 研究者による社史執筆の状況
3 社史制作をめぐる企業と研究者
4 研究者による社史執筆をめぐる問題
5 問題を解決するために
6 おわりに

という内容構成でした。講義後お話する機会をいただけましたので、発表内容を今後文章化して発表していただきたい、とお願いしました。

大島先生の講義は「社史とは何か」というお話からスタート。以下、大島先生のお話を松崎が聞いた限りでまとめました。


社史とは会社が会社の企業の責任でもって刊行する自社の歴史に関する文献、通常の書籍の流通ルートに乗って流通するものではない。そのため、入手が困難。

高千穂大学(今年で創立113年)では1990年に商学部経営学科の設立記念事業として社史コレクション事業をスタートさせた。会社の情報を社会に残していくには社史が一番手軽なツール、会社のことを知る唯一の貴重な情報源。現在高千穂大学には6000冊以上のコレクションがある。このコレクションに関する情報を使って統計をとってみたところ、巷間言われているような「日本は社史大国」という認識は必ずしも正しくないのでは、と考えられる。日本が「社史大国」といえるのは、1980年~90年代にかけてではないか、それも本当にそうかどうか、これからどうなるかはわからない。最近の年間刊行点数は50冊程度とみられ、これは深刻な事態だし、だからこそ社史を大切にしたい、何かできないか、と思う。

ちなみに社史は利用して、蓄積していくとある一定の価値を持つ資産と考えられる。古書店に行くと古い社史ほど価格が高い(入手しにくさと関係)傾向がある。経営史学者の由井常彦先生によると「製品別原価が載っているととても貴重である」。

一方、歴史研究者は研究に利用した資料が一次資料でないと評価されない(※松崎注:ここでいう一次資料とは、図書館司書が言う一次資料とは異なり、編集・刊行される以前のナマの資料を指す)経営史の場合一次資料とは、会社の経営記録、営業記録など。現在の文書記録の作成はほとんど電子的に行われ、イントラネットやファイルサーバにある記録(データ)はアーカイブとして蓄積されるのではなく、上書き更新されていく傾向があることを考えると、経営史を研究・叙述するための一次資料はどんどん消えて行ってしまっている。今後会社の歴史を知るための手がかりは社史ぐらいかもしれない。とするならば残すべきなのは社史かもしれない。

日本には大きな社史コレクションを所蔵する機関がいくつかあるが、会社史を一番残してきたのは経営史学会。同学会では設立30年記念として『日本会社史研究総覧』を出版している。会社史は学術的にも価値を持つ。その場合優れた社史とは何か、という話になる。優れた社史とは、次の6つの基準で評価できるといわれている。

優れた社史とは?
1政策の目的と達成
2実証性と公開性
3事業内容を説明されているかどうか
4歴史の流れを読み取れるか
5企業主体の叙述か
6マイナスな出来事も書かれているか

今回の公開講座「社史の魅力」の講師陣のお話から、次のような課題が見えてきた。

・社史執筆に際して資料を集めることに多大な労力を要する。これは社史編纂における最大の障害
・残された(そして社史編纂のために集められた)資料から経営の内容を描きだすことは困難である。「優れた社史」と言われている社史を発行した企業においても、経営資料が断片的であることがままある。

傾向としては、保険会社や銀行などの金融機関は訴訟リスクなどもあり、それを自覚しており、また余裕もあるのか記録は残されている。一方、流通系企業の記録の残存状況は芳しくない。恒常的に記録を残す文化が日本にはない。そして社史編纂の時だけは一所懸命とにかく集める。だがしかし、集めた資料からだけで全体を描くことは難しい。ある流通系メーカーでは意思決定のための幹部レベル会議の資料はパワーポイント資料のみで、パワーポイントに乗せる情報量も少なければ少ないほどよいと思われているため、これをもとに社史を記述するためには、関係者にヒアリングして、資料の意味を理解しなければならなかった。

現代の資料は紙の資料であってもチープ、情報量が豊かではない。優秀会社史賞本選考に残るような優れた会社史を作ったところでもやはりそういう状況である。残すことにはコスト(金利など)もかかる。

企業記録は残るのかどうか。社史刊行後資料が整理されてしまうことがある。あるいは刊行を機に残す制度や機関が作られる場合もある。イントラネット上でやり取りされる企業記録は、上述のように上書きされてしまう結果、そもそも記録が残らない。そして、今現在作成され業務で利用されている記録は、紙の資料としても残されない。社史執筆にかかわった先生方の研究室に残った資料は図書館も引き取ってくれない。さらに会社が消滅した場合、ウェブサイトも消滅、記録は消えてなくなってしまう。

公開講座の2回目に講演された帝国データバンク史料館高津館長のお話では、創業100周年を迎える509社に対するアンケートを行ったところ、何らかの記念の催しを行う会社が全体の7割、そのうちの7割が社史の刊行、さらにそのうちの7割は社史刊行に準備にかける期間は3年以内。歴史的資料の管理をしている会社が36%、管理していない会社が6割以上、「管理するような資料はもっていない」と回答した会社が5割以上という結果であった。高津館長のお話では、「企業博物館」には定義がないため、企業博物館のデータをとるのは難しいのだが、会社の歴史的資料を残す点では一種の希望といえる。社史編纂のために集めた資料を整理して、社史刊行後に博物館を作った会社を調査したところ、電力会社など公共性が高いところは企業博物館を作って資料を残している。

かつては担当者が自宅に持って帰ったりしたことで逆に資料が今日に伝わった、というようなこともあったが、現在は会社のパソコンに個人のUSBを挿したらコンプライアンス違反になる時代なので、個人の熱意のようなものによって資料が残ることは困難である。

橋本寿朗先生の1998年の論文では次のようなことが指摘されている。
・保存に関する文書規定はずさんだが、にもかかわらず日本の大企業は資料をかなりよく残している。
・資料を読む場合の2つの問題点。
(1)日常の記録が残されない
(2)企業活動の解明に必要とされる情報の一部(下の下線部分)しかわからない

企業環境の認識→経営課題の自覚→事業目的→事業構想→プラン→意思決定→実践→結果

不明な部分は関係者にヒアリングして聞きとることなどもある。その他社史編纂担当者の個人的熱意で残す(ただし担当者の負担が大きい)くらいしかない。史料館を作って残すというオプションを選択するところも少ない。

資料の収集、整理、利活用として自分も関わった例に、神戸大学と滋賀大学の例がある。滋賀大学の場合、伊藤忠商事が伊藤忠兵衛記念館で新人研修を行うなど、歴史資料に対する社内認知度向上にまで踏み込んだ活動を行っている。

会社史が大事であることを広めていくのが大切。


完全ではありませんが、以上のようなお話でした。

大島先生には社史について、また企業資料について下記のような著作をお持ちです。

「記録は誰のものか、海の向こうの史料を訪ねて」帝国データバンク史料館『別冊MUSE 2014』(2014年)
http://www.tdb-muse.jp/info/2014/09/muse2014.html
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I025838959-00

「基調講演 社史からアーカイブズへ」企業史料協議会『企業と史料』第10集(2015年)
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I027497505-00

その他大島先生の著作は下記をご参照ください。
http://iss.ndl.go.jp/books?rft.au=%E5%A4%A7%E5%B3%B6%E4%B9%85%E5%B9%B8&search_mode=advanced
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22402028/


大島先生は、何十年か後にいまの時代について、社史に書こうとしても記録が残っていない可能性がある、という点も強調されました。この点は私も大いに共鳴するところです。

一方、先生のお話では資料整理に経営史研究者が協力して、大学という機関で所蔵していくことが企業資料保存のひとつの有力なオプションではないか、ということでした。この点の評価は難しいと思います。現在学習院大学客員教授・元日本経済新聞社編集委員の松岡資明氏の著作『アーカイブズが社会を変える』は、著名エコノミスト大来佐武郎氏関連資料がかつて大来氏が学長を務めた大学によって廃棄されてしまった事例を上げて(92ページ以下)、「大学は『危ない場所』」という節を設けて論じています。大島先生のお話にもあったように、これまでの、そして現在においても、日本には組織的にアーカイブズ資料を残す仕組みが整っているとは言えず、資料保存は多かれ少なかれ、熱意ある個人の力に負っている状況です。これは決して望ましい事態とはいえません。アーカイブズ資料の保存のしくみと保存資料が社会のインフラになるような、そういう方向をこそ目指すべきではないでしょうか。

この点をさらに推し進めると、「社史は貴重な情報源、日本では組織アーカイブズとして記録を残すような仕組み・文化はないのだから、現実的な対処方法として、とにかく社史を残そう」という考え方に賛同しつつも、やはり目指すべきは作成からアーカイブズに至るまでの記録文書・記録情報の体系的なマネジメントであろうと考えます。なぜならば、記録保存、資料保存、文書保存はそれ自体が究極的な目的ではないからです。記録をきちんとマネジメントすることは業務プロセスの変革に結びついています。つまり、記録文書のよりよいマネジメントは組織のありようをよりよいものとし(企業であればより高い生産性、よりよいガバナンス、企業文化の継承)、そのことによって社会に価値を生み出していくからです。

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