トーマス・D・クラーク「小規模企業のアーカイブズ」(1949)

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Title: The Archives of Small Business
Category: Research Article
Journal: American Archivist
Issue: Volume 12, Number 1 / January 1949
Author: Thomas D. Clark

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著者はケンタッキー大学歴史学部所属。この論文は1947年12月27日オハイオ州クリーブランドでアメリカ歴史協会(AHA)とSAAが共催した集会での報告。

中小企業(原文ではsmall businessですが、日本語としては「中小企業」が一般的なのでここではこちらを用います)は、人々の日常生活と密接にかかわるもので歴史(アメリカ史)にとって重要であるにも関わらず、これまでそれほど研究されてきていない。中小企業の記録自体の保存も行われてこなかった。中小企業の記録、そしてその歴史とは、経済的な領域ばかりでなく、社会的、政治的領域の研究に不可欠である。さらに中小企業の研究は、産業全体、あるいは大企業研究にも寄与する。

中小企業の記録によって究明が進むであろう分野・テーマ・産業として、農業不安、物価、信用取引、賃金、卸売業者、アヘン・アヘンチンキ・モルヒネといった問題のある医薬品、食品に関わる習慣、木材伐採・製材業、繊維業、包装業、鉱山業・・・を上げ、それらの分野における記録の収集保存利用が憂うべき状況であることを指摘します。

個別の産業や研究テーマに関わる記録保存の低調さに加え、中小企業が大企業に吸収合併されることも記録保存にはマイナスに働いています。

このように、著者は歴史学者の立場から、歴史研究のために、ライブラリアンや企業人と協力しつつ中小企業の記録資料保存に積極的に取り組まねばならないこと、その必要性・緊急性をこの論文で訴えています。

 

「ねんりん」(大日本印刷株式会社CDC事業部年史センター、1972~1988)に見る海外の会社史、海外向け日本企業の社史

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大日本印刷株式会社CDC事業部年史センターが1972年(第1号)から1988年(第30号)まで発行していた小冊子に「ねんりん」があります。
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000030636-00

創刊号(1972年4月発行)第1ページの同社取締役加藤美方氏による「発刊にあたって」には、「この小紙が、みなさま方の年史編集に多少とも参考になり、座右に置かれまして、ご活用いただければ、望外の幸せ」とあります。

「ねんりん」第30号の「『ねんりん』30号までの年輪:総目次を兼ねて」と「総索引」から海外における会社史と日本の社史の相違に関する記事を拾ってみました。

【1】「外国会社の社史」 小林薫(産業能率短期大学教授、経営評論家) 第6号(1973年7月)

日本の社史との違いとして
①海外では10年や20年のスパンでは会社史をまとめない。50年ぐらいのスパンで作る。
②筆者は海外の場合、第三者、あるいは第二・五者ぐらいの(会社との)距離感のある外部のプロに依頼する場合が多い。
③人間史に主眼を置こうとすることが多い。
の三つを上げています。

日本の社史は、「あまりにも中立的、あまりにも超党派(バイバーティザン)、そしてあまりにも、事実列挙に終始したのではなかったろうか」と指摘しています。海外の会社史は押し並べて明確な史観を打ち出しているということのようです。その理由に次の4つの要因を上げています。(原文のママ)

(1) 社史を単にセレモニーやお義理として作成する
(2) 濃厚なPR意識の欠如
(3) 社史担当部門を人事吹き溜まり的なものとして処理する
(4) 日本の企業経営そのものの総もたれ性と、あいまい性の反映

【2】「『海外向け社史』への期待」 中川敬一郎(東京大学名誉教授、経営史学会会長) 第25号(1985年11月)

著者はかねてより日本企業の真の姿を海外の人々に理解してもらうには社史を読ませるのがよいと考えてきました。しかし、海外の人々に社史を読んでもらうのも容易なことではない、なぜならば、海外では著者責任の明白でない刊行物(発行者が企業自身である社史もこれに含まれる)に対する信頼性が低いことが一つ。また、日本の社史がバランスのとれた記述を重視しすぎ、会社の発展のきっかけとなった重要な意思決定の過程とその意思決定にもとづく経営努力にあまり重きを置いていないことにあるとみているようです。

著者の親しい海運経済学者の提言が引用されています。

「有能な海運経済学者を育てるためには、若い研究者にまず海運会社の社史を執筆させるべきである」

年史作成の目的はいったい何であるのか考えざるをえません。

【3】「海外の社史」  第27号(1987年10月)

これは無署名の記事です。【1】の小林薫氏の文章と、米川伸一「社史の国際比較」(日本経営史研究所『経営と歴史』1983年)の二つの文献を参考にした記事です。

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東京・亀戸天神

小冊子「会社史への提言」(日本経営史研究所発行、1979?)

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財団法人日本経営史研究所発行の小冊子「会社史への提言」について記録しておきます。

奥付けがない、16ページほどの小冊子です。発行年月日も不明ですが、「はじめに」の文末に「昭和54年10月」とあります。おそらく1979年発行と推定されます。

「はじめに」によると「この小冊子では、分野の異なる七人の専門家に会社史にたいする期待や意見を率直に述べていただきました。会社史の最も熱心な読者でもあるこれらの方々の提言を、当研究所も真摯に受け止めて、今後の活動に生かしてゆきたいと考えております」という発行の趣旨が述べられています。

目次は以下の通り。数字はページ番号です。

「会社史への提言」目次

はじめに 1 
「社史」再々論 中川敬一郎 2
企業史への期待 土屋守章 4
三つの顔をもつ会社史 羽間乙彦 6
彼我の企業史に想う 米川伸一 8
執筆者としての経験から 柴垣和夫 10
社史雑感 森川英正 12
『日本窒素史への証言』が提起するもの 大野力 14
日本経営史研究所事業案内 16

ユネスコ世界遺産ベルラ(Verla)製紙工場跡

ユネスコ世界遺産フィンランド・ベルラ(Verla)製紙工場跡

国立公文書館によるICA策定「アーカイブズ所蔵機関に関する記述標準」記述実験

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ICAが策定した「アーカイブズ所蔵機関に関する記述標準」に基づいた機関情報の記述実験を行った結果が国立公文書館『北の丸』第46号に掲載されています。

中島康比古・水野京子「国際標準に基づくアーカイブズ所蔵機関情報記述の試み:国立公文書館を事例として」
http://www.archives.go.jp/about/publication/kita/pdf/kita46_p056.pdf

記録資料へのアクセス向上のためには目録情報の記述の標準化のほかに、記録資料を所蔵する機関に関する情報の記述も標準に則ったものであることが望まれます。

上記の記述実験を参考に、日本各地のアーカイブズ、とくに公文書館が、自館の機関情報を標準的なフォーマットで記述する試みに挑戦してほしいと感じました。

(参考)

『北の丸』第46号
http://www.archives.go.jp/about/publication/kita/046.html

「アーカイブズ所蔵機関に関する記述標準」(英語版)
International Standard for Describing Institutions with Archival Holdings (ISDIAH)
http://www.ica.org/download.php?id=1657

ISDIAH 日本語版「アーカイブズ所蔵機関に関する記述標準」
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/isdiah_jpn.pdf

オリバー・W・ホームズ「企業文書の評価と保存」(1938)

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Title: The Evaluation and Preservation of Business Archives
Category: Research Article
Journal: American Archivist
Issue: Volume 1, Number 4 / October 1938
Author: Oliver W. Holmes

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著者のオリバー・W・ホームズはミネソタ州出身。1922年Carleton College卒業、1956年コロンビア大学にて博士号取得。1935年の設立時にNARAに採用される。SAAの設立メンバー。1958年SAAフェロー、1958-59年SAA会長。1972年NARA退職。

この論文では次のようなことを述べています。

歴史家は記録の評価選別に反対するが、記録が非現用となり次第直ちに後世に残すべきものを選別するのは、経済の観点からも記録の原秩序保存の観点からも必要なことである。放置されることによって散逸したり、もともとの秩序が失われた場合、これを復元するには多くのコストがかかる。

人々の暮らしにとってワシントンとウォールストリートは二つの権力の中心地である。民主主義国アメリカにおいては政治に関する記録は広く国民にもたらされるべきであるという考えから印刷されて普及が図られる。しかしビジネスは異なる。ビジネスにおいては記録は関係者のみにとどめ置かれるのがふつうである。その記録も刊行物ではなく、手稿記録であろう。

しかし投資家、従業員、消費者にとって、さまざまな意思決定を行うにあたって企業の記録は欠かせない。

大企業における記録のリテンションと廃棄スケジュールについて特別注意を払う必要がある。いったんスケジュールが出来上がると機械的に記録の廃棄が行われる。州際通商委員会(Interstate Commerce Commission)では蒸気鉄道、電気鉄道、運送会社、水運会社、パイプライン会社、寝台列車会社、電報・電話・電信会社のために古い記録の廃棄規則を公にした。全国電灯協会は1923年に電力会社のために推奨される廃棄コードを発表、全国火災保護協会は「記録の保護」Protection of Records (1935) という貴重なパンフレットを発行している。

不要な記録は企業にとっても歴史家にとっても大体は同じであるが、必ずしも見解が一致しない場合もある。例えば、企業は歴史家よりも通信関係のファイルや経営上の覚書を廃棄するのに躊躇しないけれども、会計記録に関しては非常によく保存している。後者は歴史家にとっては必ずしも必要とは思えない場合もある。 企業に記録保存の大切さを説くために、経営史協会は企業向けに1937年10月、The Preservation of Business Recordsというパンフレットを発行した。

企業は成功するとばかりは限らない。失敗した企業の記録の保存の問題もある。また中小企業の記録の保存は大企業のようにはいかない。こういった企業の記録の整理を経済学や経営学専攻の大学院生にまかせるというアイデアも、ハーバード大学の経営史協会コレクションづくりのひとつの要因である。地域や産業といった単位で共同保存を行ったり、政府への納税者に関する記録という観点から連邦政府の保存機関に記録を委ねるという考え方もあろう。

いずれの場合も、評価選別を賢く行う(intelligent selection)ことが重要である。

いっぽう、SAAはイギリスのCPBA(Council for the Preservation of Business Archives, BACの旧名称、1934年設立)のような役割を果たすことを考えてもよいだろう。CPBAでは記録保存の相談にのったり、保存に適切な外部機関を紹介するといった活動を行っている。CPBAの報告には「企業記録に関する情報は待っていても得られない、カウンシル側が熱心に勤勉に情報収集にあたる必要がある。企業の記録の所有者からの自発的な申し出というのはめったにない」とあり、まさにその通りである。

この論文では企業記録の評価基準に具体的に踏み込むというよりは、保存の意義と企業記録をとりまく状況、保存に向けた考え方が述べられています。が、保存にあたって評価選別が絶対に必要である、という点は最初から最後まで一貫しています。

参考になるデータとして次のようなものが含まれていました。

  • 1870年以降業務の単位が拡大する。
  • 1890年以前は企業記録はすべて製本されて保存され、索引が別に作成されてこれも製本された。
  • 1890年以降、カード索引が用いられるようになった。
  • 1900年以降、記録自体がカード化されるようになった。
  • 1897年ころからカーボンコピーと縦型キャビネットが利用されるようになった。その数年後ルーズリーフバインダーが登場した。

大企業におけるファイリング担当者を file specialists who are the practical archivists of the business world と記述している部分があり、ファイリング担当者が実質的にはアーキビストの役割を果たしているという認識を確認することができます。

[参考]
Title: Oliver W. Holmes
Category: In Memoriam
Journal: American Archivist
Issue: Volume 45, Number 2 / Spring 1982
Author: Walter Rundell, Jr.

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dandelion

BACのビジネスアーカイブズ1日研修講座  続報

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BACのビジネスアーカイブズの1日研修講座が終了しました。(2014年1月22日)

BACのチェアのMike Anson (イングランド銀行アーカイブズ)によるTwitterでの中継があったので、だいたいの様子が分かりました。

1日研修講座用のハッシュタグ#busarchtrain のついたつぶやきをまとめてみました。

http://togetter.com/li/619807

講座の対象者を尋ねてみたところ、アーカイブズ/レコードマネジメントの修士もしくはディプロマをめざす大学院生ということでした。

https://twitter.com/BAC_Chair/status/426409194590576640

詳しい情報がウェブに掲載される予定とのことですので、こちらも楽しみに待ちたいです。

フランス国立古文書学校 L’École nationale des chartes 【訂正】

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2014年1月20日付の投稿「フランス国立古文書学校 L’Ecole nationale des charte」に講演者の大沼さんから訂正が必要な点に関するコメントを頂戴いたしました。コメントは同日付の記事に続けて公開させていただきました。

ありがとうございました。

訂正は以下の2点です。こちらにも1/20のコメント欄からのコピーを掲載させていただきます。

・conservateur
ENCを修了するだけではconservateurの資格は授与されません。その後、ENSSIBやINPといった学校に進み、修了する必要があります。

・専攻分け
ENCの修士課程の1年次には「アーカイブ、図書館、美術史」の3つのコースがあります。
なお、本科であるArchiviste-paleographeにはそのような区分はなく、入学試験時にA、Bの2カテゴリーを選択します(この点は講演でお伝えしなかった部分です)。
前者は特に「歴史と古い言語」を専門とする学生、後者はもう少し多様な関心を持つ学生が対象で、試験の内容が異なります。

制度の違いを理解するのも一筋縄ではいきませんね。

学会誌『日仏図書館情報研究』を楽しみに待ちます。

Merci beaucoup!

辻川敦「地域文書館論」(『「地域歴史遺産」の可能性』所収)を読んで

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神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター編『「地域歴史遺産」の可能性』(岩田書院、2013年)の続きです。

同書所収の「地域文書館論」(辻川敦)もまた、企業アーカイブズ・アーキビストを考える上で参考になる論考でした。

ポイントは2つです。

(1)アーカイブズが社会的認知を受けるために展開されてきた「展示」や「講座」主体の文書館啓蒙普及運動に対して、「まず論じなければならないのは、既存の文書館事業が本当の意味で社会が必要とする公的サービスを十分提供できているのかどうか、必要とされるサービスを提供する努力や、そのために施設やスタッフには何が求められるのかといったことが、本当の意味で厳しく問われ実践されてきたのかどうか、という点ではないだろうか」(同書、386ページ)

(2)辻川氏が館長を務める尼崎市立地域研究史料館はレファレンス・サービスを事業の中心に位置付けています。このサービスを担当する人に求められるのが「文書館学一般への知識・理解とともに、その地域固有の歴史や地域課題、ならびに史料への幅広い知識と理解にもとづく調査・整理・公開能力である」(同書、397ページ)と言います。同じ個所で「市民サービスへの献身的な意識・意欲」といった点の必要性にもふれられています。

企業アーカイブズで求められる人材に関して、現場の方々のお話をうかがうと単に記録資料の専門家であることより、むしろ会社の歴史や社内事情、現在の方針や戦略といったものをよく理解していることが大切である、とうかがうことが多々あります。地域の文書館が必要とする人材と、企業の必要とする人材には、あるレベルでは共通するものがあると考えられます。

 

社史編纂と自治体史編纂の共通の課題を考える─『「地域歴史遺産」の可能性』(岩田書院、2013年)

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神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター編『「地域歴史遺産」の可能性』(岩田書院、2013年)を読んでいます。

目次はこちら。 http://www.iwata-shoin.co.jp/bookdata/ISBN978-4-87294-816-5.htm

「自治体史は専門の研究者と一般の人々との接点となるものである。しかし、その自治体史が、一般の読者にほとんど読まれていないという指摘が以前からしばしばなされている。読まれない理由としては、大部であることや内容が専門的で難解なものになってしまっていることなどが挙げられる。これに対し、近年では自治体史を親しみやすいものにするさまざまな試みもなされている。・・・」(同書105ページ)

これはなんともなじみ深い響きがあります。「自治体史」を「社史」に代えると、そのまま社史・企業史料関係者の文章としてもまったく違和感のない文章です。

アドホックな社史編纂業務から恒常的なアーカイブズ機能の構築へ、というのは企業だけでなく自治体やその他の団体に共通するテーマですね。

本書は序章、終章を含めると全体では3部構成、全23章、5つのコラムからなります。その中で企業アーカイブズに通じる問題を論じているのは、

第Ⅰ部 第4章     自治体史編纂事業の役割を考える     村井 良介
第Ⅱ部 第6章     地域における伝統企業の史料と活用  石川 道子
第Ⅲ部 第1章     「在野のアーキビスト」論と地域歴史遺産     大国 正美
[コラム] 自治体史編さんの果実と「その後」  印藤 昭一

あたりです。

これまでずっと、「草の根文書館」や「在野のアーキビスト論」というのは、市民運動などの記録とその保存・活用に関わるもので、企業アーカイブズとは関係ない、と思っていました。しかし、「アーキビスト専門職確立すべし」という最近の議論は人事・採用・雇用・賃金慣行からすると、日本の企業アーカイブズの議論としてそのまま受け入れることが難しいものです。そのような観点から「在野のアーキビスト論」を眺めてみると、企業アーカイブズ・アーキビストに関わる議論と案外交わるところがあるのを発見し、驚いたのでした。

フランス国立古文書学校 L’École nationale des chartes

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以下の文章は、講演者の大沼太兵衛さんから頂戴したコメントを補足して修正した文章です。大沼さんのコメントは、この文章の後に続きます。(1/25付記)

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フランス国立古文書学校に研究留学された日本国立国会図書館の大沼太兵衛さんの講演「フランス国立古文書学校に研究留学して」 を聴きに行きました。(2014年1月18日、東京・日仏会館)

主催は日仏図書館情報学会

配布用パンフレット(PDF)
 http://www.sfjbd.sakura.ne.jp/03_main/sub/pdf/oonuma.pdf

最初に大沼氏の自己紹介がありました。2006年から国立国会図書館職員、2011年から2013年まで在外研究としてフランスへ研究留学。

フランス国立古文書学校(École nationale des chartes: ENC)は通常の大学とは異なるグランデコール(複数だとグランゼコール)という一群の学校のひとつだそうです。大学にはバカロレアをとれば入学することができますが、グランデコールはたいへん厳しい競争で選ばれた人たちだけが入学を許されるということです。

フランス国立古文書学校の場合は、現在ジャン・ミシェル・ル二オー校長以下、学生が150人余り、教授13人が在籍。卒業後は半分は図書館、1/4がアーカイブズ、その他がミュージアム、研究者への道を進みます。

現在の学校は1987年10月8日の政令n’87-832第3条に基づいて運営されています。

ENCの修士課程の1年次には「アーカイブ、図書館、美術史」の3つのコースがあります。(なお、本科であるArchiviste-paleographeにはそのような区分はなく、入学試験時にA、Bの2カテゴリーを選択しますが、前者は特に「歴史と古い言語」を専門とする学生、後者はもう少し多様な関心を持つ学生が対象で、試験の内容が異なるということです。)

資料を扱うための学問的教育に特化しており、実務教育は全く行わないため、卒業後ENSSIB、INPに進学して実務を学ぶ卒業生も存在します。ENCを卒業して、ENSSIBやINPといった学校に進み、それらを修了すると、コンセルヴァトゥール資格を授与されます。これはアーカイブズ、図書館、博物館等の館長など上の方の役職に就くための高級専門資格ということです。

面白いのは、グランデコールは学位授与機関ではないため、ENCに通いつつ、普通の大学にも通って学位取得する人が多いという点です。

そもそもはフランス革命で没収した貴族・教会財産に含まれる文書資料の整理・解読の専門家養成のため、また19世紀前半における「中世」の再評価・ロマン主義的な動きの中から学校設立の機運が生じたということでした。基本的には図書館ではなく、アーカイブズに関する学校であり、かつ学問的な中心に位置するのがフランス中世研究のための資料整理・読解の専門家養成であるらしいことがわかりました。

詳しいことは学会誌『日仏図書館情報研究』に今後掲載されることと思います。

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講演会終了後、日本のアーカイブズ関係者の方々と情報交換しました。欧州とアメリカでは、アーカイブズ・現用記録の管理に対する考え方にかなり違いがあるのではないか、という点が議論となりました。米国ではアーキビスト、レコードマネジャーが専門職として独立するためでもあったのだと思いますが、現用記録管理とアーカイブズ管理が画然と分かれています。一方、欧州ではアーカイブズが現用記録の管理までを守備範囲とすることにさほどの違和感はないようです。実際にサンゴバン社アーカイブズなどの企業では、アーカイブズの専門家が現用記録管理システムを立ち上げた例があることを、同社アーカイブズに関する論文を翻訳してくださった平野泉さんが指摘してくださいました。

サンゴバン社アーカイブズに関する論文は、『世界のビジネス・アーカイブズ』(2012年、日外アソシエーツ社)に収録されています。