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JIIMA/ECM委員会「ECMサミット2016-パネルディスカッション ワークスタイル変革とECM」(2016年10月20日)に参加

22 土曜日 10月 2016

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クラウド, デジタル, デジタルトランスフォーメーション, モバイル, リモートワーク, ワークスタイル, BPR, ECM, EFSS, 働き方

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JIIMA ECM2016

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)主催の「eドキュメントジャパン2016/54th文書情報マネジメントショウ」「eドキュメントフォーラム」に行ってきました。

以下にまとめたのは、2日目(10/20)に開催されたJIIMA ECM(統合文書マネジメント)委員会主催フォーラム「【ECMサミット】ワークスタイル変革とECM 」のレポートです。司会・ナビゲータはECM委員会委員長で株式会社イージフ副社長CTOの石井昭紀さん。石井さんには松崎も編訳者として関わった『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』に関する文献紹介を国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)『情報管理』Vol. 59 (2016) No. 7にご執筆いただきました。

◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

最初にナビゲータの石井氏より、ECM委員会に関する簡単な紹介がありました。ECM委員会とはJIIMAのナレッジ系委員会で年に2回、競合ベンダーによるプレゼンテーションの場としてECMサミットを行っています。さらに、今回のテーマ「ワークスタイル変革=働き方変革」について、ワークスタイルとはそもそも何か、なぜ変革する必要があるのかというお話がありました。それによると近年ワークスタイル変革の必要が言われている理由の一つは、社会の要請。例として「働き方改革に関する総理発言・閣議決定資料」(2016年9月、内閣官房働き方改革実現推進室)が上げられていました。世の中で提示されている解決策、展望にはテレワーク、リモートワークがあります。

関連するキーワードは

テレワーク支援
会議システム
ペーパーレス
グループウェア
オフィスデザイン

などです。石井さんによると「テレワークやリモートワークは新しい話題ではない、なぜそれが今また求められているのかというと、

・近年の技術的変化。コミュニケーションのデジタル化
・モバイルを含めた通信環境の整備、デジタルデータは場所に依存しない
・ボーンデジタルな情報の増加、業務に必要な情報はどんどんデジタルになっている

といった最近の急激な環境変化がある」からということでした。

これに続いて、ECMを扱うベンダー4社のパネリスト(日本IBMの三ツ矢さん、ハイランドソフトウェアの金井さん、オープンテキストの市野郷さん、富士通総研の小林さん)から、

◎ワークスタイル変革をどうとらえるのか
◎成功要因
◎利便性
◎失敗例、注意点

に関してお話がありました。下のメモは松崎が聞き取った内容です(各発言者名は省略)。

——————————————

◆パネルディスカッション「ワークスタイル変革とECM」◆

◎ワークスタイル変革をどうとらえるのか

・(自己紹介)ECM実現のためのソフトウェアの営業、開発に携わる。会社としてのグローバルなミッションWork place as a mission がある。それは「生産性向上」「能力向上:トップタレントを引き留める」「場所の提供」。これらの実現のためのツールとしてITがある。

・会社がやってきたこととして、柔軟な働き方の導入がある。「働く時間の柔軟性」「働く場所の柔軟性」。オフィスには固定した席をもたずに、キャビネットだけ。2009年ぐらいからホームオフィスも導入している。

・コンサルタントや営業など顧客の近くで作業する社員はモバイルワーカーで、新橋や品川などにサテライトオフィスを持っている。チームミーティング以外はそこで働くことも多い。結果を出してください。

・一定の勤続年数がありある程度信頼できる人は在宅で勤務できる(eワーク、ホームオフィス)。社員全員がオフィスに出勤した場合、全員が座ることのできる席数はない。

・(自己紹介)本社はアメリカ、創業25年。自分は営業、営業推進等に従事。自分自身もテレワークをしている。自宅で仕事。ワーキングマザー。オフィスも必要があれば行くが、基本は家。上司はシンガポールにいる。話すときはメールやチャットなど。

・「ワークスタイル変革」にはいろいろな定義がある。一つの定義はICTの観点を駆使して働くこと。

・ワークスタイル変革は新しいことではない。これまでも議論されてきた。

・これまでの顧客の要求は定型業務の効率化などであった。いまの状況はオフィスで働いているのと同等の生産性を確保すること。

・ワークスタイル変革に関する会社の解釈は「情報の一元的管理」つまり単一のエンタプライズ情報管理プラットフォームで企業内のさまざまな文書情報を管理することと結びついている。「キャプチャ、コンテンツ管理、既存システムとの連携」「単一のセキュアな情報基盤、プラットフォーム上で管理」「ワンプラットフォームの推進」「情報管理基盤の提供」

・ワークスタイル変革とワンプラットフォームの関係は? 「外にいても担当者に連絡しなくてもいい。必要な情報を見たいときに見ることができる。そういうシステムを提供すること」。

・日本だけではなく他国でもワークスタイル変革は必要なのか? アメリカでは10年、15年前から議論されている。自分の会社は多国籍で業務しているので、ある意味で今に限った話ではない。本社のあるアメリカではリモートオフィスなどはずっと前から使われている。

・(自己紹介)会社はカナダに本社がある。全文検索テクノロジーからビジネスを立ち上げた会社。全世界で1億人ぐらいがユーザー。フォーチュン500社のうち90パーセントが利用している。日本国内にグループ会社がある。

・オフィスにいなくてもビジネスができる。

・ワークスタイル変革をECMベンダーとしてどうとらえるか? CEO&CTOは「デジタル・トランスフォーメーションに備える必要がある。ITを使う、ITの浸透によってわれわれの生活をよい方向に変化させていく」、そういうことを言っている。

・日本国内でもAI(人工知能)、VR(バーチャルリアリティ)、IT技術を自社のビジネスモデルに組み込んでいく、そういう変化が起こりつつある。

・デジタルトランスフォーメンションへのドライバーとしては、ワークフォース(従業員)の変化やデジタル世代の顧客の登場がある。ワークフォース変化とは、つまり人材の確保にある。

・デジタルトランスフォーメーションとITの利活用はどう違うのか?

・(自己紹介)会社はメーカーのシンクタンクで自分はコンサルティングを行っている。

・ワークスタイル変革をどうとらえるか?
わかりやすく。特定の業務を変えていく=BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)
共通の部分を変えていくことがワークスタイル変革
定型的な業務の手順を変えて効率化して、価値を生む=BPR
非定型的な仕事を最適化して、イノベーションを生み出していくことが働き方変革
ホワイトカラーの働き方は非定型的な仕事である。この部分を変えていくことがワークスタイル変革

・グローバルで働いているところからワークスタイル変革が始まったのではないか。

・日本はコンシューマ(消費者)としてのデジタル化が先に進んだ。仕事の仕方のほうの変革は後から。

・ECMのツールを使いこなせないと働き方の変革はできない。ECMはインフラになる。

・コンサルタントの立場はビジョンを作ることとルールをつくる(人事、評価制度、会議の仕方、働く人の意識engagementなどに関わる)。

・東京証券取引所は経済産業省とともに健康経営銘柄を指定している。そのほかに健康経営優良法人ホワイト500という制度も立ちあがっている。ワークスタイル変革のポテンシャルを図る指標などもある。

◎成功要因は?

・フリーアドレス、インフラ、モバイル

・意識改革が一番強力な要因

・ワークスタイルのオンデマンド変革。自分の会社は日本では在宅が4%、世界平均は12%

・顧客と接触する職種の場合、数字が上がっていないでオフィスにいると物理的にオフィスを使えないようにする、というようなこともありえる。この部分は心の健康問題とも関連してくる。

・自社の場合、社内オフィスに固定席のある社員は日本法人30%、全世界平均9%。アメリカはホームオフィスが中心。

・ワークスタイル変革を成功させるにはワンプラットフォーム情報基盤が必要。昔はペーパーレスが言われていたが、いまは精神的な労働環境の整備に重点がある。そのためににはツールが必要。ワークスタイル変革が言われる要因の一つには、ECMの利用がある。

・オフィスの外にいても必要な情報にアクセスできるようにして生産性向上。

・顧客1万5000社からの問い合わせを、世界各国のサポートチームが記録する。そして問題解決策を提示する。

・日々発生するさまざまな問題を一元的に管理し、案件にかかわる情報を360度すべて把握する。

・一つの例であるが、アメリカで問題発生というケースで、ツールを使って東京のスタッフが過去の情報を検索する。そういうケースマネジメントがある。

・次世代ECMは? 例えばEFSS(Enterprise File Synchronization and Sharing)などがある。

・現在の文書管理の目的は”ペーパーレスの実現”からもう一段先に行っている。

・以前のECMに求められていた目的は、「ペーパーレス」「コスト削減」(「物理スペースの削減によるコスト削減」)。今は紙にとらわれないことが働き方変革につながる。

・成功要因はビジネスモデルの変化にある(企業のあり方、今の仕事の生産性をどのように高めていくか)。

・ITの利活用とデジタルトランスフォーメーションはどう違うのか? 東京証券取引所は経済産業省とともに上場会社のIT経営銘柄を決めている(ROI8パーセント以上の会社)。ITを使っていまのビジネスモデルをよりよいものにしていくのがビジネストランスフォーメーション。

・コンサルの現場では「成功とは何か」を一番初めに定義する。(1)(2)は共通。ビジネスとその変革の基盤。本当に定着するかが(3)。
(1)電子、デジタルで仕事を行う環境をつくり、新しいコミュニケーションによる出会いによって、新しいイノベーションを創出する。
(2)会社の仕組みと制度で情報を守る。
(3)使いやすさ、利便性があるかどうか。現場の人に実感してもらう。不平不満を吸収する仕組みがあるか。

◎利便性に関して

・自社ではECMは営業ではあまり大きく活用されていなかったが、昨年他社と提携してセキュリティが充実した。また提携先の製品は使い勝手がよい。

・ECMを情報のハブとして利用し生産性を高めている。例えばCRM(customer relationship management)をハブとして利用し、さまざまな業務に利用することによって利便性が生まれる。

・例えば請求書・契約書を単に管理するだけでは使いづらい。コンテンツを業務プロセスに紐づける(コンテキスト)。するとそれによって価値が生まれる。業務プロセスとつなげることは利便性を生む。

・機械ができることと人ができることをはっきりさせる。例えば領収書電子化のみならず、請求書をスキャンしたらそこから自動的に流れていくような使い方が最近のECM。

・今は非定型の業務での文書作成も作成時点から作成からデジタル。アイデアが生まれた時から全部デジタル。そういうツールの管理が必要。さまざまな業務プロセスをうまく連動しながら、うまくつなげることが利便性をもたらす。

◎失敗例、注意点

・組織替えなどあったりしたときは、リモートワークばかりでなく、上長に顔を見せるなど人間的な接触も大事。心情的なところを考慮したほうがいいときもある。

・ECMはツールなので、それだけ導入しても成功にはつながらない。ワークスタイル変革は会社にいる人もリモートの人と同じように、全社として取り組むべきこと。そのためにはトップのコミットメントが大事。

・一気に何かを変えるのは難しい。明確な課題をもっているところを優先して、成功を実感しながら進めることが大切。働き方に対するカルチャーを改革していく

・失敗例には「タブレットを全社的に導入したが活用方法がわからない」というような例がある。新しいものを配るとワークスタイル変革のような気になるが、ちょっと違う。ワークスタイル変革とは人材確保。ECMだけでは難しい。

・オフィスでないとできないこと、外でないとできないこと、家でもできること、そういうところを考えることが大切。自社ではソフトウェアでできることを考えており、今回展示会にブースを出している。ECMでワークスタイルを変えていくのをデモしている。

・トップダウンで大金でシステムを導入して使われないのが失敗例。現場に寄り添うことが重要。グループ会社と一緒になって、ビジョンの設定をデザインしている。そこにどういう人を引き込むかを考えている。現場で普及してリーダーになってもらう。


現用記録の管理からアーカイブズの管理を統合的に考えるレコードキーピングは記録文書の作成段階がスタートです。現用記録文書の管理はどうなっているのか、とくにITの観点からは何が問題になっているのかを勉強しようと参加したのですが、、、 むしろアーカイブズの側の課題を認識することになりました。テレワークやリモートワークが普通となった場合、これまでフェイス・トゥ・フェイスを前提として考えられていたやり方というのは有効でなくなってしまうかもしれません。自社の歴史に関わるコンテンツは最近は多くの企業で社内イントラネットに掲載されることが増えてきていますが、モバイルが基本の働き方になった場合、デバイスによる最適化のようなことにもっと注意を向ける必要があるかもしれません。さらに、業務への利用(顧客に対する自社の歴史・ヘリテージ関係のプレゼン)を考えてみた場合、アーカイブズ資料やコンテンツを管理するシステムを、全体のシステムのサブシステムとしてハブとなるシステムに結びつけたほうがよい、というような議論ができるかもしれません。

パネルディスカッションに対するわたしの感想は、ECM専門の方々の感想とはだいぶ異なった感想であると思われます。しかし、ワークスタイルの話はこれまでアーカイブズ関係の会合で話題になったことはなかったので、非常に興味深いものでした。

後日、JIIMA ECM委員会のポータルサイトに当日の資料が掲載されるというアナウンスがありました。http://www.ecm-portal.jp/

高千穂大学公開講座「社史の魅力」(2016年10月15日)

22 土曜日 10月 2016

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current record, 現用記録, 社史, shashi, takachiho

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高千穂大学(東京都杉並区)と杉並区教育委員会が共催の公開講座「社史の魅力」(全4回)の最終回に参加しました(2016年10月15日)。
http://www.takachiho.jp/public/kouza/extension.html
この日は次の2つの講義がありました。

(1)「経営史研究者による会社史執筆に関する構造的問題」
フェリス女学院大学国際交流学部准教授 齊藤直先生
http://researchmap.jp/read0078165

(2)「社史の魅力」
高千穂大学経営学部教授 大島久幸先生
http://researchmap.jp/read0195636/

齊藤先生の講義はこれまでの社史との関わり、社史執筆を振り返りながらの自己紹介に続き

1 はじめに
2 研究者による社史執筆の状況
3 社史制作をめぐる企業と研究者
4 研究者による社史執筆をめぐる問題
5 問題を解決するために
6 おわりに

という内容構成でした。講義後お話する機会をいただけましたので、発表内容を今後文章化して発表していただきたい、とお願いしました。

大島先生の講義は「社史とは何か」というお話からスタート。以下、大島先生のお話を松崎が聞いた限りでまとめました。


社史とは会社が会社の企業の責任でもって刊行する自社の歴史に関する文献、通常の書籍の流通ルートに乗って流通するものではない。そのため、入手が困難。

高千穂大学(今年で創立113年)では1990年に商学部経営学科の設立記念事業として社史コレクション事業をスタートさせた。会社の情報を社会に残していくには社史が一番手軽なツール、会社のことを知る唯一の貴重な情報源。現在高千穂大学には6000冊以上のコレクションがある。このコレクションに関する情報を使って統計をとってみたところ、巷間言われているような「日本は社史大国」という認識は必ずしも正しくないのでは、と考えられる。日本が「社史大国」といえるのは、1980年~90年代にかけてではないか、それも本当にそうかどうか、これからどうなるかはわからない。最近の年間刊行点数は50冊程度とみられ、これは深刻な事態だし、だからこそ社史を大切にしたい、何かできないか、と思う。

ちなみに社史は利用して、蓄積していくとある一定の価値を持つ資産と考えられる。古書店に行くと古い社史ほど価格が高い(入手しにくさと関係)傾向がある。経営史学者の由井常彦先生によると「製品別原価が載っているととても貴重である」。

一方、歴史研究者は研究に利用した資料が一次資料でないと評価されない(※松崎注:ここでいう一次資料とは、図書館司書が言う一次資料とは異なり、編集・刊行される以前のナマの資料を指す)経営史の場合一次資料とは、会社の経営記録、営業記録など。現在の文書記録の作成はほとんど電子的に行われ、イントラネットやファイルサーバにある記録(データ)はアーカイブとして蓄積されるのではなく、上書き更新されていく傾向があることを考えると、経営史を研究・叙述するための一次資料はどんどん消えて行ってしまっている。今後会社の歴史を知るための手がかりは社史ぐらいかもしれない。とするならば残すべきなのは社史かもしれない。

日本には大きな社史コレクションを所蔵する機関がいくつかあるが、会社史を一番残してきたのは経営史学会。同学会では設立30年記念として『日本会社史研究総覧』を出版している。会社史は学術的にも価値を持つ。その場合優れた社史とは何か、という話になる。優れた社史とは、次の6つの基準で評価できるといわれている。

優れた社史とは?
1政策の目的と達成
2実証性と公開性
3事業内容を説明されているかどうか
4歴史の流れを読み取れるか
5企業主体の叙述か
6マイナスな出来事も書かれているか

今回の公開講座「社史の魅力」の講師陣のお話から、次のような課題が見えてきた。

・社史執筆に際して資料を集めることに多大な労力を要する。これは社史編纂における最大の障害
・残された(そして社史編纂のために集められた)資料から経営の内容を描きだすことは困難である。「優れた社史」と言われている社史を発行した企業においても、経営資料が断片的であることがままある。

傾向としては、保険会社や銀行などの金融機関は訴訟リスクなどもあり、それを自覚しており、また余裕もあるのか記録は残されている。一方、流通系企業の記録の残存状況は芳しくない。恒常的に記録を残す文化が日本にはない。そして社史編纂の時だけは一所懸命とにかく集める。だがしかし、集めた資料からだけで全体を描くことは難しい。ある流通系メーカーでは意思決定のための幹部レベル会議の資料はパワーポイント資料のみで、パワーポイントに乗せる情報量も少なければ少ないほどよいと思われているため、これをもとに社史を記述するためには、関係者にヒアリングして、資料の意味を理解しなければならなかった。

現代の資料は紙の資料であってもチープ、情報量が豊かではない。優秀会社史賞本選考に残るような優れた会社史を作ったところでもやはりそういう状況である。残すことにはコスト(金利など)もかかる。

企業記録は残るのかどうか。社史刊行後資料が整理されてしまうことがある。あるいは刊行を機に残す制度や機関が作られる場合もある。イントラネット上でやり取りされる企業記録は、上述のように上書きされてしまう結果、そもそも記録が残らない。そして、今現在作成され業務で利用されている記録は、紙の資料としても残されない。社史執筆にかかわった先生方の研究室に残った資料は図書館も引き取ってくれない。さらに会社が消滅した場合、ウェブサイトも消滅、記録は消えてなくなってしまう。

公開講座の2回目に講演された帝国データバンク史料館高津館長のお話では、創業100周年を迎える509社に対するアンケートを行ったところ、何らかの記念の催しを行う会社が全体の7割、そのうちの7割が社史の刊行、さらにそのうちの7割は社史刊行に準備にかける期間は3年以内。歴史的資料の管理をしている会社が36%、管理していない会社が6割以上、「管理するような資料はもっていない」と回答した会社が5割以上という結果であった。高津館長のお話では、「企業博物館」には定義がないため、企業博物館のデータをとるのは難しいのだが、会社の歴史的資料を残す点では一種の希望といえる。社史編纂のために集めた資料を整理して、社史刊行後に博物館を作った会社を調査したところ、電力会社など公共性が高いところは企業博物館を作って資料を残している。

かつては担当者が自宅に持って帰ったりしたことで逆に資料が今日に伝わった、というようなこともあったが、現在は会社のパソコンに個人のUSBを挿したらコンプライアンス違反になる時代なので、個人の熱意のようなものによって資料が残ることは困難である。

橋本寿朗先生の1998年の論文では次のようなことが指摘されている。
・保存に関する文書規定はずさんだが、にもかかわらず日本の大企業は資料をかなりよく残している。
・資料を読む場合の2つの問題点。
(1)日常の記録が残されない
(2)企業活動の解明に必要とされる情報の一部(下の下線部分)しかわからない

企業環境の認識→経営課題の自覚→事業目的→事業構想→プラン→意思決定→実践→結果

不明な部分は関係者にヒアリングして聞きとることなどもある。その他社史編纂担当者の個人的熱意で残す(ただし担当者の負担が大きい)くらいしかない。史料館を作って残すというオプションを選択するところも少ない。

資料の収集、整理、利活用として自分も関わった例に、神戸大学と滋賀大学の例がある。滋賀大学の場合、伊藤忠商事が伊藤忠兵衛記念館で新人研修を行うなど、歴史資料に対する社内認知度向上にまで踏み込んだ活動を行っている。

会社史が大事であることを広めていくのが大切。


完全ではありませんが、以上のようなお話でした。

大島先生には社史について、また企業資料について下記のような著作をお持ちです。

「記録は誰のものか、海の向こうの史料を訪ねて」帝国データバンク史料館『別冊MUSE 2014』(2014年)
http://www.tdb-muse.jp/info/2014/09/muse2014.html
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I025838959-00

「基調講演 社史からアーカイブズへ」企業史料協議会『企業と史料』第10集(2015年)
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I027497505-00

その他大島先生の著作は下記をご参照ください。
http://iss.ndl.go.jp/books?rft.au=%E5%A4%A7%E5%B3%B6%E4%B9%85%E5%B9%B8&search_mode=advanced
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22402028/


大島先生は、何十年か後にいまの時代について、社史に書こうとしても記録が残っていない可能性がある、という点も強調されました。この点は私も大いに共鳴するところです。

一方、先生のお話では資料整理に経営史研究者が協力して、大学という機関で所蔵していくことが企業資料保存のひとつの有力なオプションではないか、ということでした。この点の評価は難しいと思います。現在学習院大学客員教授・元日本経済新聞社編集委員の松岡資明氏の著作『アーカイブズが社会を変える』は、著名エコノミスト大来佐武郎氏関連資料がかつて大来氏が学長を務めた大学によって廃棄されてしまった事例を上げて(92ページ以下)、「大学は『危ない場所』」という節を設けて論じています。大島先生のお話にもあったように、これまでの、そして現在においても、日本には組織的にアーカイブズ資料を残す仕組みが整っているとは言えず、資料保存は多かれ少なかれ、熱意ある個人の力に負っている状況です。これは決して望ましい事態とはいえません。アーカイブズ資料の保存のしくみと保存資料が社会のインフラになるような、そういう方向をこそ目指すべきではないでしょうか。

この点をさらに推し進めると、「社史は貴重な情報源、日本では組織アーカイブズとして記録を残すような仕組み・文化はないのだから、現実的な対処方法として、とにかく社史を残そう」という考え方に賛同しつつも、やはり目指すべきは作成からアーカイブズに至るまでの記録文書・記録情報の体系的なマネジメントであろうと考えます。なぜならば、記録保存、資料保存、文書保存はそれ自体が究極的な目的ではないからです。記録をきちんとマネジメントすることは業務プロセスの変革に結びついています。つまり、記録文書のよりよいマネジメントは組織のありようをよりよいものとし(企業であればより高い生産性、よりよいガバナンス、企業文化の継承)、そのことによって社会に価値を生み出していくからです。

韓国国家記録研究院研究報告書14「大学記録館の設立並びに運営に関する基礎研究」(2005年)目次

16 土曜日 7月 2016

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手許にある韓国国家記録研究院研究報告書シリーズの一冊「大学記録館の設立並びに運営に関する基礎研究」(2005年)の目次です。

【書誌情報】

http://dspace.rikar.org/handle/2014.oak/607?mode=full

タイトル:大学記録館の設立並びに運営に関する基礎研究

オリジナルタイトル:대학 기록관의 설립 및 운영에 관한 기초연구

発行時期:2005年4月7日

発行所:社団法人韓国国家記録研究院

執筆者:ソン・ドンユ(弘益大学校 記録保存所 専任研究員)

執筆者:キム・ジョンヒ(明知大学校 大学史料室 助教)

執筆者:ソ・ジンキョ(西江大学校 記録保存所 研究員)

執筆者:ハン・ミョングン(崇実大学校 韓国キリスト教博物館 学芸研究員)

 

※原文の기록(물)(漢字では「記録(物)」)は「記録」または「レコード」、관리(「管理」)は原則として「マネジメント」としました。

※※韓国における「기록」(記録)概念は現用・非現用を問わないものと思われますが、詳しい検討が必要です。今後の課題です。

 

【目次】

序文

第1章 大学のレコードとレコード・マネジメント
1. 大学のレコード・マネジメントの重要性
1.1 民主的大学運営
1.2 歴史と文化の全体性確保
1.3 事務の効率化
2. 研究の必要性
3. 研究目的並びに方法
3.1 研究目的
3.2 研究方法

第2章 大学のレコード・マネジメント機関現況
1. 大学のレコード・マネジメント機関の成立運営実態
2. 大学のレコード・マネジメント機関のタイプ
3. 大学記録館の設立運営事例
3.1 ソウル大学校大学記録館
3.2 慶北大学校大学記録館
3.3 西江大学校記録保存所
3.4 慶南大学校レコード・マネジメント・センター
3.5 弘益大学校記録保存所
3.6 明知大学校大学史料室
3.7 韓神大学校記録情報館
3.8 延世大学校延世記録保存所
3.9 ハーバード大学アーカイブズ
3.10 東京大学アーカイブズ
3.11 清華大学アーカイブズ

第3章 大学記録館の設立
1. 設立準備委員会構成並びに活動
1.1 記録館設立を主導する執行機構構成
1.2 大学機関のレコード予備調査活動実施
1.3 大学記録館設立のための諸般の準備事業実施
2. 設立提案の内容
2.1 主要設立目的と根拠
2.2 大学のレコード・マネジメントの重要性
2.3 マネジメント対象である大学のレコードのカテゴリ
2.4 大学におけるレコード・マネジメントのプロセス
2.5 その他大学記録館設立運営事例分析
2.6 当該大学のレコード・マネジメント方法の提示
3. 大学記録館設立戦略
3.1 記録館の特性を考慮したミッションの開発
3.2 記録館の環境分析
3.3 記録館の目的並びに目標樹立
3.4 活動計画樹立
3.5 運営評価
4. 記録館運営段階別発展計画樹立
4.1 第1段階
4.2 第2段階
4.3 第3段階
5. 大学記録館設立戦略の接近方法
5.1 レコードのSWOT分析
5.2 記録館設立時のサービス受給対象
5.3 巨視的な大学記録館の役割の分析

第4章 大学記録館の組織と構成
1. 大学記録館の位相
1.1 総・学長直属の大学記録館
1.2 組織内下位部所としての大学記録館
1.3 望ましい大学記録館の位相
2. 大学のレコード・マネジメントの実態別記録館の役割と位相
2.1 <アーカイブ>の役割だけを担う場合
2.2 <資料館>+<アーカイブ>の役割を担う場合
3. 韓国の大学のレコード・マネジメントに対する認識と記録館の役割による位相
4. 大学記録館の人的構成
4.1 大学記録館の機能と人的構成の方向
4.2 レコード・マネジメント
4.3 専門要員
4.4 事務要員
4.5 補助要員
5. 委員会
5.1 運営委員会
5.2 実務委員会
6. 大学記録館規定
6.1 記録館規定の内容
6.2 記録館規定と親機関のレコード・マネジメント規定との関係

第5章 大学記録館の機能
1. 基本機能
1.1 レコード・マネジメント機能
1.2 レコードを活用するサービス機能
1.3 レコード・マネジメントのための研究機能
2. 拡張機能
2.1 地域社会と大学間の媒介機能
2.2 拡大構成員教育
2.3 デジタル・アーカイブズ機能
2.4 その他

第6章 大学記録館の施設と装備
1. 法律上の大学記録館の施設と装備
2. 大学記録館の一般要件
2.1 立地条件
2.2 施設計画時の留意事項
3. 機能による施設(の構成要素)
3.1 収集(入手)機能
3.2 整理機能
3.3 保存機能
3.4 活用機能
4. 大学記録館の設備と保存装備
4.1 設備
4.2 保存装備

第7章 今後の課題
参考文献
【付録】
付録1. 米国SAA大学アーカイブズ・ガイドライン
付録2. 中国大学档案館関連法令「普通高等学校档案管理弁法」
付録3. 日本 京都大学「大学文書館規程」並びに「大学文書館利用要項」

 

2016-06-05 14.27.37

韓国国家記録研究院研究報告書12「陸軍のレコード・マネジメント体制構築のための制度基盤研究」(2004年)目次

16 土曜日 7月 2016

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日本で公文書管理に関する法律が制定されたのは2009年ですが、お隣の韓国ではこれに先立つこと10年、1999年1月29日に法律第5709号「公共機関の記録物管理に関する法律」が制定されています。アーカイブズ、レコード・マネジメントに関わる教育・研究も90年代から盛んとなりました。その中心機関の一つに、1998年に設立された社団法人韓国国家記録研究院(RIKAR)があります。設立以降積極的な研究活動、出版活動(翻訳出版を含む)を展開し、韓国におけるアーカイブズ、レコード・マネジメント制度の確立に大きく寄与したものと思われます。(同研究院はソウル市内の明知大学校内に所在し、大学院レベルの教育活動にもあたっています。)

参考のために買い求めた同研究院発行の文献が3冊ほど手許にあります。以下の部分は、そのうちの1冊「陸軍レコード・マネジメント体制構築のための制度基盤研究」の目次日本語訳です。

【書誌情報】

http://dspace.rikar.org/handle/2014.oak/601?mode=full

タイトル:陸軍のレコード・マネジメント体制構築のための制度基盤研究

オリジナルタイトル:육군 기록물 관리 체제 구축을위한 제도 기반 연구

発行時期:2004年12月

発行所:社団法人韓国国家記録研究院

執筆者(研究責任者):ソ・ソクチェ(韓国国家記録研究院 専任研究員)

執筆者(共同研究者):イ・ヒョサン(株式会社ドンソ電算 記録情報化チーム長)
※ソ・ソクチェ氏には「中国の文書・档案一体化概念分析」(『記録学研究』10号、2004年)、「電子記録マネジメントの理解」韓国国家記録研究院研究報告書10、2004年などがある。イ・ヒョサン氏の前職は国防部勤務支援団行政課長。

※原則として、原文の기록물(漢字では「記録物」)は「レコード」、관리(「管理」)は「マネジメント」としました。

【目次】

序文

第1章 陸軍の歴史
1.1 陸軍の目標
1.2 陸軍の任務と機能
1.3 陸軍の沿革
1.4 陸軍の歴史

第2章 陸軍の組織体系
2.1 陸軍の指揮体系
2.2 陸軍の組織構成
2.2.1 概要
2.2.2 陸軍部隊の組織編成
2.2.3 師団級部隊の組織
2.3 陸軍本部組織構成
2.3.1 機能
2.3.2 部門別重要業務

第3章 陸軍のレコード・マネジメント制度概観
3.1 陸軍のレコード・マネジメント制度変遷史
3.1.1 事務管理制度変遷史
3.1.2 レコード・マネジメント制度変遷史
3.2 レコード・マネジメント機構並びに専門要員制度
3.2.1 陸軍レコード・マネジメント機構
3.2.2 レコード・マネジメント専門要員の資格と運用
3.3 レコード移管の体系
3.3.1 既存の移管体系
3.3.2 現行レコード・マネジメント規定下の移管体系
3.4 レコードの分類体系
3.4.1 現行陸軍文書の分類体系
3.4.2 レコード分類基準表制度
3.5 レコードの保存管理
3.5.1 レコード・マネジメント機構別保存管理業務
3.5.2 保存期間
3.5.3 保存方法
3.5.4 保存場所
3.6 レコードの公開・活用
3.6.1 レコード公開可否の分類
3.6.2 公開除外対象レコード
3.6.3 レコードの活用
3.7 レコードの廃棄
3.7.1 レコードの廃棄
3.7.2 レコードの廃棄手続き
3.8 秘密レコード・マネジメント
3.8.1 秘密レコードのマネジメント原則
3.8.2 秘密レコードの保存・マネジメント体系
3.8.3 秘密レコードの登録並びに作成現況の報告
3.8.4 秘密レコードの移管並びに保存・マネジメント
3.8.5 秘密レコードの再分類並びに破棄
3.9 電子レコード・マネジメント
3.9.1 電子レコード・マネジメントの区分
3.9.2 警報段階別レコード処理

第4章 中国軍のレコード・マネジメント
4.1 中国軍組織体系
4.2 中国軍レコード・マネジメント制度
4.2.1 中国軍レコード・マネジメント体系
4.2.2 中国軍レコード分類体系
4.2.3 軍事レコードの評価標準

第5章 米国陸軍記録情報マネジメントシステム
5.1 概要
5.2 導入
5.2.1 目的
5.2.2 責任
5.2.3 ARIMSの原理
5.3 レコードキーピング要件の識別
5.3.1 指示命令
5.3.2 計画不能な記録
5.4 電子レコードキーピング
5.4.1 概要
5.4.2 電子的媒体上で記録を・マネジメントすること
5.5 編纂手順
5.5.1 情報を記録として維持すること
5.5.2 レコードキーピング関連設備供給
5.5.3 ハードコピー記録の検討、収集、固定
5.5.4 レコードの整理
5.5.5 秘密文書の維持
5.5.6 作成部門レコード目録
5.6 処理指針の適用
5.6.1 処理標準
5.6.2 保有期間の変更
5.6.3 レコード処理
5.7 利用サービスの手順
5.7.1 レコードの索引
5.7.2 レコード検索
5.7.3 レコード利用サービス
5.8 レコード移管
5.8.1 レコードをRHAとしての送付
5.8.2 レコードをAEAとしての送付
5.8.3 レコードの移管準備
5.8.4 秘密記録
5.9 記録保有者と連邦レコードセンター
5.9.1 地域並びに海外の記録保有者
5.9.2 陸軍レコードセンター

第6章 陸軍のレコード・マネジメント発展のための提言

附録
1. 文書分類基準の〔部の機能〕
2.中国の軍レコード・マネジメント関連規程
3.中国軍事レコード検索分類表
参考文献

韓国国家記録研究院研究報告書12「陸軍のレコード・マネジメント体制構築のための制度基盤研究」(2004年)目次

15 金曜日 7月 2016

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日本で公文書管理に関する法律が制定されたのは2009年ですが、お隣の韓国ではこれに先立つこと10年、1999年1月29日に法律第5709号「公共機関の記録物管理に関する法律」が制定されています。アーカイブズ、レコード・マネジメントに関わる教育・研究も90年代から盛んとなりました。その中心機関の一つに、1998年に設立された社団法人韓国国家記録研究院(RIKAR)があります。設立以降積極的な研究活動、出版活動(翻訳出版を含む)を展開し、韓国におけるアーカイブズ、レコード・マネジメント制度の確立に大きく寄与したものと思われます。(同研究院はソウル市内の明知大学校内に所在し、大学院レベルの教育活動にもあたっています。)

参考のために買い求めた同研究院発行の文献が3冊ほど手許にあります。以下の部分は、そのうちの1冊「陸軍レコード・マネジメント体制構築のための制度基盤研究」の目次日本語訳です。

【書誌情報】

http://dspace.rikar.org/handle/2014.oak/601?mode=full

タイトル:陸軍のレコード・マネジメント体制構築のための制度基盤研究

オリジナルタイトル:육군 기록물 관리 체제 구축을위한 제도 기반 연구

発行時期:2004年12月

発行所:社団法人韓国国家記録研究院

執筆者(研究責任者):ソ・ソクチェ(韓国国家記録研究院 専任研究員)

執筆者(共同研究者):イ・ヒョサン(株式会社ドンソ電算 記録情報化チーム長)
※ソ・ソクチェ氏には「中国の文書・档案一体化概念分析」(『記録学研究』10号、2004年)、「電子記録マネジメントの理解」韓国国家記録研究院研究報告書10、2004年などがある。イ・ヒョサン氏の前職は国防部勤務支援団行政課長。

 

※原則として、原文の기록물(漢字では「記録物」)は「レコード」、관리(「管理」)は「マネジメント」としました。

 

【目次】

序文

第1章 陸軍の歴史
1.1 陸軍の目標
1.2 陸軍の任務と機能
1.3 陸軍の沿革
1.4 陸軍の歴史

第2章 陸軍の組織体系
2.1 陸軍の指揮体系
2.2 陸軍の組織構成
2.2.1 概要
2.2.2 陸軍部隊の組織編成
2.2.3 師団級部隊の組織
2.3 陸軍本部組織構成
2.3.1 機能
2.3.2 部門別重要業務

第3章 陸軍のレコード・マネジメント制度概観
3.1 陸軍のレコード・マネジメント制度変遷史
3.1.1 事務管理制度変遷史
3.1.2 レコード・マネジメント制度変遷史
3.2 レコード・マネジメント機構並びに専門要員制度
3.2.1 陸軍レコード・マネジメント機構
3.2.2 レコード・マネジメント専門要員の資格と運用
3.3 レコード移管の体系
3.3.1 既存の移管体系
3.3.2 現行レコード・マネジメント規定下の移管体系
3.4 レコードの分類体系
3.4.1 現行陸軍文書の分類体系
3.4.2 レコード分類基準表制度
3.5 レコードの保存管理
3.5.1 レコード・マネジメント機構別保存管理業務
3.5.2 保存期間
3.5.3 保存方法
3.5.4 保存場所
3.6 レコードの公開・活用
3.6.1 レコード公開可否の分類
3.6.2 公開除外対象レコード
3.6.3 レコードの活用
3.7 レコードの廃棄
3.7.1 レコードの廃棄
3.7.2 レコードの廃棄手続き
3.8 秘密レコード・マネジメント
3.8.1 秘密レコードのマネジメント原則
3.8.2 秘密レコードの保存・マネジメント体系
3.8.3 秘密レコードの登録並びに作成現況の報告
3.8.4 秘密レコードの移管並びに保存・マネジメント
3.8.5 秘密レコードの再分類並びに破棄
3.9 電子レコード・マネジメント
3.9.1 電子レコード・マネジメントの区分
3.9.2 警報段階別レコード処理

第4章 中国軍のレコード・マネジメント
4.1 中国軍組織体系
4.2 中国軍レコード・マネジメント制度
4.2.1 中国軍レコード・マネジメント体系
4.2.2 中国軍レコード分類体系
4.2.3 軍事レコードの評価標準

第5章 米国陸軍記録情報マネジメントシステム
5.1 概要
5.2 導入
5.2.1 目的
5.2.2 責任
5.2.3 ARIMSの原理
5.3 レコードキーピング要件の識別
5.3.1 指示命令
5.3.2 計画不能な記録
5.4 電子レコードキーピング
5.4.1 概要
5.4.2 電子的媒体上で記録を・マネジメントすること
5.5 編纂手順
5.5.1 情報を記録として維持すること
5.5.2 レコードキーピング関連設備供給
5.5.3 ハードコピー記録の検討、収集、固定
5.5.4 レコードの整理
5.5.5 秘密文書の維持
5.5.6 作成部門レコード目録
5.6 処理指針の適用
5.6.1 処理標準
5.6.2 保有期間の変更
5.6.3 レコード処理
5.7 利用サービスの手順
5.7.1 レコードの索引
5.7.2 レコード検索
5.7.3 レコード利用サービス
5.8 レコード移管
5.8.1 レコードをRHAとしての送付
5.8.2 レコードをAEAとしての送付
5.8.3 レコードの移管準備
5.8.4 秘密記録
5.9 記録保有者と連邦レコードセンター
5.9.1 地域並びに海外の記録保有者
5.9.2 陸軍レコードセンター

第6章 陸軍のレコード・マネジメント発展のための提言

附録
1. 文書分類基準の〔部の機能〕
2.中国の軍レコード・マネジメント関連規程
3.中国軍事レコード検索分類表
参考文献

2009-06-11 04.00.49

 

How I Started – Luciana Duranti

24 火曜日 5月 2016

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This post was kindly written by Luciana Duranti, Professor of Archival Studies at the University of British Columbia in which she talks about her fascinating journey into the archives field.

情報源: How I Started – Luciana Duranti

『GCAS Report 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報』Vol.5(2016)目次

16 月曜日 5月 2016

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学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究の年報『GCAS Report』最新号(Vol.5、2016年2月28日発行)の目次をご紹介します。

http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-hum/arch/02gcas-report.html

【書誌情報】
学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻 編. GCAS report =. 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻, 2012- 冊 ; ISSN 2186-8778

【アクセス】
・所蔵大学図書館
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA12568178

・所蔵公共図書館・・・公共図書館での所蔵はないようです(カーリルで検索結果)

・国立国会図書館
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=find-c&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&amp=&ccl_term=001%20%3D%20023403525&adjacent=N&x=0&y=0&con_lng=jpn&pds_handle=&pds_handle=

・学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻ウェブサイトにはVol.3まで掲載(2016年5月15日現在)
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-hum/arch/02gcas-report.html

・学習院大学学術成果リポジトリにもVol.3まで登録あり(2016年5月15日現在)
http://glim-re.glim.gakushuin.ac.jp/handle/10959/3727

・ウェブサイトによるとVol.4までは有償で頒布中のもよう

・要問合せです
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-hum/arch/02gcas-report.html

・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。

 

【目次】

[講演]

松岡資明「より良き社会のために:「記録」が物語るもの」

白岩洋子「記録を残すために:写真資料保存修復の基礎」

[研究ノート]

大木悠祐「記録管理におけるレコードキーパーの機能と役割に関する一考察:オーストラリアの州公的記録法の事例から」

倉方慶明「アーカイブズ・マネジメント試論:業務の数値化を中心に」

[書評]

田中智子
菅真城『大学アーカイブズの世界』

川田恭子
安藤正人・久保享・吉田裕編『歴史学が問う公文書の管理と情報公開:特定秘密保護法下の課題』/
北海道新聞社編『特定秘密保護法を読む:全条文 反対声明・意見書』

藤村涼子
中野目徹『公文書管理法とアーカイブズ:史料としての公文書』

千代田裕子
三井文庫編『史料が語る三井のあゆみ:越後屋から三井財閥』/
企業史料協議会編『企業アーカイブズの理論と実践』

難波秋音
国立民族学博物館監修『渋沢敬三没後50年 屋根裏部屋の博物館 ATTIC MUSEUM』

高野彩香
石田佐恵子・村田麻里子・山中千恵編著『ポピュラー文化ミュージアム:文化の収集・共有・消費』

千葉功
佐藤元英・武山眞行・服部龍二編著『日本外交のアーカイブズ学的研究』

[報告]

齋藤歩
米国アーキビスト協会ワークショップ(2015)
「建築レコード:設計と施工の記録群を管理する方法」参加記

薬袋未夏
ICAが考えるアーカイブズとは──
『情報社会におけるアーカイブズ、記憶、そして民主主義』の紹介

青木祐一
ブラジル・サンパウロ人文科学研究所資料調査・中間報告

[コラム]

高埜利彦「青空のソウル訪問」

[彙報]

 

・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。

これまで15年にわたり、取材・執筆活動を通してアーカイブズに関する問題提起と啓発に広く鋭く努めてこられた松岡資明先生(2015年7月~学習院大学客員教授)の講演録から2か所、重要であると感じた部分を引用しておきます。

「これは私が以前から感じていたことであるが、日本では『情報』と言うとすぐに思い浮かべるのはフローの情報で、ストックの情報に思い至る人が少ない。・・・(中略)・・・物事には原因があって結果があるのであって、何事も過去の経緯を知らずに取り掛かっても適切な対応ができない。例えば、日本の外交政策でしばしば、指摘されるのは『後手に回った』という批判だ。情報収集をする際、過去の経緯を十分に知ったうえで行うのと、そうでない場合では結果に大きな差が出る。当たり前の話ではないだろうか。」(9ページ)

「私は、アーカイブズがより良い社会、精神的に豊かな社会を目指すのに資するものではないかと考える。飛躍があるように聞こえるかもしれないが、アーカイブズとは『ひとの行(おこな)い』を記録として残し、『行い』に至った経緯を明らかにすることによって、新たな『行い』に生かす、ことではないだろうか。むろん、使い方によって良くも悪くもなる。そして必ず、『行い』の裏には『ひと』がいる。」(18ページ)

 

・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。

最新号には企業アーカイブズに密接に関わる記事が何本か掲載されています。千代田裕子氏による三井文庫編『史料が語る三井のあゆみ:越後屋から三井財閥』と企業史料協議会編『企業アーカイブズの理論と実践』の書評、高野彩香氏による『ポピュラー文化ミュージアム:文化の収集・共有・消費』の書評、そして齋藤歩氏によるSAAワークショップ「建築レコード:設計と施工の記録群を管理する方法」(2015年)の参加記です。

千代田氏の書評では企業史料協議会編『企業アーカイブズの理論と実践』に関して以下のような課題が指摘されています。今後のBAAの活動のためにも参考とすべき点です。(91~92ページ)

・実践編で示される事例が大企業ばかりである。中小・中堅企業の事例が望まれる。

・「なぜ企業にアーカイブズが必要なのか」という点で説得力が弱い。

・「従来、レコードマネジメントの導入において提唱されてきた見解の繰り返しにならぬような理論が必要」

・B to C ばかりでなく、B to B 企業の事例の紹介が望まれる。

高野氏が書評している『ポピュラー文化ミュージアム:文化の収集・共有・消費』第5章「化粧品のミュージアム」(著者・谷本奈穂)は花王ミュージアムを化粧品のミュージアムとして取り上げています。この部分に関する書評者高野氏のコメントは、谷本氏が論じる「来館者に寄り添った展示」に関して更に深く議論できたのではないか、という点と、企業や産業の負の側面を展示に加えることの是非について言及してほしかった、と述べています。非常に重要な点で、今後この分野の研究を期待します。

齋藤氏の報告は、GCAS Report前号(Vol.4)に掲載された同氏の報告「日本建築学会によるレコード・サーヴェイを分析する:アーカイブズ学の観点から」と併せて、建設関係業界、設計業界におけるアーカイブズ管理にさまざまな示唆を与えるものでしょう。

(参考)
齋藤 歩.   日本建築学会によるレコード・サーヴェイを分析する : アーカイブズ学の観点から.  GCAS report = 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報 / 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻 編.. (4):2015. 108-115 ISSN 2186-8778

http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-hum/arch/02gcas-report.html

・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。

 

2015-05-20 15.32.25

検索手段、編成、記述と目録

14 土曜日 5月 2016

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arrangement, 目録, 編成, description, 記述, 記述標準, finding aids, 検索手段

昨年7月の企業史料協議会(BAA)資料管理研修セミナーのテーマは「資料活用のための目録作成のヒント:資生堂企業資料館での資料整理を事例として」、そして二つの講演のタイトルは「目録の標準化とは何か」と「アーカイブズ資料記述および目録作成の一例:資生堂企業資料館所蔵資料を例に」でした。

しかし実は、アーカイブズに関する英語文献では「目録」catalogue、「目録作成」cataloging、という言い方はあまりせず、もっぱら「検索手段」finding aidsという用語を目にします。そしてこれは記録(レコード)の組織化のための行為である「編成」arrangement、「記述」descriptionという用語と密接に関係します。

これらの用語について、上述のBAA資料管理研修セミナーで講師を務めてくださった東京大学文書館准教授の森本祥子先生にうかがってみました(2016年5月14日)。以下、森本先生のお話です。

—————-
まず、「目録」「編成」「記述」に対応する英語は次の通りです。

目録 = catalogue / list
編成 = arrangement
記述 = description

そして、編成と記述はセットで行われると考えられているので、英語圏だとA & D(arrangement & description)といったように省略して使われたりします。

検索手段 = finding aids

は、文字通り、情報を探し出すためのツール全体を包括的にいう呼び方です。

日本は伝統的に表形式の目録だけが検索手段でしたが、例えばイギリスだと、index(トピックスや固有名詞など、ものを探す手がかりになるキーワード一覧)とかcalendar(個々の資料の内容を詳細に説明したもの)などが伝統的に作られてきたので、そうしたものも含めた、すべての「情報検索ツール」を指す意味合いです。

それでは、なぜ「目録」ではなく「編成・記述」という言葉が(アーカイブズ学・実務関係者に)好まれるようになったかということですが、要は、「目録」というのはいわば「単なる形」をさすものであって、それがどのような作り方をされたものであれ、情報が書き連ねられていれば、目録である、ということになります。

他方、「編成」と「記述」は、資料の分析を経るものであって、結果としての「形」よりも、その過程に注目した言い方です。日本での定着としては、そうした資料分析が重要だという議論とともにそれが従来の「目録論」というような言葉から、「資料の編成・記述」という言い方に変わってきたという経緯があります。

資料の特徴を引き出していようがいまいが、とにかく「リスト」があればいい、というのではダメで、資料群を分析し、ひとつひとつの資料の関係が見えるように、それがどのように作られたのかがわかるようにきちんと分析しよう、というのがarrangement & descriptionにこめられた意味合いということですね。

—————
森本先生ありがとうございました。

2015-11-27 15.34.38

2015年度BAA(+α)を個人的に振り返る

14 土曜日 5月 2016

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アーカイブズ, ビジネスアーカイブズ, BAA, business archives, 編成, 記述, 企業史料協議会

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再来週の金曜日(5月27日)、企業史料協議会(Business Archives Association: BAA)の第35回総会・記念講演会が開催されます。会場は四ツ谷駅そばの主婦会館。初めての会場です。
http://www.baa.gr.jp/news.asp?NoteAID=11
http://www.baa.gr.jp/syousai.asp?id=393

総会を前にBAAのこの一年(2015年5月~16年5月)を振り返りました(私が参加した範囲で、です)。

・総会(第34回:2015/5/29日本教育会館、第35回:2016/5/27予定)
・広報部会(7/14、9/2、11/30、2/9、3/2、3/29、5/10、5/17予定、すべてBAA事務所)
・理事会(5/29、10/2、12/4、3/18、5/27予定、5/27を除きスクワール麹町)
・資料管理研修セミナー:「電子データの長期保管:現状と動向」(10/9一般社団法人全水道会館)、「史資料のデジタル管理と活用」(3/1中央大学駿河台記念館)
・第4回BA(ビジネスアーカイブズ)の日打ち合わせ(9/8アジア歴史資料センター、9/28国立情報学研究所)
・第4回BAの日講演会・シンポジウム(11/5日本教育会館)
・広島地方見学研究会(11/26-27)
・ビジネスアーキビスト研修講座「多様な価値を持つ企業アーカイブズとは」出講(12/10東京大学本郷キャンパス小島ホール)
・博物館セミナー「これからの企業ミュージアム」(3/8中央大学駿河台記念館)

■7月11日の資料管理研修セミナー
「資料活用のための目録作成のヒント:資生堂企業資料館での資料整理を事例として」

企業史料協議会では30年以上にわたって企業史料の取り扱い、管理、活用等に関してセミナーを行ってきました。研修担当理事によると(不思議なことではあるのですが)「目録」(アーカイブズの用語としては「編成、記述」)に関するセミナーを開催するのはおそらく初めてではないか、ということでした。これは日本における企業史料の保存と活用が長らく社史編纂を目的としてきたことと関係するのかもしれません。

講師を引き受けてくださったのは東京大学文書館准教授の森本祥子先生(「目録の標準化とは何か」)と学習院大学大学院アーカイブズ学専攻博士課程の清水ふさ子さん(「アーカイブズ資料記述および目録作成の一例:資生堂企業資料館所蔵資料を例に」)のおふたりです。申し込み多数のため急きょ大きな会場を確保して約80名の参加者にお越しいただきました(当初の募集人員定員は20名弱)。この分野に関する学習・研修の機会が求められていることを痛感しました。

通常司会は研修部会担当理事が行うのですが、研修部会に企画を持ち込んだ関係で私が司会を担当させていただきました。

http://www.slideshare.net/Business_Archives_Association/ss-50534474
http://www.slideshare.net/Business_Archives_Association/ss-50596064
http://www.slideshare.net/Business_Archives_Association/201507105-50418367
https://www.facebook.com/kigyoushiryou/posts/744653425657162
https://www.facebook.com/kigyoushiryou/posts/744656185656886
■11月5日のビジネスアーカイブズの日
「デジタル時代におけるビジネスアーカイブズ」

このイベントは毎年広報部会が企画運営します。2015年は特別講演をアジア歴史資料センター長の波多野澄雄先生(アジア歴史資料センターセンター長)に、今年のBAの日のテーマ「ビジネスアーカイブズと情報発信」に関する基調講演を高野明彦先生(国立情報学研究所コンテンツ科学研究系教授、東京大学大学院情報理工学系研究科教授)にお願いしました。

パネルディスカッションでは「デジタル時代におけるビジネスアーカイブズ」をテーマに石川敦子氏(㈱乃村工藝社)、佐藤朝美氏(㈱資生堂)、渡邉淳氏(セイコーミュージアム)の三人をパネリストにお招きし、高野先生にはモデレータをお願いしました。資料のデジタル化による積極的な情報発信は各社の事業に貢献するのはもちろんですが、情報発信がアーカイブズへの関心を高めると言う点も非常に重要です。
https://www.facebook.com/kigyoushiryou/posts/803890816400089
■(+α)1月の全史料協近畿部会(尼崎市総合文化センター7階 会議室)
「東京大学文書館における資料管理のとりくみについて:理論の理解と実践の試み」

これは7月のBAAでのセミナーを聞きつけた(!)全史料協関係者から、関西でも森本先生のお話が聞きたいということで実現した企画であると聞いています。コメンテータとして参加させていただきました。

記録資料整理における国際標準に関する理論(ICAがまとめたISAD(G)とオーストラリアで採用されて利用されているシリーズ・システム)と、東京大学文書館での実践(既に完結した歴史資料はISAD(G)で記述し、現在も作成され続けている大学法人文書に関してはシリーズ・システムに依拠して記述する)について詳しいお話をうかがいました。
http://jsai-kinki.com/blog-entry-66.html
https://www.facebook.com/AmagasakiMunicipalArchives/posts/827267230719049
企業で資料整理をする場合「なぜ国際標準が必要なのか」という疑問を持つ方も多いと思います。つい先日も「日本では今のところ、どの資料管理システム・ベンダーからも、アーカイブズ記述の国際標準に依拠したシステムは提供されていないんですよね」とお話したところ、ある企業資料館の館長さんから「いま使っているシステムで全然問題がない。国際標準でなくてもいいんじゃないの」という趣旨のコメントをいただきました。現在のシステムによって必要な資料を的確に探し出すことができる、満足できている場合、そして相応の投資をしている場合原価償却するまでにシステムを変えるといった必要性はもちろんないでしょう。

ただし、企業も政府もいずれ担当者は異動したり、退職したり・・・つまり変わります。文書作成者や作成者に近い人が資料管理をしている間はその文書に関するコンテクスト情報を得ることは難しくないかもしれませんが、アーカイブズの担当者が代替わりしていくうちにコンテクスト情報が失われていくのは避けられません。アーカイブズ資料が標準(規格)に則って記述されていれば、このような代替わりによっても、正確なコンテクスト情報を継承していくことができます(以上、森本先生の講演での説明を要約。http://www.slideshare.net/Business_Archives_Association/ss-50534474 スライド14)。ですから、システムの更新などの時期を迎えるならば、目録作成において標準という考え方を取り入れていくことを考えるのは好ましいことであると言えます。

そして、森本先生がもうひとつ強調していた「アーカイブズ資料は、資料の数だけ個性がある」から「ゆるやかにうけとめることがポイント」という点も重要です(前記スライド22)。アーカイブズはひとつとして同じものがありません。企業でも、同じ業種のアーカイブズであっても所蔵資料はまったく異なってきますし、編成(一般的な日本語に置き換えると「分類」)・記述も違ってくるのは避けられません。マニュアルがない、とも言えます。そのため所蔵資料を自らが分析して、編成(分類)、記述する必要が生じるわけで、そこが難しいところでもありますし、また面白いところでもあります。

 

■(+α)ICAソウル大会
そして今年は4年に一度のICA Congressがお隣韓国ソウルで9月に開催されます。私が関わるICASBAのセッション・プロポーザルが受理されたほか、加藤丈夫国立公文書館館長が「日本のアーカイブズの伝統をグローバル時代の新たな需要と調和させる:日本のビジネスアーカイブズに焦点をあてて」というタイトルでプレゼンテーションを行われるという発表がありました。
http://www.ica.org/sites/default/files/ICA%20Congress%20Seoul%202016%20accepted%20papers%20by%20TOPIC.pdf
http://www.ica.org/sites/default/files/ICA%20Congress%20Seoul%202016%20accepted%20papers%20by%20subID.pdf

加藤館長にはBAAの第2回ビジネスアーカイブズの日記念シンポジウム(2013年11月5日)で特別講演「企業が語り継ぐもの」を行っていただきました。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.432643056858202.1073741826.223260084463168&type=3

国立公文書館館長がビジネスアーカイブズをテーマに掲げて講演すると知り、たいへん驚きつつ、BAA関係者にとってはうれしい知らせでした。

 

■(+α)『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』翻訳プロジェクト
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784816926112

私も編訳者の一人として参加した翻訳プロジェクトの成果物『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』が来月中旬日外アソシエーツから刊行されます。先日無事校了を迎えました。

この本は今年度のBAAの活動とは直接の関係はありません。しかし校了を迎えたのを機に、もう少し長いスパンで振り返ってみると、これもBAAの活動に連なるものであるなぁ、といささか感慨深く感じています。

始まりは東日本大震災があった2011年。前々年から公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センターが準備を進めていたビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」(2011年5月11日)に、この年設立30周年にあたるBAAも共催者として、準備に関わってくださいました(国際アーカイブズ評議会企業労働アーカイブズ部会 (ICA/SBL)も共催)。
http://www.shibusawa.or.jp/center/network/01_icasbl_Tokyo.html

大震災のため一時は中止かとも思われました。しかし、海外のビジネスアーキビストの参加キャンセルも少数にとどまり、無事に開催できました。この時のプレゼンテーションを基に、主催者の公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センターは『世界のビジネス・アーカイブズ:企業価値の源泉』を編集し、2012年4月に日外アソシエーツから刊行することができました。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20120215/1329283710

本書刊行にあたっては日本のアーカイブズ界で活躍する方々に翻訳チームに参加してもらいました。英国国立公文書館のアレックス・リッチー氏による「ビジネス・アーカイブズに関する全国的戦略(イングランドおよびウェールズ)」を担当してくれたのが、学習院大学大学院人文科学研究科(当時)の森本祥子氏でした。またSBL議長でシンポジウム開催にリーダーシップを発揮してくれたフランスのサンゴバン社アーキビストであるディディエ・ボンデュー氏の部分を担当してくれたのが立教大学共生社会研究センターの平野泉氏。ボンデュー氏の章「フランスのビジネス・アーカイブズ、経営に役立つツールとして:サンゴバン社の例」の翻訳・編集にあたっては英語のみならずフランス語にも通じている方がどうしても必要で、平野さんはまさに適任でした。

この本の刊行もご縁となり、森本さんにはBAA編『企業アーカイブズの理論と実践』(2013年11月刊)第4章「機能としてのアーカイブズ」の執筆を担当していただきました。
http://www.baa.gr.jp/kankobutu.asp?NoteAID=32
http://www.amazon.co.jp/%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%96%E3%82%BA%E3%81%AE%E7%90%86%E8%AB%96%E3%81%A8%E5%AE%9F%E8%B7%B5-%E4%BC%81%E6%A5%AD%E5%8F%B2%E6%96%99%E5%8D%94%E8%AD%B0%E4%BC%9A/dp/4863451768

一方、ちょうどこの時期(記録によると2013年11月13日)、日本アーカイブズ学会委員の平野さんから翌2014年年4月のアーカイブズ学会設立10周年記念大会企画研究会「私たちの『アーカイブズ学』をとらえ直す──批判・検証・展望」に森本さん、京都大学文書館の坂口貴弘さんとともに発表できますかという打診を受けました。

日本アーカイブズ学会2014年度大会(設立10周年記念大会)2014年4月20日(日)学習院大学
http://www.jsas.info/modules/taikai02/index.php?id=12

この時の発表は『アーカイブズ学研究』21号(2014年12月刊)に収録されています。
http://www.jsas.info/modules/publications01/index.php?id=35

この企画研究会や当時の出版状況を見渡す中で、アーカイブズ管理の実務をしっかり支えるテキストが必要なのではないか、という意識が高まり、それが『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』翻訳プロジェクトを立ち上げる動機ともなりました。

2011年の国際シンポジウム以前のBAAのアカデミック・コミュニティとの関わりは、もっぱら経済史・経営史研究者に限られていたように思います。ですので、過去5年の間にアーカイブズ学研究者とのつながりを深めたことは特筆すべきことかと思います。理論にガチガチにしばられて自由な発想でアーカイブズを運営できないのは論外でしょう。しかし、確固とした理論・研究活動から栄養をいただいていくことは、企業アーカイブズのレベルアップ、成長に不可欠であると思います。

『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』は組織における文書管理・記録管理・アーカイブズ管理のための包括的な手引書です。編訳者としては、企業の方々にもぜひ参照していただきたいと希望しています。

最後にBAAの話題に戻ると、今年が創立35周年ということは2021年の40周年(anniversaty!)まであと5年です。5年後、今回の翻訳プロジェクトに加わってくれた30代の若手アーキビスト・研究者がさらに活躍している姿は目に浮かびます。5年後のBAA、5年後のビジネスアーカイブズ、5年後の自分は一体はどうなっているでしょう。私個人としては、研鑽を怠らず、科学と技術の発展に取り残されないよう心がけるばかりです・・・

2015-11-26 13.06.41
広島地方見学研究会(11/26-27) にて

 

「ディスカバリー」をきっかけに考えたこと

12 木曜日 5月 2016

Posted by archivesstudio in ICA, JSAI, Uncategorized

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Archivematica, Archon, AtoM, オープンソース, ディスカバリー, Calm, Discovery, 記述, 記述標準, ICA, ISAD(G), NRA, Omeka, TNA

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——————–

■TNAのディスカバリー・サービス導入

10年と少し前にビジネス・アーカイブズに関わる仕事を始めて以来、イギリス国立公文書館(TNA)のNRA(National Register of Archives、特にビジネス・レコード・インデックス)とアーカイブズ機関情報に関するARCHONディレクトリ、そしてアメリカ・アーキビスト協会(SAA)の企業団体アーカイブズ・ディレクトリは、私にとってずっと、ビジネス関連レコード/アーカイブズ(資料と機関)所在情報のデータベース化・組織化のベンチマークとなってきました。NRAに関しては、3年前に森本祥子氏による日本語文献が公刊されて、イギリスにおけるアーカイブズ所在情報組織化の歴史的な経緯の理解が格段に進んだと思います。その後国立公文書館の渡辺悦子氏によるイギリスでのアーカイブズ機関の連携に関する論文が公開され、TNAが管理する複数の検索システムやデータベースの統合による新たなサービス「ディスカバリー」の紹介も進みました。(TNAではディスカバリー・サービスの提供開始とともに、個々の検索サービスの提供は停止したため、以下ではウェブアーカイブズからのスナップショットを記載しておきます。)

【TNA: NRAディレクトリのスナップショット(2013年9月20日)】
http://webarchive.nationalarchives.gov.uk/20130920012334/http://www.nationalarchives.gov.uk/nra/default.asp

【TNA: ARCHONディレクトリのスナップショット(2008年1月7日)】
http://webarchive.nationalarchives.gov.uk/20080108014935/nationalarchives.gov.uk/archon/

【SAA: 北米における企業団体アーカイブズ機関ディレクトリ】
http://www2.archivists.org/groups/business-archives-section/directory-of-corporate-archives-in-the-united-states-and-canada-introduction#.VzKBh9KLTcs

【TNA: Historical Manuscripts Commission】
http://www.nationalarchives.gov.uk/archives-sector/hmc.htm


【Royal Commission on Historical Manuscripts(1869年設置)についての日本語文献】
ノーマン ジェイムズ. 森本 祥子. 翻訳. イギリスにおける民間アーカイブズ : その保存へのとりくみ. アーカイブズ学研究 / 日本アーカイブズ学会 編.. (19):2013.11. 70-87 ISSN 1349-578X
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=852174&set_entry=000001&format=999

【TNA: ディスカバリー】
http://www.nationalarchives.gov.uk/about/our-role/plans-policies-performance-and-projects/our-projects/discovery/

http://discovery.nationalarchives.gov.uk/

【TNAディスカバリーについての日本語文献】
渡辺 悦子. イギリス国立公文書館の連携事業. アーカイブズ / 国立公文書館 編.. (54):2014.10. 50-60 ISSN 1348-3307
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=853312&set_entry=000001&format=999
(本文PDF)
http://www.archives.go.jp/publication/archives/wp-content/uploads/2015/03/acv_54_p50.pdf


さらに、昨年(2015年)10月に福岡で開催された国際アーカイブズ評議会東アジア地域支部(EASTICA)総会・セミナーにはTNA商務・デジタル関係担当ディレクターのメアリー・グレッドヒル氏が参加、ディスカバリーに関する詳しい説明もありました。

【「英国国立公文書館におけるボーンデジタル記録管理の課題」】
メアリー・グレッドヒル(英国国立公文書館商務・デジタル関係担当ディレクター)
(要旨・本文PDF)
http://www.archives.go.jp/news/pdf/151106gledhill_ja.pdf
http://www.archives.go.jp/news/20151106.html

※関連文献として下記も上げておきたいです。
 齋藤歩(学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻博士後期課程)
 「アーカイブズのデジタル化がめざすもの」(2016年1月5日)
 http://www.ameet.jp/digital-archives/digital-archives_20160105/

TNAの2015年11月4日付ブログ記事によると、この時点でディスカバリーはTNAと英国国内2500のアーカイブズ機関が所蔵する記録に関する3,300万件の記述へのアクセスを提供しています。

【More comprehensive Discovery】
http://blog.nationalarchives.gov.uk/blog/comprehensive-discovery/

TNAの新サービスを初めて耳にした当初(2012~3年頃)は、それはアーカイブズに関わる複数のデータベースを横断検索するシステムで、”Discovery”なる名称は単なる固有名詞だろうと素朴に受けとったものでした。しかし、どうももやもやしたものを感じたまま、「ディスカバリー」がずっと気になっていました。

 

■図書館界での「ウェブスケールディスカバリー」に触れて

そこで、思い立って手にとってみたのが『図書館を変える!ウェブスケールディスカバリー入門』です。これは大学図書館(佛教大学図書館)に勤務する著者が「ウェブスケールディスカバリー」と呼ばれるサービスを日本で初めて導入した事例を詳しく解説紹介した本です。

飯野勝則 著. 図書館を変える!ウェブスケールディスカバリー入門. ネットアドバンス ; 出版ニュース社 (発売), 2016.1. 270p ; ISBN 978-4-7852-0156-2 :
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=971079&set_entry=000001&format=040

http://www.amazon.co.jp/%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E3%82%92%E5%A4%89%E3%81%88%E3%82%8B-%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%90%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%85%A5%E9%96%80-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E9%A3%AF%E9%87%8E%E5%8B%9D%E5%89%87/dp/4785201568

本書によると、図書館業界における「ディスカバリーサービス」とは、電子コンテンツが増大するなか、「紙」と「電子」の多様なコンテンツを一元的に管理し提供するために生まれた新しいOPAC、ということです。と言いつつ、TNAのディスカバリー(Discovery=常に大文字のDで始まる名称)と図書館界のディスカバリーサービスの関係は今一つはっきりとはしません。”資料利用者の利便性を高めるために、発達しつつあるテクノロジーを使って実現した、より高度な検索サービス”というほどの共通項なのかなぁ・・・と思いつつ本書をひも解いてみたところ、この問題とは別な部分に目が釘付けとなりました!

 

それは本書が「日本化」と呼ぶ取り組みです。「日本化」は本書のテーマそのものです。どう言うことかというと、ウェブスケールディスカバリーサービスを提供するベンダーは本書執筆時点では四つ、すべて海外のベンダーでした(OCLCのWorldCat Local、ProQuestのSummon、EBSCOのEBSCO Discovery Central、Ex LibrisのPrimo Central、同書35ページ)。佛教大学図書館ではこの4者のうち、ProQuestのSummonを日本で初めて導入、そしてローカラズ(日本化)=日本語に対応させることに取り組みました。(著者は日本化には二つの側面、一つはシステムの日本語化であり、もうひとつはコンテンツの日本化=すなわち日本語コンテンツを増やすことであると説明しています。同書99ページ)

一方、図書館のシステムはどうかというと、多くは国内ベンダーによって提供されているようです。例えば、ブログ「よしなしごと」(2016年1月11日)によると、国立大学法人26校の図書館システムのベンダーは2016年には、NTTデータ九州、富士通、NEC、リコー、日本事務機、丸善・京セラなどの国内企業です。

国立大学法人の図書館システム(2016)
http://otani0083.hatenablog.com/entry/2016/01/11/182900



■アーカイブズ機関の資料管理システム/ソフトウェア

翻ってアーカイブズに関わるシステムの状況はというと・・・。私が知るかぎり、日本国内の企業の資料室(アーカイブズ)で、アーカイブズ専用システム(ここで「専用」として念頭に置いているのは、アーカイブズの原理すなわち出所に基づく編成・記述という考え方を採用したものです)を利用しているという事例を耳にしたことはなく、図書館や博物館向けの資料管理システム、あるいは社史編纂のための年表作成ツールとして開発されたシステムを資料登録管理のために利用しているという例がほとんどです。エクセルやファイルメーカーといった汎用の表計算ソフトやデータベース・ソフトウエアで一から作り上げる、という方法をとっているところも多いと思います。

 

【イギリスの例:Calm】

そこで海外に目を向けるとどうでしょうか。イギリスの場合、アーカイブズ機関の多くが利用するAxiell ALM社提供のプロプライエタリなシステム、Calmがあります。自治体や大学アーカイブズに加え、イングランド銀行、HSBC、ガーディアン、マークス&スペンサー、ユニリーバ社、ウェルカム財団といった企業・団体アーカイブズでもCalmは利用されています。ユーザ機関は400を超えます。

Calmの特徴は ISAD (G)、EAD、EAC、ISAAR (CPF)、OAI-PMH、RDF、SPECTRUMといった国際標準に準拠したつくりになっており、アーカイブズ資料の持つさまざまな階層性をシステム上に再現し、コンテクスト情報を提供できる点にあります。画像ビュー、典拠ファイル(名称、場所、主題、事項、事件、期間)、主題シソーラス、貸し出し管理、修復状況管理、アクセス提供(CalmView)、アクセス権限管理、分類、検索、EADインポート/エクスポート、その他の機能を備えています。

(Axiell ALM社)
http://alm.axiell.com/solutions

(ユーザ一覧)
http://alm.axiell.com/customers/client-list?field_country_tid=17&field_collection_type_tid=All&field_product_tid=9&items_per_page=500

(Calmに関する説明:PDF)
http://alm.axiell.com/sites/default/files/Calm%20ALM.pdf

Calmを利用しているイギリスのアーカイブズ機関は非常に多いのですが、ロンドンの著名な銀行アーカイブズのアーキビストに直接聞いた話によると、同行アーカイブズではファイルメーカーを利用しているということでした。このようなアーカイブズはもちろん他にも存在するでしょう。

【韓国での取り組み:オープンソース・ソフトウェア】

韓国での記録管理学・アーカイブズ学教育の中心機関のひとつ、韓国国家記録研究院副院長であるイム・ジンヒ氏の講演(2014年6月21日、学習院大学にて)は、オープンソース・ソフトウェアを利用して民間アーカイブズを普及するという活動に関するものでした。わたしもこの講演会に参加しました。その講演内容は、学習院大学大学院アーカイブズ学専攻が発行する年報『GCAS Report』第4号(2015年2月28日発行)に全文収録されています。

任 眞嬉. 元 ナミ. 訳. 金 甫榮. 訳. 講演 韓国におけるオープンソース・ソフトウェア記録システムの普及活動 : 〈記録文化〉を浸透させるために. GCAS report = 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報 / 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻 編.. (4):2015. 6-22 ISSN 2186-8778
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=full-set-set&set_number=976026&set_entry=000001&format=999
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-hum/arch/02gcas-report.html

韓国では日本より10年早い1999年に公文書管理に関する法律「公共機関の記録物管理に関する法律」が制定され、これを嚆矢として公共部門における電子記録管理、アーカイブズ管理が飛躍的に進展したのでした。イム先生の講演によると、近年アーキビストたちは民間におけるアーカイブズ構築に着手し、その中でシステム構築の方向性が議論になったといいます。

「民間アーカイブズ(※)では、システムを構築するにあたって、さまざまな困難に直面していました。サーバーの確保やソフトウェア購入費用などは、民間アーカイブズにとって大きな負担でした。システムを構築するとしても、持続的に維持することが可能なのかという問題がありました。また、記録システムをまったく扱ったことのないアーキビストが、備えていなければならない機能要件を整理することは不可能でした。私は多くの民間アーカイブズをコンサルティングする中で、このようなシステムの問題の存在を知ることができました。

結局、私は2013年春、一つの決心をします。オープンソース・ソフトウェアを利用して記録システムを構築してみようということでした。そうすればまず、システムの構築費用は安くすむでしょう。そして、多くのアーカイブズが共通のオープンソース・ソフトウェアを使うことによって、技術的な問題を共同で解決していくことも可能となります。さらに、アーキビストたちがシステムを経験することによって、今後、高度なシステムを設計する能力を身につけることもできるでしょう。」(8ページ)

(※)ここで言う民間アーカイブズとは、欧米でcommunity archivesと呼ばれるようなものと考えられます。日本で「民間」というと企業なども含まれることが多いのですが、ここでは企業のアーカイブズは想定されていないようです。

イム先生たちは、記録の登録と記述のためには「AtoM」、長期保存には「Archivematica」、「基本目録の管理とオンライン展示のためには「Omeka」をオープンソース・ソフトウェアとして選びました(9ページ)。(AtoMに関しては後述)

 

■オープンソース・ソフトウェア

日本でもオープンソース・ソフトウェアの利用の試みの事例があります。2011年7月11日に開催された全史料協(全国歴史資料保存利用機関連絡協議会)近畿部会のテーマは「オープンソースのアーカイブ資料管理情報システム:日本語化の取り組みと試用実践の一例」で、講師は京都大学研究資源アーカイブ・デジタルコレクションアーキビストの五島敏芳氏でした。最初に五島氏の講演があり、続いてワークショップ形式でオープンソース・ソフトウェア(Archon)を用いて実際に参加者が資料登録を行いました。
http://www.jsai.jp/iinkai/kinki/e20110702.html
http://togetter.com/li/974084

五島先生の講演でも触れられていたように、当時はArchonのほか、Archivists’Toolkit(AT)やICA-AtoMなどのオープンソース・ソフトウェアが利用可能でした。その後2013年の9月に、ArchonとATを統合し新たな機能を付加したArchivesSpaceがリリースされています。ArchivesSpaceはウェブ上の次世代アーカイブズ情報管理システムであり、紙・電子・紙と電子のハイブリッド状態での記録の収集・記述・編成、典拠と権利の管理、レファレンス・サービスのための機能を備えています。加えてオーサリング・ツールの機能では、EAD, MARCXML, MODS, Dublin Core, and METS 各フォーマットでメタデータを生成することもできます。
http://www.archivesspace.org/overview
http://archivesspace.org/programtimeline

一方、イム先生の講演で言及されていたAtoMは、もともとはユネスコの資金を得て、2005年から国際アーカイブズ評議会(ICA)がカナダのArtefactual社と共同で開発、無償で提供してきたアーカイブズの記述とその目録のオンライン公開用ソフトウェアです(多言語対応)。当初はICA-AtoMというブランド名でした。しかしその後Artefactual社は独自に開発を進め、ICA-AtoMとAtoMという二つのバージョンが併存する状況となりました。結局、2015年以降ICM-AtoMの開発・バージョンアップは停止し、現在はArtefactual社のAtoMのみが継続的に更新されています。AtoMはICAが定めたアーカイブズに関わる国際標準(ISAD(G)等)に完全に準拠したソフトウェアです。
http://www.ica.org/en/ica-statement-access-memory-atom-0
https://www.artefactual.com/ica-publishes-position-statement-on-atom/

■おわりに

ここまでややまとまりなく書いてきましたが、私がささやかながら主張したいことは、事業活動の証拠と組織の記憶の保存・継承・活用のためのアーカイブズ管理を支えるシステムやソフトウェアの開発がこれからもっともっと盛んになってほしい、ということです。その際、記録資料の特性を最もよく活かすような資料の組織化・公開を可能にするものが必要だろう、ということです。オープンソースでもよいですし、プロプライエタリのものでもよいです。使いやすく、安定したものがいいですね。場合によっては海外製品のローカライズ(日本化)であってもよいのでは。TNAのディスカバリーは3,300万件のアーカイブズ記述情報へのアクセスを提供しているそうです。記述情報(つまりメタデータ)のデジタルなシステムへの登録を増やし、アクセスの対象を広げるためにも、使いやすいシステムが必要であろう、と考えた次第です。

20140621gakushuin

 

 

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