
This work is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
——————–
地方史研究協議会会誌『地方史研究』第64巻2号(2014年4月)に掲載された「史料保存問題 いわて高等教育コンソーシアム・国文学研究資料館合同講演会『なぜアーカイブズは必要なのか : 文書保存の意義と実態』に参加して」の本文PDFを掲載します。
——————————————-
[書誌情報]
タイトル:史料保存問題 いわて高等教育コンソーシアム・国文学研究資料館合同講演会「なぜアーカイブズは必要なのか : 文書保存の意義と実態」に参加して
著者:松崎 裕子
雑誌名:地方史研究 / 地方史研究協議会 [編]
出版者等:地方史研究協議会
巻号・年月日:第64巻2号・2014年4月
ページ:52-57
ISSN:0577-7542
[参考]
Cinii articles:
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020063513
——————————————-
2013年11月17日(日)に盛岡で開催された講演会は、わたしがこのブログを始めるきっかけになった思い出深いイベントです。当時、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)関東部会運営委員を務めておられた、地方自治体アーカイブズの方から紹介された講演会だったと記憶しています。企業アーカイブズの草分けとも言える虎屋文庫で長年アーキビストとして活躍してこられた青木直己さんの講演に加え、日本経済新聞社でアーカイブズに関する取材・執筆を重ねてこられた松岡資明さんもお話をなさるということで、生まれて初めて盛岡に足をのばしてみることにしました。この日のプログラムは、2013年11月20日のブログ記事に書きました。
わたしは同協議会の会員ではないのですが、講演会会場で前出の全史料協関東部会運営委員の方から『地方史研究』という雑誌に参加記を、と依頼され、お断りしようとしたのですが、押し切られてしまい、書くことになったのが上の一文です。
どのお話もよく準備され、この日のテーマである「なぜアーカイブズは必要なのか」に真正面から取り組んだ講演でした。とりわけ、加藤聖文先生のお話が実に実に興味深いものでした。加藤先生は、わたしが2004年に国文学研究資料館主催のアーカイブズ・カレッジ長期コースを受講した時の先生のお一人です。また、日本アーカイブズ学会の2008年~2009年度の委員の選挙の際に同時に選出されて、2年ほど同学会運営のための委員会でご一緒したこともありました。わたしは、2011年に開催予定の企業資料関係の国際シンポジウム事務局に専念しなくてはいけない、という事情もあったため、同学会委員は1期のみで退任、加藤先生はその後事務局長も担当されて、たいへんお忙しくなさっているご様子でした。加藤先生は戦前の満州関係を中心に数多くの研究論文・著書を執筆されており、アーカイブズ・カレッジの講師陣の中心人物であったにもかかわらず、歴史家、という印象がわたしにとってはたいへん強い方でした。歴史家が歴史資料の保存・利用提供に対して熱心に取り組むのは当然であり、それ(歴史家によるアーカイブズ保存利用活動)は、当時(そして今も)わたしが仕事の中で普及しようとしてきた「企業のアーカイブズは歴史研究のためだけに保存され、利用されるのではない。企業自身にとっても知的資源・資産である」という考え方とはちょっとギャップがあるように思え、「歴史家」のアーカイブズ論にはあまり魅力を感じない状況でした。さらに、一般論として、日本の歴史研究者は資料情報の組織化とその共有には、あまり熱心でない、というようなネガティブなイメージも持っていました。
そして、盛岡での講演を聞いたのでした。加藤先生のお話は、歴史研究のための資料探索のために各地の公文書館を利用するなかで明らかになった、現在の公文書管理体制の不備(歴史家にとっての不便である以上に、現場の職員、利用を求める市民にとっての不便)をご自分の経験に基づいて、具体的に訴えるものでした。そして、これをどうにかして他の人々にも伝えたい、そういう気持ちをわたしの中にもたらしました。結果、このブログ「アーカイブズ工房」の開設に至った、という次第です。
講演後、加藤先生には講演内容をぜひ文章として発表してほしい、と思っていました。そしてようやく今年春、国文学研究資料館の紀要に、盛岡での講演に関連する(講演と同一ではなく、さらに議論を深化させた)論稿「市民社会における『個人情報』保護のあり方:公開の理念とアーキビストの役割」が収録されました。この論文は同館の機関リポジトリに収められ、現在はインターネット上で自由に読むことができます。『地方史研究』掲載の拙稿は、加藤先生ご自身によって書かれたものに遠く及びませんが、わたしにとっては忘れることのできない大切な記録です。
——————————————-


