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ARMA東京支部の会誌『RIM Journal』第29号に掲載の2015年度の総会併設セミナー講演録を読みました。同号の目次は、ARMA東京支部理事のわたなべ健さんがブログで紹介されています。

講演者は弁護士の牧野二郎先生、タイトルは「電子記録化を成功させるための新たなポイント:ファースト・ワンマイル問題」です。

講演録によると、講演ではまず電子化に関する政府の基本政策を確認しています。平成25(2013)年6月14日に閣議決定され、昨年(2014年)6月24日の閣議で改定され、さらに本年(2015年)6月30日の閣議で改定された「世界最先端IT国家創造宣言」です。講演では最初の宣言の「Ⅴ. 戦略の推進体制・推進方策 3.規制改革と環境整備」 の次の部分が講演スライド3に引用されています。

「現行制度は、インターネット普及以前のアナログ社会を前提に構築されたものである ため、時代の変化に合わせ、デジタル社会を前提とした改革を実行する必要がある。こ のため、IT の利活用を阻害している原因を明確にした上で、優先度の高い課題(規制・ 制度等)を解決するために、一点突破の精神で、集中的に取り組むこととする 」

このような基本政策の下、現在進行中の改革として、下の8つの点を上げています。(講演録27ページ掲載のスライド4参照)

1.会社法改正(平成26年改正・27年5月1日施行)

2.平成27年度税制改正大綱(平成27年1月14日閣議決定)における、これまでの税関係書類の電子化制限(3万円まで)の撤廃、契約書、領収書等のスキャナデータの保存推進など

3.電子帳簿保存法関連法令(施行規則)改正、電子帳簿保存法施行規則3条5項ロ、その他の改正等

4.番号法(マイナンバー法)運用開始

5.個人情報保護法ガイドライン(経済産業省)改定(平成26年12月12日)

6.個人情報が「営業秘密」に該当する方向性の提示と不正競争防止法関係で「営業秘密管理指針」が改定(平成27年1月28日全部改定)

7.個人情報保護法の改正案の閣議決定(3月10日)、個人情報の明確化と、個人データの匿名化による本格的データ解析、データ利用の推進等の動き

8.不正競争防止法改正

各項目の詳細な説明に続き、電子帳簿保存法施行規則改正のポイントとして財務省令36号に定められている適正事務処理要件を上げています。

四  当該国税関係書類の作成又は受領から当該国税関係書類に係る記録事項の入力までの各事務について、その適正な実施を確保するために必要なものとして次に掲げる事項に関する規程を定めるとともに、これに基づき当該各事務を処理すること。
イ 相互に関連する当該各事務について、それぞれ別の者が行う体制
ロ 当該各事務に係る処理の内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続
ハ 当該各事務に係る処理に不備があると認められた場合において、その報告、原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制

この適正事務処理要件とは「何を対象とする、どのような体制か」(講演録35ページ、スライド6参照)の説明に続き、会社法改正の概要、会社法改正のポイントが上げられています。詳しい紹介は省きます。ここまでがいわば本講演のある意味ではイントロダクションにあたります。

そこで、講演のメインテーマである「ファースト・ワンマイル問題」とは何か、です。講演録39ページ、スライド12が端的に語っています。それは「制限・障壁はなくなったのに企業内デジタル化が進まない!!」ということでしょう(講演を実際に聞いていないので、確言はできないのですが、講演録を読んで行くとそういうことだと思われます)。そして、先に上げた財務省令36号で電子帳簿保存に関して紙ではなくデジタル化が容認され、「9月30日からは申請するとすべてデジタル化が出来ます。デジタル化して、そして検査をしてから紙を捨てる。このルールだけ守って行けばデジタルデータ化文書、PDF等で一気通関システムが完成するはず」(40ページ)ですが、果たしてこのシステムがうまく動くのか、と言う点が問題視されています。

さらに講演ではこのファースト・ワンマイルを「システム段取り」とも表現し、次のような指摘が続きます。「アウトプットに必要な情報が適格にインプットされていますか、要するにこのシステムで何が実現出来るかということを分かっていますか」、「必要な情報を適格に入れるためには、客観的な事実、正確な把握、正確な標記、正確なインプットが全て必要です。要するに正しい事実を把握しない限り正しいインプットなど無いわけです」、「だからそういう意味で何を入れなければいけないのか真剣に考えなければいけません」(以上、講演録41ページ)。あるいは講演者の事務所ではデータを読み込む前に月別の識別用紙を用いて、データをグループ化するなどの下処理を施すことによってデジタルデータの整理が簡単になった、という例も上げられています(42ページ)。

以上、A4判二段組み22ページにわたる講演をひと言でまとめると、本講演の趣旨は「システムの段取り」を徹底的にできるかどうかが、ファースト・ワンマイル問題の核心部分であり、これがうまくいくことが徹底したIT化、合理化につながり、企業の競争力を生みだすことを可能にする、というものです。

本講演は最近の国のIT政策とそれに関わる具体的な改革内容を知るにはとても有用です。一方、講演者が「システムの段取り」と表現している部分は、レコードマネジメントの側から(あるいはレコードマネジメント的な発想で)言うと、レコード(記録)をどのように分類し、評価選別し、システムに取り込み、検索手段をどうするのか、あるいはどのようなメタデータを用いるのか、といった記録管理システムの設計の話をなさっているものと思います。このことは、見方を変えると、レコードマネジメントの概念はまだまだ一般化していないのであり、それら(分類、評価選別、システムへの取り込み、検索、メタデータ・・・といった語彙)は法律の専門家にとってさえも縁遠いことを示唆しているように思われました。

しかし紙にしろ、デジタルにしろ、レコード(記録)を真に効率的、効果的に管理するには、適切な分類、評価選別、システムへの取り込み、メタデータの付与、検索手段の提供、といったレコードマネジメントのexpertise(専門知識、技術・技能)が必要不可欠です。レコードマネジメントの言葉が、法律の専門家、ITの専門家、あるいは経営者、ベンダー・・・に共有される方向に進んでほしいと思います。

世界最先端IT国家創造をめざすなら、なおさら、です。

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【この定期刊行物の書誌情報に関して(再掲です)】

HPではRecords Information Journal (略称 「RIMジャーナル」)とあります。
http://www.arma-tokyo.org/rimjournal.htm

NDLの書誌情報では
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008915828-00

タイトル:Records & information management journal : the information management professionals
別タイトル:レコード&インフォメーションマネジメントジャーナル
別タイトル:RIM journal
別タイトル:Records and information management journal
別タイトル:RIMジャーナル

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2008-02-27 06.23.07